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なぜ小型犬と大型犬で寿命に差があるのか?

@DIME 9月15日(木)8時10分配信

「どのくらい平均的に生きられるのか?」を表す言葉には、「平均寿命」「平均余命」「死亡時の平均年齢」などがある。一見、どれも同じ意味ととらえがちだが、計算や意味が微妙に違ったりするので、まずはその点をご理解いただければと思う。ちなみに、平均余命とは、ある年齢を基点にした時に、あとどのくらい生きられるかというのを示したもので、0歳を基点にした時の平均余命は、いわゆる平均寿命ということになる。

世界には30歳近くまで生き、その長寿ぶりが注目の的になる犬もいるが、国内における犬の平均寿命は14.85歳。サイズ別に見てみると、超小型犬が15.67歳、小型犬は14.62歳、中・大型犬では14.02歳となっている(一般社団法人ペットフード協会「平成27年全国犬猫飼育実態調査」より)。ここ10年間の同調査結果を改めて見直してみると、わずかな増減はあるものの、全体的に少しずつ寿命が延びていることは確かだ。

もう一つ、類似の調査がある。東京大学とアニコム損害保険会社が共同で行ったもので、2010年4月1日~2011年3月31日にかけてペット保険の契約を結んだ犬29万9,555頭を対象に余命や死因について調査(この間に死亡した犬4,169頭)をした。その結果、5kg未満の犬の平均余命は13.8歳で、5~10kgの犬では14,2歳、10~20kgの犬は13.6歳、20~40kgの犬は12.5歳、40kg以上の犬が10.6歳、全体的な平均余命は13.7歳となったそうだ(0~1歳時基点)。(*1)

一方、海外に目を向けてみると。アメリカの州ごとにおける犬の寿命を記したものが下図となる。寿命値は10.1~12.4歳。色が濃いほど長命であることを示しており、オレゴン、モンタナ、サウスダコタ、コロラド、ニューメキシコといった西アメリカのほうが長命の傾向にあり、ミシシッピーやアラバマ、ルイジアナ、デラウェア、マサチューセッツといった東アメリカ方面はやや短命の傾向にあるというのは興味深い。(*2)

このリポートではサイズ別の平均寿命を、体重20ポンド(約9kg)未満の小型犬は11.3歳、20~50ポンド(約9~22.7kg)未満の中型犬では10.8歳、50~90ポンド(約22.7~41kg)の大型犬では11.1歳、90ポンド(約41kg)以上の超大型犬の場合は8歳としている。

次にイギリスではどうなのだろうか。イギリスのケネルクラブ(KC)が2014年11~12月の約2ヶ月間にわたり、4万8,891頭(被毛やサイズのバラエティーを含む191犬種、生存4万3,207頭、死亡5,684頭)の犬を対象に病気や死亡原因に関する調査を行った。死亡時の平均年齢は9.72歳で、9~14歳にかけて死亡するケースが目立つ中、もっとも多いのは12歳となっている。(*3)

死亡原因としては老衰がもっとも多く(13.78%)、次いでガン(8.69%)、原因不明(5.10%)、心不全(4.87%)、腎不全(4.20%)、老齢による合併症(4.05%)、骨腫瘍(3.38%)、リンパ腫(3.18%)、心筋症(2.94%)、脳腫瘍(2.80%)の順になっている。

何らかの病気が発症した年齢を見てみると、平均的に0~1歳時が多くなっており、*1の国内調査でも3歳までの間では0~1歳時がもっとも死亡率が高くなっていることから、注意が必要な年齢であることがわかる。

ところで、これらのデータを見ても犬の体重と寿命とは関連性があるように思える。ある種の犬種群を除いては、一般的に小型犬は成長が早い反面、老化が遅く、長命であるのに対して、大型犬のほうはゆるやかに成長しつつも老化が早く、短命の傾向にある。この体重と寿命に着目した研究や調査も行われているが、ある研究では体重約2kgにつきおよそ1ヶ月寿命が短くなる傾向にあるということが見いだされたとか。(*5)

そもそもなぜ小型犬と大型犬では寿命に差があるのか?というと、その理由は確定されていないとしながらも、一つにはIGF-1遺伝子(インスリン様成長因子1というペプチドをタンパク質に変換する遺伝子)の関連が考えられている。このIGF-1は、小型犬においては遺伝子変異が認められたことから、犬の体の大きさを決定づける大きな要因であるいうことがすでに発表されているが(2007年、*6)、その他、体の大きさのみならず成長や寿命にも関連することが他の実験でもわかっている。

IGF-1のレベルが高いと体は大きく、短命傾向であり、逆にそのレベルが低いと体は小さく、長命傾向にあるそうだ。犬の場合、大型犬は小型犬に比べてIGF-1のレベルが高いという。また、小型犬では「細胞寿命時計」または「生命の回数券」とも呼ばれるテロメア(染色体の末端に存在し、細胞が分裂するたびにその長さが短くなり、ある段階までくるとそれ以上分裂できなくなり、細胞の寿命は終わる)が平均的に長いということも、体重と寿命との間にある謎を解くキーの一つになるかもしれないと指摘する研究者もいる。

その他、体重やサイズの他にも寿命に影響するものはあるのか? それにはたとえば次のようなものがある。避妊去勢手術をしているかどうか。アメリカのジョージア大学において約4万頭の犬の死因を分析したところ(1984~2004年)、手術をしている犬はしていない犬に比べて平均的に1.5歳寿命が長かったそうだ。(*7)

また、食事をコントロールし、適正な体系を保つと寿命を15%(ほぼ2年近く)延ばすことができるという研究結果もある。(*8) その他、歯周病は全身の病気に関連するため、歯の健康を保つということも大事になるだろう。

最近ではアメリカにおいてラパマイシン(臓器移植反応を抑制するとともに、加齢や病気による機能低下を遅らせ、寿命を延ばす効果があるとされる薬剤)を用いて犬の寿命を延ばせるかどうかという研究も行われているが(Dog Aging Project http://dogagingproject.com/)、私たちが愛犬にしてあげられることは、寿命を延ばすことばかりに気をとらわれず、まずは愛犬のQOL(生活の質)を考えてあげることが先決で、それこそが寿命を延ばすことにもつながるのではないだろうか。

(避妊去勢手術にはメリット・デメリットがあるので、よく考えてからご判断を)

参考資料:
(*1)A current life table and causes of death for insured dogs in Japan / Mai Inoue, A. Hasegawa, Y. Hosoi, K. Sugiura / Preventive Veterinary Madicine Vol.120 Issue 2, 15 June 2015, 210-218
(*2)Banfield Pet Hospital State of Pet Health 2013 Report
(*3)The Kennel Club / Pedigree Breed Health Survey 2014
(*4) SAGE(Science Of Aging) / Dogs, Dwarfism and Aging:Lessons From IGF1
(*5)Ageing:It’s a Dog’s Life / Colin Selman, Daniel H. Nussey, Pat Monaghan / Current Biology Vol. 23 Issue 10. 20 May 2013, Pages R451-R453
(*6) A Single IGF1 Allele Is A Major Determinant Of Small Size In Dogs / Nathan B. Sutter, Carlos D. Bustamante, Kevin Chase, Melissa M. Gray, Keyan Zhao, Lan Zhu, Badri Padhukasahasram, Eric Karlins, Sean Davis, Paul G. Jones, Pascale Quignon, Gary S. Johnson, Heidi G. Parker, Neale Fretwell, Dana S. Mosher, Dennis F. Lawler, Ebenezer Satyaraj, Magnus Nordborg, K. Gordon Lark, Robert K. Wayne, Elaine A. Ostrander / Science 06 Apr 2007:Vol.316, Issue 5821, pp.112-115 DOI:10.1126 / science.1137045
(*7)Reproductive Capability Is Associated with Lifespan and Cause of Death in Companion Dogs / Hoffman JM, Creevy KE, Promislow DEL (2013) / PLoS ONE 8(4): e61082. doi:10.1371/journal.pone.0061082
(*8)Effects Of Diet Restriction On Life Span And Age-related Changes In Dogs / Richard D. Kealy, Dennis F. Lawler, Joan M. Ballam, Sandra L. Mantz, Darry N. Biery, Elizabeth H. Greeley, George Lust, Mariangela Segre, Gail K. Smith, Howard D. Stowe / JAVMA, Vol. 220, No.9, May 1, 2002

文/犬塚 凛(ペットゥモロー編集部)

@DIME編集部

最終更新:9月15日(木)8時10分

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