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蓮舫氏へ、同じ「元・中国人、現・日本人」としての忠言 - 李小牧(り・こまき) 元・中国人、現・日本人

ニューズウィーク日本版 9/15(木) 18:10配信

<二重国籍問題を指摘されながら民進党新代表に選出された蓮舫氏は、即刻、辞任するべきだ。国籍放棄の経験がある私から言わせれば、「覚えていない」など馬鹿げた話。おまけに彼女は、ウソをついて時間稼ぎをし、自分を守るために台湾の対日感情を傷つける発言までした>

 蓮舫氏へ。民進党代表選の勝利、おめでとうございます。中華民国と中華人民共和国という違いはあるとはいえ、同じ「元・中国人、現・日本人」として祝福したい。その上で言わせていただく。即刻、民進党代表を辞任するべきだ。あなたの卑劣な対応に私は激怒している。

 二重国籍問題について、私は当初はさほど関心を持っていなかった。さっさと否定して身の潔白を証せばいいのにと思っていたぐらいだ。ところが蓮舫氏が8日にフェイスブックに投稿した弁明を見て驚愕した。「私は日本人です」から始まる文章は二重国籍問題について次のように説明している。

私が台湾法において、籍があるのかというご指摘がありました。高校生の時、父親と台湾の駐日代表処に赴き、台湾籍放棄の手続きを行ったという記憶があります。私は、台湾籍を放棄して今日に至っているという認識です。

 小学生ならばいざしらず高校生にもなって、国籍変更という人生の一大事を覚えていないということがあるだろうか。「ガラパゴス島国の日本人には国籍は後生大事な存在のようですが、外国人の感覚は違います。国籍放棄を忘れるなんて日常茶飯事。とがめだてするような話ではない云々」としたり顔で擁護する人もいるようだが、実際に国籍放棄の経験がある私から言わせれば馬鹿げた話だ。

 私は昨年2月、中華人民共和国国籍を放棄したが、その時には日本人になれるという喜びと長年の祖国との絆が失われたという惜別の情とがあいまって、なんとも言えない気持ちで胸がいっぱいになった。私はあの日のことを一生忘れないだろう。記憶があやふやとはあまりにも人を馬鹿にした言い訳だ。

【参考記事】愛国化する世界──蓮舫氏の二重国籍とフランスの「国籍と名前」論争
【参考記事】「国籍唯一の原則」は現実的か?――蓮舫氏の「二重国籍」問題をめぐって

 さらに声明はこう続いている。

この点について、今般、確認を行いましたが、いかんせん30年前のことでもあり、今のところ、確認できていません。今後も確認作業は行いたいと思いますが、念のため、台湾の駐日代表処に対し、台湾籍を放棄する書類を提出しました。

 このくだりを読んで、蓮舫氏がウソをついていると確信した。日本の国会議員である彼女が照会すれば半日もたたないうちに確認ができるはずだ。それどころか台湾の官報はネットで公開されているため、検索すれば10分で答えはわかる。それを下手なウソで時間稼ぎを図っていたのだ。

 なんのための時間稼ぎなのか? その答えは民進党代表選だろう。党員・サポーター・地方議員は葉書によって投票する。締め切りは12日必着だ。それまでの期間、のらりくらりと二重国籍を認めずにやりすごそうと考えたのではないか。果たして、締め切りの翌日となった13日に蓮舫氏は記者会見を開き、二重国籍の事実を認めたのだった。代表選では503ポイントと過半数を獲得して新代表に選出されたが、党員やサポーターが二重国籍問題についての結果を知らずに投票先を決めたことを忘れてはならない。重要情報が明らかにされない中での投票だったのだから、やはり代表辞任が筋だろう。



民進党代表選の投票用紙の葉書には「蓮舫」と書き、目隠しシールを貼って投函する直前だった(撮影のために目隠しシールを剥がす筆者)

釈明のために「一つの中国論」を持ち出した

 私も民進党員だ。もともとは蓮舫氏に投票するつもりだった。2010年当時、外務大臣として尖閣諸島沖中国漁船衝突事件の対応を誤り、日中関係を悪化させた前原誠司氏に投票する気にはなれなかったし、玉木雄一郎氏が代表選候補者討論会で涙を流す姿を見て「こんなナイーブな人では政権は取れない」と思った。消去法とはいえ彼女を選び、葉書に「蓮舫」と名前まで書いていた。だがウソと時間稼ぎの説明を見て失望し、投票を断念した。

 日本は開かれた多様な社会を目指すべきであり、そのためにも「元・外国人」の政界進出は歓迎すべきだ。私も政治家として日本に貢献したいという志は捨ててはいない。一部では批判が暴走し、蓮舫氏の子どもの名前が中国風だからなどといちゃもんをつける人までいるようだ。そうした差別的なバッシングには断固反対する。だがしかし、蓮舫氏に問題があったことは明らかだ。本来ならば代表選は国民に民進党とその政策を知ってもらう絶好のチャンスだったはずだ。それがこんな結果に終わったことは一党員として残念でならない。

 もう一つ、蓮舫氏の問題が日台関係にまで影響していることにも触れておこう。11日の代表選記者会見で、蓮舫氏は「一つの中国論で言ったときに、二重国籍と(いう言葉を)メディアの方が使われることにびっくりしている」と発言した。この発言が台湾では大きな波紋を引き起こしている。台湾メディアが「台湾は国家ではない」と大胆すぎる意訳をしたことが炎上のきっかけとなったが、正しい言葉を伝えられた後も騒動は収まっていない。

 一つの中国論は今、大変敏感な話題だ。5月に誕生した台湾の蔡英文政権は、一つの中国論を確認した「92年コンセンサス」に否定的立場を取っており、台湾市民の多くも支持している。中国は蔡英文政権を翻意させようと、観光客の数を減らすなどあの手この手で圧力をかけているのだが、その最中に日本の国会議員、しかも将来の首相を狙おうという人物が一つの中国論を持ち出した。それも、台湾籍を持っていたことが問題視され、中国とは関係のない人物が自らの釈明のためだけに持ち出したのだ。これでは台湾の人々が不快に思うのも無理はない。台湾にルーツを持つ蓮舫氏に対する期待は高かったが、後ろ足で砂をかけられたような思いだろう。

 自分の身を守る釈明のために、台湾の対日感情を傷つけてしまう......。自分を犠牲にして国益を守るのが本来の政治家だ。彼女のやり方はその真逆。この一点をもってしても政治家としての能力に疑問符を付けざるを得ない。

 法務省は本日(15日)、一般論としてだが、日本国籍を取得した後も台湾籍を残していた場合、二重国籍状態が生じ、国籍法違反に当たる可能性があるという見解を発表した。もう一度言う。蓮舫氏は即刻、民進党代表を辞任するべきだ。

李小牧(り・こまき)

最終更新:9/15(木) 18:10

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