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不具合に苦しむ小林可夢偉の嘆き。「新車を買ってくださいよ……」

webスポルティーバ 9/14(水) 11:50配信

密着・小林可夢偉(3)

 コクピットに乗り込もうとする小林可夢偉の左の手の甲には、絆創膏が痛々しく貼られていた。そのふちには、うっすらと血もにじんでいた。

【写真】ル・マン24時間耐久レースでの思い出を語る小林可夢偉

 9月11日、岡山で行なわれたスーパーフォーミュラ第5戦。日曜の朝に行なわれた予選で、可夢偉のマシンはまっすぐグラベル(砂利道などの非舗装路面)を突っ切ってタイヤバリアに激突した。その衝撃で左手をぶつけ、負傷したのだ。ランオフエリアの狭い岡山国際サーキットとはいえ、コースを飛び出してほとんど減速しないままぶつかるというのは異様で、明らかにドライバーのミスではなかった。

「最初にブレーキを踏んだらロックしたんで、一度離してもう一度踏み直したら左側が効かなくて、まっすぐ行ってしまったんです。まだ(アタック前の)ウォームアップラップやったし、普段より20mも手前で踏んでるんですよ。それでも止まらない。クルマをチェックしてみても、原因はわかんないんです……」

 前戦のツインリンクもてぎの決勝でも片効きの状態になっていたというが、走行後にメカニックがチェックをしても、不具合は見つからなかった。

 それでも、可夢偉は泣き言を言わず、マシンやチームを非難することもせず、コクピットへと乗り込んでいった。

「可夢偉さん、がんばって!」

 土曜日に行なわれたレース1のスターティンググリッドで、チーム・ルマンのレーシングスーツを着た子どもに声をかけられ、可夢偉は苦笑いしながら言った。

「明日がんばるわ!」

 それもそのはず、可夢偉のマシンが駐まっているのは、最後尾グリッド。オーバーテイクが極めて困難な岡山国際サーキットで、しかも、わずか28周のレースでは、上位入賞は絶望的な状況だった。

 熊本地震の影響で中止となったオートポリス戦(大分県)の代替として行なわれたこの岡山戦は、土曜と日曜にそれぞれ予選・決勝を行なう特殊な2レース制となった。その土曜の予選で、可夢偉はスピンして最下位に終わる。

 マシンのセットアップとフィーリングは少しずつよくなっているのに、違和感を拭いきれないでいた。

「攻めてなくても、あんなふうによくわからへんことが起きるから。そんなにがんばって攻めてるつもりもないのにね……。運転してて、初心者みたいやもん。ちょっと恥ずかしいもん(苦笑)」

 マシンとタイヤが持つグリップの限界を探りながら、可能な限りそこに近づけていく。98%なのか、99%なのか、その違いが大きな順位の差になって表れる。しかし、0.1%でも限界を超えてしまえば、たちまちコントロールを失って、マシンはどこかへ飛んでいってしまう。限界に近づけば近づくほど、リスクは大きくなる。

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最終更新:9/14(水) 11:50

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