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華やかなリオ五輪の裏で宿泊価格が崩壊! Airbnb42倍増の恐怖

HARBOR BUSINESS Online 9月15日(木)9時10分配信

 五輪が終わり、現在はパラリンピックが開催中のリオデジャネイロ。オリンピックなどのイベント時は、宿泊施設も価格高騰するというのが世の常だ。そのため、多くの「経済効果予測」などでも、そうした価格の上乗せなども前提として組み込まれている。

 しかし、逆にリオ・オリンピックでは宿泊価格が崩壊するという現象が起きている。

 特に中級未満の比較的低予算トラベラー向けのホテルや相部屋のドミトリーがあるゲストハウスは悲鳴を上げ諦め顔だ。リオ滞在中の日本人によれば、「既に値引き合戦が凄くて、オリンピック前よりも始まってからの方が安く出している安宿も出始めた」との声も多数あったほどだ。

 そこでJapan Backpackers Link(以下JBL)は、次のような調査を行った。

◆宿泊費が国際イベント時らしからぬ安値に

 リオデジャネイロでは、オリンピック開会式の翌日泊でもドミトリー1泊朝食付き1570円で普通に予約が取れる状況。最安値は1245円朝食込みで今からでも当日分が予約でき、連泊縛りもない。この2000円未満の価格帯でも当日予約可能な7軒が確認できた。宿によっては、2連泊や3連泊縛りもあるが、個室でも2199円からある。同日1名の宿泊で5600円以下なら、ゲストハウスのドミトリーと個室、そしてホテルやB&Bを合わせて163軒が当日の宿泊予約が可能だった。

※JBL調査:2016年8月6日15時 エクスペディア・ブッキングドットコム・ホステルワールドにて比較調査。

 JBLでは、2014年サッカーのブラジルワールドカップ時にも同様の調査をしている。リオで行われた決勝当日にその夜の宿を探すと、予約可能な最安値はゲストハウスのドミトリーで1泊1名が約34000円程度で出ていた。既に予約済みゲストハウスのドミトリー中心価格帯は8000円~12000円だった。この価格帯は近年、世界的なイベントであるサッカーのワールドカップやオリンピック、ラグビーのワールドカップやF1レース等の開催地では平均的な値段だ。

◆民泊の過剰供給による価格崩壊

 ではなぜリオ五輪では、こうした過去の事例とは真逆の「価格破壊」が起きたのか?

 宿泊価格崩壊の理由は複合的だ。総論としては、用意された宿泊施設数に対して見込み程の観戦客がこなかったために需給バランスが崩れたわけだが、その原因として次の5点が考えられる。

①観戦チケットが高すぎた

②ジカ熱とデング熱への危惧

③治安の不安

④開催都市による公式なAirbnbの活用で爆発的な民泊の増加

⑤安価なゲストハウス拡大と乱立

①~③については、仕方がない面もある。しかし、注目すべきは④の要因である。

 リオ・オリンピックの宿泊価格崩壊は、前年比42倍増という、急激に増えたAirbnb民泊供給の影響が大きいのである。

 Airbnbは、2016年リオ五輪公式オルタナティブ宿泊サービス提供企業(正式名称:Official Alternative Accommodation Service)として採用され、7月11日時点でオリンピック時のAirbnb民泊利用予定を発表していた。

 それによればリオデジャネイロ在住民泊ホストは会期中、世界110か国以上から55000人以上の宿泊客を受け入れ平均で5泊する予定だと言う。内訳は、1予約あたりの平均宿泊料金は1泊約170米ドルで昨年の8月料金と比較した際の値上がりは平均で19%となる。また平均宿泊人数は3人としている。民泊ホスト全体の62%が五輪期間中に初めて宿泊予約を獲得した。直近の3か月間でリオデジャネイロの民泊ホスト登録件数は33%増加し、35000件が掲載中となっている。

 現地リオの宿泊施設事情に詳しいコーディネーターは、「オリンピックで宿が足らないから、既存の宿泊施設から溢れた分を民泊で補おうという考えだった。しかし蓋を開けてみると違っていた。特に今回ブラジル人は圧倒的に民泊を利用した」と話す。

 こうした状況に、民泊と需要層がかぶるゲストハウス経営者は苦々しい思いを隠そうとしない。リオでゲストハウスを営む日本人のAさんは語る。

「民泊オーナーさん達もそれなりのコストをかけて始めてますからね。予想していた額の3分の1にもならなかったので、五輪期間中に投資額の回収ができなかった人も多いですよ。だとしても、やめるにやめられないから、今後業者の間ではダンピング合戦が加速するでしょう。利用者は嬉しいかもしれないけど、ウチでも今後は雇用をセーブして時短もして押さえていかなければならない状況です。」

 Aさんの友人でブラジル人のゲストハウス経営者B氏は、「元々、一過性のワールドカップやオリンピックで稼いでやろうなんて思っていない。それよりもこの民泊と安宿の乱立が落ち着き淘汰されて元の宿泊施設数になるまでウチが持ちこたえられるだろうか。ファミリー経営だが、このまま集客も単価も戻らなければ他の収入源も探さなければならないし、ファミリーの何人かは他へ働きに出さないといけない。何よりも心配なのはリオのカーニバル。このままではオリンピックと同じことが毎回リオのカーニバルでも起こることになる。カーニバルを年4回にしてほしいね。」と、やるせなさを滲ませてた。

 日本でも2020年のオリンピックイヤーに向けて宿不足だと民泊での対応が声高に叫ばれているが、リオ・デジャネイロを教訓としなければ、東京や日本中でも同じことが起こるのではないだろうか。東京も毎月のように宿泊可能ベッド数が増え続けている状況の中で、もう一度必要ベッド数を算出し、オリンピック時に供給されるであろう計画中の宿泊施設も含めてトータルで直すべき時期にきている。山手線で30分程度の千葉県・埼玉県・神奈川県に民泊を拡大してまで、その力が必要なのであろうか?

<文/向井通浩 写真/もりや>

250軒以上の安宿を網羅した国内最大のバックパッカー&ゲストハウス宿リンクサイト「ジャパン・バックパッカーズ・リンク」代表、ジャーナリスト。インバウンドとその周辺事情に精通している。

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:9月15日(木)9時10分

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