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アトランタ連銀総裁が辞任へ、定年以外の裏事情を探る --- 安田 佐和子

アゴラ 9月15日(木)17時1分配信

アトランタ地区連銀のロックハート総裁は13日、声明(https://www.frbatlanta.org/news/pressreleases/atlantafed/2016/0913-atlanta-fed-president-dennis-lockhart-to-step-down)で2017年2月23日に辞任する意志を表明しました。

2007年3月に就任したため、ほぼ10年を経て退任することになります。基本的に地区連銀総裁の任期は5年で65歳を定年と規定(https://www.federalreserve.gov/aboutthefed/bios/banks/default.htm)し、10年で満了となるケースが多い。しかし55歳以上で着任した場合は10年後、あるいは65歳のいずれか遅い方と定められていますから、ロックハート総裁は69歳であるだけに10年に当てはまります。

また総裁職は定年まで再選される傾向が高いところ、西暦の下一桁が1か6の年の2月に満了するため2016年2月までの再選手続きが必要でした。恐らくロックハート総裁は定年に合わせ、再選を見送られたのでしょう。

アトランタ連銀のロックハート総裁と言えば、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙のFed番、ジョン・ヒルゼンラス記者をして「中立派で妥協案を代表する参加者(http://www.wsj.com/articles/fed-officials-gain-confidence-they-can-raise-rates-this-year-1468922401)」と言わしめるようにFOMCの風向きを探る上でベンチマークでした。だからこそ、NY連銀のダドリー総裁と合わせ8月前半に9月利上げ(http://www.marketwatch.com/story/feds-lockhart-doesnt-rule-out-rate-hike-as-soon-as-september-2016-08-02)を示唆すると、9月利上げ織り込み度が反応したものです。

しかし、9月利上げ示唆を与えた当時と直近では様相が異なります。ブレイナードFRB理事がニューノーマルを迎える現状で利上げに「慎重さ(prudence)(http://www.bloomberg.com/news/articles/2016-09-12/brainard-says-prudence-is-warranted-as-raising-rates-poses-risks)」が必要と発言した同じ12日、利上げに真剣な議論が必要と語りつつ、次回利上げに際しインフレにおいて「目に見える改善」を見極めたいと言及(https://www.frbatlanta.org/news/speeches/2016/0912-lockhart-policymakers-views-on-inflation-and-employment.aspx)していました。スタンスの違いが分かりますね。9月利上げ肯定と受け止められたボストン連銀総裁による発言(http://mybigappleny.com/2016/09/09/dove-16sep/)の軌道修正として、何らかの力学が働いたようにすら見えます。ブレイナードFRB理事をはじめタルーロFRB理事のほか、米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めたイエレンFRB議長などビル・クリントン政権と関与が深い(http://mybigappleny.com/2016/09/10/barrons-16sep10/)投票メンバーがハト派寄りであるという事実が、余計に意識させますよね。なんてったって、今年は米大統領選を控えますから。

今回の辞任は規定路線と捉えられますが、ロックハート総裁には共和党に寄付していた経歴(http://littlesis.org/relationship/view/id/165445)があります。FRB理事や地区連銀総裁の任期を追ったWSJ紙の記事(http://blogs.wsj.com/economics/2014/06/19/fomc-tenures-long-terms-mean-current-committee-could-be-going-nowhere/)では、「2018年まで入れ替えはない」と伝えていた事情もあり、何となくキナ臭さを禁じ得ません。

【追記】
ブレイナードFRB理事の発言を受けて、ゴールドマン・サックスは9月利上げの確率を以前(http://mybigappleny.com/2016/09/07/gs-sep-ratehike/)の40%から25%へ引き下げました。投票メンバー10人のうちブレイナードFRB理事、タルーロFRB理事、セントルイス連銀のブラード総裁、そしてイエレンFRB議長を加えれば据え置き派は明確に4人。利上げ派はカンザスシティ連銀のジョージ総裁にクリーブランド連銀のメスター総裁が加わるかどうかとあって、9月利上げ見通しを引き下げざるを得なかったのでしょう。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE - NEW YORK -」2016年9月14日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE - NEW YORK -(http://mybigappleny.com/)をご覧ください。

安田 佐和子

最終更新:9月15日(木)17時1分

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