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ニュー・ジェネレーション路線の“青写真”――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第180回

週刊SPA! 9月15日(木)9時10分配信

 1994年はビンス・マクマホンにとって “1984体制”のちょうど10年後の現実だった。

 “1984体制”とはWWEによる全米マーケット制圧プロジェクトのことで、1984年はそのプロローグにあたる。いまになってみればそのほうが非現実的なビジネス・モデルではあるが、1984年までのアメリカのプロレス界は完全な地方分権型で、全米各地に20団体から25団体のローカル・テリトリーが共存し、それぞれの団体がそれぞれの地域でそれぞれ独自の活動をおこなっていた。

 メジャーな団体または組織はNWA(ナショナル・レスリング・アライアンス=1948年発足)、AWA(アメリカン・レスリング・アソシエーション=1960年発足)、WWE(当時はWWF=ワールド・レスリング・フェデレーション=1963年発足)の3グループ。NWAはプロモーターとプロモーターのよこのつながりを組織化した加盟式の団体で、AWAはアメリカ北部と中西部に大きな興行テリトリーを持っていた団体。WWEはニューヨーク・ニューヨークを中心に東海岸エリアを活動テリトリーとする興行会社だった。

 地方分権システムが30年以上もつづいたもっとも大きな理由は、全米各地に点在するプロレス団体のテレビ中継がそれぞれのエリアのローカル・テレビ局だけで放映されていたことだ。テキサスにはテキサスのプロレスがあり、フロリダにはフロリダ、テネシーにはテネシーのプロレス、オレゴンにはオレゴンのプロレスがあって、その土地に住むプロレスファンにとっては地元のプロレスだけがただひとつのプロレスだった。

 この地方分権システムを根底からひっくり返したのは、1980年代前半に起きたケーブルTVの一般家庭への爆発的な普及だった。いちばん最初にアメリカじゅうのプロレスファンから絶大な人気を得た全米中継番組はTBS(ターナー・ブロードキャスティング・システム)が毎週土曜の夕方にオンエアしていた“ジョージア・チャンピオンシップ・レスリング”だった。ケーブルTVの普及は、プロレスファンに地元のプロレス団体だけがプロレスではない、という現実を突きつけた。

 ビンスはこのケーブルTVという新しいメディアをひじょうにスマートに利用した。それまで東海岸エリアのテレビ視聴者向けに制作していたWWEのTVショーを全米の視聴者を対象とした番組にリニューアルし、ケーブルTVの電波に乗せた。

 これと同時進行でビンスは“Bショー”と総称される1時間ものの番組をいくつかプロデュースし、これらをシンディケーション・パッケージとして全米のローカル局に番組販売していった。この“2層式”のメディア戦略により、アメリカじゅうのどこの州でも毎週、WWEのTVショーが放送されているというシステムが確立したのだった。ここまでが“1984体制”の初期モード設定ということになる。

 ハルク・ホーガンがアイアン・シークを下し、初めてWWE世界ヘビー級王座を獲得したのも1984年だったことはいうまでもない。WWEはホーガンを新しい主役に全米ツアーを開始し、それまでNWAエリア、AWAエリアとカテゴライズされていたフロリダ、ジョージア、テキサスなどの南部エリアからミネアポリス、シカゴ、デンバーなどの中西部、ロサンゼルス、サンフランシスコの西海岸エリアにも進出。その興行テリトリーをいっきに全米に拡大した。

 ビンスにとって“1984体制”から10年後にあたる1994年の最大の事件は、やはりホーガンの退団だった。WWEは数年まえからホーガンの引退――WWEのマネジメントによる俳優転向のプランを立てていたが、結果的にホーガンとビンスは袂を分かった。ビンスはホーガンに“別格”のポジションを用意しようとしたが、ホーガンは“主演”ではないところで試合をすることを完全に拒否した。

 ホーガンが消えたことで、逆説的ではあるが1990年代のニュー・ジェネレーション路線がいっきに具体化した。キーパーソンはディーゼル(ケビンン・ナッシュ)、ショーン・マイケルズ、ブレット・ハートの3人だった――。(つづく)

※この連載は月~金で毎日更新されます

文/斎藤文彦 イラスト/おはつ

※斎藤文彦さんへの質問メールは、こちら(https://nikkan-spa.jp/inquiry)に! 件名に「フミ斎藤のプロレス講座」と書いたうえで、お送りください。

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最終更新:9月15日(木)9時10分

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