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田原総一朗:南シナ海、北朝鮮の核実験問題を巡る中国習近平政権「強気」の正体

nikkei BPnet 9月15日(木)9時52分配信

南シナ海の領有権問題の背景

 中国の習近平国家主席は今、非常に難しい舵取りを迫られていると思う。

 中国は南シナ海の領有権を主張して、スカボロ礁を埋め立てて軍事基地の建設を着々と進めているが、フィリピンがこれに反発し、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所に提訴した。裁判所は7月12日、「中国の領有権の主張は、法的根拠がない」として、中国の全面敗訴となった。だが、中国は埋め立て・建設を中止する気配はない。

 9月5日に閉幕した日米欧に新興国を加えた20カ国・地域(G20)首脳会議(杭州サミット)では、世界経済の持続的な成長のために「すべての政策手段を活用する」と明記した首脳宣言を採択して閉幕したが、議長国の中国の思惑通り、南シナ海の領有権問題は議題にはならなかった。

 9月8日に閉幕した東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議においても、日本などと、南シナ海の領有権については中国寄りのカンボジアやラオスなどとの足並みが乱れたこともあり、議長国のラオスが発表した声明では、仲裁裁判所判決への言及は避けられた。

 中国は領有権争いのために米国と近いアジアの国々に圧力をかけており、強硬な姿勢を見せているかのように見える。しかし、果たしてこれは習近平政権の「強気」の表れなのだろうか。

 実は、南シナ海を巡る動きは、習近平政権が積極的に推し進めているというよりは、軍部(海軍)が強引に進めているのでは、という見方がある。そして習近平国家主席は軍部をコントロールできず、逆に軍部との衝突を避けるために、南シナ海の領有権を強行に主張するというポーズを見せているというのだ。

北朝鮮の核実験は中国とアメリカへのメッセージ

 習近平政権が抱える問題は、これだけではない。今、頭を悩ませているのは、北朝鮮問題だ。北朝鮮は9月9日、5度目の核実験を行い、弾道ミサイルに装着可能な小型化した核弾頭の爆発実験に初めて成功したと発表した。

 これを受け、国連安全保障理事会は緊急会合を開き、北朝鮮の5回目の核実験を「強く非難する」との声明を発表した。ただ、日米が制裁強化を主張したのに対し、中国の劉結一大使は途中退席し、「すべての関係国は相互の挑発行為を控えるべきだ」と言い残し立ち去った。

 中国にとっては、北朝鮮はなくてはならない「外交カード」で、世界の問題児である北朝鮮の後ろ盾という立場を手放したくない。もし、朝鮮半島が韓国に統一されるようなことがあれば、中国は外交カードを失うことになってしまう。それだけは避けたい事態なのだ。

 もちろん、北朝鮮にとっても中国はなくてはならない存在だ。北朝鮮は、中国の援助なしにはやっていけない国だからだ。ただ、2013年12月に金正恩が、中国とのパイプ役で、正恩体制でもナンバー2の元国防委員会副委員長でもあった張成沢氏を処刑してしまってから中国との関係は冷えている(関連記事「サウジ・イランの国交断絶、北朝鮮の水爆実験のウラを読む」を参照)。

 北朝鮮が核実験を繰り返しているのも、中国、そしてアメリカを振り向かせるためのシグナルとも言える。

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最終更新:9月15日(木)9時52分

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