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時代と共鳴する女たち:洋楽編

ローリングストーン日本版 9月15日(木)17時30分配信

Tunes StoreとMyspaceの音楽配信が生まれた2003年。音楽産業が大きな転換期を迎えていたその当時から、音の発信方法や聴き手の楽しみ方が劇的に変化した現在に至るまで、その時代と共鳴し、時の人となった女性アーティストたち。音楽が細分化し、絶対的なスターが生まれにくいとされる現代から未来へ、彼女たちが向けるパッションと先鋭的な表現は音楽を越えて広がり、時代を変える可能性に満ちている。



2003年から現在までの間、その時代を捉えながらも、音楽シーンを震撼させ、聴く者を魅了してきた孤高の女性アーティストたちとは?

まず、2003年以降の世界を変えた女性アーティストについて考察する前に、この時期、音楽産業が大きな転換期を迎えていたことに留意しておく必要がある。2003年にはiTunes StoreとMyspace、2005年にはYouTube、2006年には一般公開されたFacebookのサービスがそれぞれスタート。それら音楽、動画配信やSNSが、音楽の発信の仕方や捉え方、楽しみ方を劇的に変化させ、音楽の伝達、消費スピードを加速させたことは頭の片隅に置いておいて頂きたい。

そのうえで、2000年代初頭、一気に表出したロックンロール・リヴァイヴァルの動きは、ヴァーチャルな表現からリアルな肌触りの音楽に対する揺り戻しでもあり、2003年にデビューを果たしたロックンロール・デュオ、ザ・キルズのアリソン・モシャートは、ロイヤル・トラックスのジェニファー・ヘレマの後を継ぐロックの女性アイコンだ。全世界的に、ロックが低調な時代にあって、そのクールな佇まいは、カール・ラガーフェルドをはじめ、ファッション界に新たなインスピレーションを与えた。

時代と共鳴する女たち:洋楽編(2)

そして、バイレ・ファンキやグライム、ダンスホール・レゲエ、クランクといったカッティングエッジなビートとリリックに込めたポリティカルなメッセージでロック以上のインパクトを与えたのがロンドン出身のM.I.A.だろう。父親がタミル系スリランカ人にして、反政府武装組織の一員で、11歳でイギリスに亡命した彼女は、2005年にリリースしたファーストアルバム『アルラー』以降、アメリカでのブレイクを経て、全世界に生粋のレベル・スピリットを知らしめた。2012年にマドンナと出演したスーパーボウルのハーフタイムショーでカメラに向け、中指を立ててしまった勢いも含め、その存在は反体制のアイコンとなった。

また、2003年は、ビヨンセがソロ活動を開始した年でもある。その皮切りとなった『’03 Bonnie & Clyde』は、その後、結婚することになるジェイ・Zとの共演曲であり、これ以降、デスティニーズ・チャイルドの解散を経て、6作のアルバムをリリース。グラミーを17回受賞した活躍ぶりは、時代の顔といっていいほどに突出したものがある。そして、今年発表された最新作『レモネード』は、ジェイ・Zの不貞という自身の逆境さえをも糧にしてしまったアルバムであり、かつて、彼女が『インディペンデント・ウーマン』で歌った強い女性像は揺るぎなく、より強固なものになっている。

一方、セカンドアルバム『21』が全世界で3000万枚超のセールスを記録。2012年にグラミー6部門を受賞したイギリスのシンガー・ソングライター、アデルは、エイミー・ワインハウス、ジョス・ストーンと並ぶヴィンテージソウルシンガーである以上に、自身の心の成長と恋の痛みを誰よりも魅力的に響かせる悲恋のシンガーだ。全世界的なブームが起こりにくくなっているとされる現在の音楽状況を考えると、アルバムのセールスが実証する彼女の作品の共感力の高さは突出するものがあるといえるだろう。

2012年にグラミー6部門を総ナメしたイギリス人シンガーソングライター、アデル。自身の心の成長と恋の痛みを誰よりも魅力的に響かせる悲恋の歌声は、CDが売れないこの時代に3000万枚超というアルバムセールスの快挙が実証している。

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最終更新:9月15日(木)17時30分

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