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人間は理性ではなく感情で動く!「行動経済学」が切り開いた地平 第一人者による必読書を読む

現代ビジネス 9月15日(木)17時1分配信

市場の「破滅」に賭けた男たち

 ブロックチェーンについて扱った前回、Fin-Techは2008年に世界経済を襲ったリーマン・ショックを受けて発展したと記した(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49437)。

 そのリーマン・ショックの顛末を扱った映画が『マネー・ショート』だ。

 原作はマイケル・ルイスの“The Big Short”で『世紀の空売り』という邦訳も出ている。ルイスは『マネー・ボール』や『ライアーズ・ポーカー』で有名な、現代アメリカを代表するノンフィクション作家の一人だ。

 よく知られるように、リーマン・ショックではサブプライムローンが焦げ付き、それを元にして金融工学的に作られた証券(CDO)も暴落し、その結果、ウォール街の老舗投資銀行であったリーマン・ブラザースが破綻した。

 当時すでに国際化され24時間体制で稼働していた金融市場には、CDOだけでなくそれらをさらに分解・合成して組成された二次証券(合成CDO)も流通していた。そのため影響の及ぶ範囲を局所的に封鎖することができず、結果として国際的な金融破綻を連鎖的に起こしてしまった。

 その破綻は金融経済だけでなく実体経済にも及び、アメリカ製造業の象徴であるGM等の自動車ビッグ3の救済にまで至ったことは記憶に新しい。

 この顛末については、すでに多くの解説がなされ、原因究明もなされてきているわけだが、ルイスの原作は、リーマン・ショック以前の、イケイケな空気が充満し沸騰し続けた金融市場の内部にいながら、数年前からこの市場のヤバさにいち早く気づき、市場が破綻する側に大きく逆張りに賭けた三組のチームの動きを描いている。

 だから原題にあるBig Shortとは、「市場が破綻するショートポジションを取った蛮勇」ということになる。具体的には、市場が破綻した時にその破綻を補填する「保険」としてCDS(ある債券の信用リスクを移転させるための証券)を購入する話となる。

 2008年9月15日のリーマン・ショックその日までいわば保険の掛け金(プレミアム)を払い続けることになるのだが、その様子が、件の三組以外の人びとの目には狂気の沙汰としてしか映らない。

 CDSを売る側の投資銀行からは、こいつらバカなの? と思われ続け、ファンドの出資者からもお前らアホか? と詰問され資金をひきあげようとされる。

 しばしばファンドにおいては、ポートフォリオを組んだら仕事はおしまい、とお気楽なことがいわれるが、しかしさにあらず、胃をキリキリと傷めつけるものであることがひしひしと伝わってくる。

 しかも市場の「破滅」に賭けているわけだから、最終的に勝ったとしても、その勝ち方は決して手放しに喜ぶことができるものではない。勝てば自分を除いて周りは破滅、負ければ完全に自分が破滅、というシナリオはあまりにも辛い。

 ルイスの作品はいずれもノンフィクションらしく、常に成功と失敗の両面から人間を描き、その分ペーソスに溢れるものなのだが、それにしても三組の彼らが取った行動はそもそも「詰んで」いる。苦いビターな出口しかない。

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最終更新:9月15日(木)17時1分

現代ビジネス

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