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“仕事とは何か”を突き詰める『キリンビール高知支店の奇跡』

日経トレンディネット 9月15日(木)11時53分配信

 新発売から4カ月で、出荷量が16倍に激増。ビールの話ではない。全国的に最下位ランクで「お荷物」扱いされていた支社を、2年半で県内トップシェア奪回まで盛り返した経験録『キリンビール高知支店の奇跡』の売れ行きだ。4月の発売当初は1万部だった発行部数が、地道な増刷を重ねて4カ月で16万部に達している。

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 本書が初の著作となる著者は、日本有数の企業であるキリンビールで副社長の地位まで上りつめた人物。さぞかし順調に出世街道を歩み続けたのかと思いきや、「左遷」のシーンで本書は幕を開ける。1995年当時、著者は45歳。負け続けの代表格・高知支店長の辞令を受けたことで、出世コースには戻れないとあきらめてもしかたがない年齢だ。

 著者自身も当時は「懲罰的な人事だ」と感じ、周囲も「田村は終わった」とうわさしていたという。だが、もともと「現場の重要性」を仕事の信念として強く心に留めていた著者は、「売れないのは何故か」というヒアリングを現場の営業スタッフ全員に対して行うことから始めていく。社内で答えがでないと悟るや、問屋や販売店に聞いて回り、その後は宴会の場でヒアリングを重ねていく。年に顔を出した宴会の数が270回以上というのだから、その熱意と行動力には驚かされる。もっとも、高知の人たちが無類の宴会好きだという素地もあるのだが。

 しかしそうやって現状把握を重ねつつも、支店長である著者は3カ月かけても方向性を定められずに悩み続ける。どういう指示を出せば、現状を打破できるのか。

 やがて著者は、支店の壁に「バカでもわかる単純明快」と大きく書きだし、飲食店営業にターゲットを絞る戦略をメンバーに伝えることになる。単純なことを愚直に地道に徹底してやる、というのが、著者の出した結論だったのだ。

 サブタイトルに「勝利の法則は現場で拾え!」とある通り、著者は「闘いに必要なことは、高知支店ですべて学んだ」と振り返る。実際に高知支店で好成績を収めたのち、著者は四国4県を統括する本部長、東海地区本部長、本社営業本部長、代表取締役副社長とより広い市場で戦いを続けていき、キリンビールにとって9年ぶりとなる全国ビール市場でのトップ奪回をも実現させている。そのすべてにおいて、高知県での6年間の経験がベースになったことも、本書の後半で具体的に示されていく。

 奇抜な発想があるわけでもなく、淡々と現状把握と地道な営業を実践させていった結果の大成功。営業の醍醐味をストレートにつづった内容ながらも、すべてのビジネスパーソンに「コツコツの積み重ねが起死回生を生む!」という強いエールを感じさせるのが、売れ続ける一因だろう。現時点での読者層は40~50代中心。まだまだ広がっていきそうだ。

『キリンビール高知支店の奇跡』田村 潤

 高度経済成長期から長年国内シェア1位の座を守り続けていたキリンビール。ライバル会社のアサヒビールが1987年に「スーパードライ」を発売したことで次第にシェアを下げていき、2001年にはトップの座を奪われてしまう。全国的にシェアを食われていく大逆風まっただ中で、高知支店はなぜ県内シェアを挽回できたのか。その実態を振り返る。

(講談社+α新書/780円)

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最終更新:9月15日(木)11時53分

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