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ゴムボートに150人!地中海で驚愕の難民救助に密着した

ナショナル ジオグラフィック日本版 9/15(木) 7:20配信

リビアからゴムボートでヨーロッパを目指すアフリカ難民に密着

 内戦を逃れてきた人々、単によりよい生活を求めて故郷を出た人々――理由はさまざまだが、アフリカ各地からリビアを経由してイタリアのシチリアへ向かう地中海ルートは、ヨーロッパを目指すアフリカ難民たちの主要経路となっている。今年はすでに、およそ27万人が海を渡ってヨーロッパへ入った。

400人以上の難民を乗せた木造船も

 リビアの領海を出たばかりの国際水域では、民間の救助船が難民ボートの捜索を続けているが、ゴムボートでの航海は危険がいっぱいだ。国際移住機関によると、今年だけで3200人近い難民が命を落としている。昨年の同じ時期と比べて約20%多い。また、国連難民高等弁務官事務所は、5月には1週間で880人が溺れ死んだと推定している。その一方で、8月末までに11万7000人が地中海上で救助された。

難民救助船に同乗

 今年初め、私は救助船のひとつ「シー・ウォッチ2」に同行し、15時間に及ぶ救助活動に同行し、24隻を超えるゴムボート救助に立ち会った。午前3時過ぎ、最初のボートが船のレーダー画面に捉えられた。緑色の頭をしたいも虫のような物体が、リビアの領海を出て北へ向かって漂うように現れた。やがて、水面に映る月の光を背にして、波に揺れるボートの形がはっきりと確認できるようになった。

 全長約11メートルのボートをサーチライトの光がかすめると、鈍い灰色に光るボートの側面に無数の人間の足が並んでいるのが見て取れた。その様子はやはり、いも虫のように見えなくもない。

 救助の陣頭指揮を執るインゴ・ヴェート氏が、メガフォンを手にボートに乗っている人々に呼びかけた。「おはようございます。私たちはドイツからやってきた医師です。皆さんを助けに来ました。怖がらないで、落ち着いて聞いてください」

 船のブリッジへ戻ると、ヴェート氏はローマの海難救助管理センターへ電話を入れ、「ゴムボートを発見。完全にすし詰め状態です」と報告した。

 その後、船の警報が3回鳴り響いたのを合図に救助隊員らが前甲板に集合し、救助活動が始まった。ヴェート氏の指示に従って、4人の隊員が小さな救命ボートを海面へ下ろす。

 救命ボートに乗った救急小児科医のビア・シュミット氏は、難民たちを落ち着かせるために英語とフランス語で呼びかけながらゴムボートに近づくと、救命胴衣を配り、1回につき6人ずつ救命ボートに乗せて、本船へと運んだ。

 ヴェート氏をはじめとする15人の救助隊員のほとんどは、ドイツのハンブルク出身者だ。ヴェート氏は故郷で、兄と友人と一緒に自動車修理工場を営んでいる。

 隊員たちの本職は、アートセラピスト、救急救命士、海洋風力発電の安全管理員、商船の乗組員などさまざまだ。ヴェート氏は、自分たちが何か英雄的なことをしているとは考えていないと語る。「皆いたって普通の人々です。誰ひとりとして、英雄だとは思っていません。ただ、やるべきことをやっているだけです。自分たちと違って、幸運に恵まれなかった人々を助けたくて、仕事の合間や休暇中に参加しています」

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最終更新:9/15(木) 7:20

ナショナル ジオグラフィック日本版

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