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基幹社員なら転居転勤は当たり前?

NIKKEI STYLE 9/16(金) 7:00配信

 エンターテインメント、トレンド、健康・美容、消費、女性と働き方をテーマに、ヒット案内人が世相を斬るコラム「ヒットのひみつ」。今回のテーマは、女性社員の転居転勤問題。これまで総合職は転居転勤ありが前提という会社が多かったが、その前提は変わりつつある。一方で、女性社員でも転勤をきっかけに伸びるケースがある。

 「ウチは辞令があればどこにでも異動するという総合職一本。女性活躍を進めたいが、転居を伴う転勤をどうすればいいか悩む」とは多くの人事担当者や女性活躍推進担当者から聞く言葉だ。民間企業でも官公庁でもそれは変わらない。かたや女性たちからも、「独身のときはどこにでも異動できたとしても結婚して子どもを持ったら難しい。いずれ転勤になるかもと思うと不安だ」との声を聞く。今回は、女性活躍推進においてネックになると思われる「転居転勤」について考えてみたい。

 基幹社員は、時間や場所の制約なくいつでもどこでも働ける。または働くことが当然である。この前提をもとに日本の企業は従業員を配置してきた。しかし、それは、自宅に家事・育児・介護を引き受けてくれる専業主婦という存在がいたからできた働き方だ。女性が活躍するためには、その前提を修正しなければいけないだろう。

 転居政策の現状と課題を研究する法政大学教授の武石恵美子氏は、「多様性(ダイバーシティー)推進において転勤政策のあり方が阻害要因のひとつとなると考えられるが、これまで転勤に関する実態が十分に把握されていなかった」との研究の背景を語る。働く女性や共働きカップル、または家族の介護を抱える従業員が増えれば従来の延長で転勤政策を実施することが難しくなる。その一方で転居を必要とする人事異動があるとする企業割合は増加傾向にある。企業のヒアリング調査、企業と個人を対象としたアンケート調査を実施。その研究結果によると、定期異動など異動を実施する企業は95.6%で、転勤可能性のある区分で採用されている大卒社員のうち、これまで転勤を含む異動経験がある従業員は74.4%。転勤回数は2.1回。一方、転勤経験がない従業員は全体の35.5%になっており、転勤対象の従業員でも転勤しない割合は比較的高いといえる。

 「人材育成や経営上の理由から転勤は生じるが、従業員自身は転勤により能力開発が行われたという実感は少なく、満足している状況にない。転勤が異動経験よりも効果があると言えない結果となった。ここが一番問題だろう。内示から転勤までの期間が短かったり、赴任したらいつまで続くか分からなかったり、赴任期間や本拠地(メーンの勤務地)が不明確だったりすると、従業員の負担が大きくなる。転勤にあたってプライベートな生活での支障を6割が経験している。逆に、自分の希望を優先してくれたという従業員側の認識は転勤効果の実感を高める。今後は、転勤対象者の範囲や自身の転勤を透明化や可視化できる運用のあり方、本人の希望や事情との調整という面で検討を行うことが必要だろう」(武石教授)

 総合職なら転居転勤は当たり前だという価値観、転勤をその会社への忠誠心と見なし“踏み絵”と見るような考え方、転勤したら次はどこに行くかもわからない“根無し草”の状態、そしていつ戻れるか分からないという不透明な運用は、女性を含む多様な人材の活躍が求められる時代においてはプラスにならない。それどころか従業員が退職や転職を考えるきっかけにもなりかねず、リテンションマネジメントの観点でも問題だ。よりきめ細やかな対応が必要であり、さらには転居転勤のあり方、必要性を問い直す時期にきているようだ。

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最終更新:9/16(金) 7:00

NIKKEI STYLE

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