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VW古参社員が排ガス不正問題で有罪答弁、幹部訴追の可能性も浮上

Forbes JAPAN 9月15日(木)11時0分配信

独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題で9月9日、同社の技術者が米ミシガン州デトロイトの連邦地裁に出廷、ディーゼルエンジンの排ガス試験をめぐる不正への関与を認めた。1983年からVWに勤務するジェームズ・リアン被告(62)は、最長5年の禁錮刑と罰金25万ドル(約2,570万円)が科される可能性がある。



被告の有罪答弁で非常に重要な点は、排ガス規制に適合していないディーゼルエンジンの搭載車を米国内で販売できるようにするため、VWが虚偽の試験データを提出した詳しい経緯を被告が知っていること。そして、来年1月に言い渡される量刑を軽減するため、検察当局に不正行為や関与した人物に関する詳細な情報を提供する司法取引に応じたことだ。

米国でディーゼルエンジンの性能に関する部門の責任者だったリアン被告は法廷で、VWが自社のディーゼル車を米環境保護局(EPA)の排ガス試験に合格させるため、「ディフィート・デバイス(無効化装置)」と呼ばれる不正なソフトウエアを使用している事実を伏せていたことを知っていたと証言。自身の有罪を認めた。

被告はまた、自らが2006年に新型のディーゼルエンジンを設計した技術チームの一員だったと明言。技術チームは早い段階で、新型エンジンが顧客らの期待に応えることも、米国の厳しい基準を満たすこともできないことにも気づき、不正なソフトウエアを開発したと述べた。このソフトウエアは、排ガス試験中には排ガス浄化装置がフル稼働して有害物質の排出レベルを基準値以下に抑える。だが、実際の走行時には走行性能を高めるために浄化装置の稼働を制限するため、ディーゼル車は大量の有害物質を排出する。

幹部訴追につながるか

被告の検察側への協力は、VWの経営陣を窮地に追い込む可能性がある。同社はこの1年、上層部は不正行為について認識していなかったと主張してきた。ただ、昨秋にマーティン・ビンターコルン前会長が辞任したほか、これまでに複数の幹部が地位を追われている。

おそらく米・独両国で勤務してきたリアン被告は、VWの指揮系統のどこまでが不正の事実を認識していたか正確に把握し得る立場にあり、そのことを裏付ける電子メールや報告書などを保管している可能性がある。VWの関係者は被告の答弁について、コメントを控えている。

米司法省によると、VWの不正行為は2006年に始まり、2009~15年に販売されたVWの「ゴルフ」「ジェッタ」などのほか、アウディ・ブランドのモデルに搭載したディーゼルエンジンに、不正なソフトを搭載していた。

司法省は24ページにわたる起訴状の中で、「リアン被告と同僚たちはVWが新たな『クリーンディーゼル』車を開発するプロセスのほぼ最初の段階から、米国の排出基準を満たすような設計にはしていなかった。その上で、基準を満たしているように見せかけて不正に排ガス試験をクリアさせていた」と指摘している。

リアン被告は司法取引に応じたことにより、その他の人物の訴追に関連して大陪審や公判での証言を行い、米当局を支援することになる。また、独当局が進めている捜査にも協力することになる。被告の協力が「捜査や訴追に大いに貢献した」と検察側が判断すれば、より軽い刑が求刑されることになる。

VWは昨年、世界全体で約1,100万台、米国では約60万台のディーゼル車に違法ソフトを搭載し、規制当局に虚偽の排ガス試験データを提出していたことを認めた。そして、今年6月には米国で販売された不正車両の買い戻しや所有者への補償にあてる費用として総額150億ドルを支払うことで合意。さらに8月には米国内の販売店に対し、不正問題を受けて販売が禁止された在庫分に対する補償として、総額12億ドルを支払うことで合意している。

David Kiley

最終更新:9月15日(木)11時0分

Forbes JAPAN

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