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音楽から紐解く新海誠ブランド

コンフィデンス 9月17日(土)7時0分配信

 最新作『君の名は。』が大ヒットし、ジブリや細田守と並ぶアニメーション映画家として、確たる評価を得た新海誠。2002年の自主短編映画『ほしのこえ』から始まり、彼には5本の過去作品があるが、いわゆる“新海誠ブランド”というものは、2007年の『秒速5センチメートル』で確立された。

初登場1位を獲得したRADWIMPSのサウンドトラック(下写真)

 もはや芸術の域に達する美麗な背景絵を多彩なカメラワークとカッティングで動かし、J-POPのメロディとともに“画で語る”スタイル。まるでアニメーションMVが劇中に組み込まれたかのような演出は独特の世界観を形づくり、新海ファンなら『秒速5センチメートル』では「One more time, One more chance」(山崎まさよし)を、『言の葉の庭』(2013年)では「Rain」(秦基博)をすぐに思い起こすことだろう。

 このJ-POPを用いた叙情的な画作りのセンスは特質だ。それはジブリ映画にも細田映画にもないオリジナルの魅力でもある。今作『君の名は。』においてもRADWIMPSの「前前前世」に乗せて、様々なカットをフラッシュバックさせるシーンがあったが、このとき観客の目には、どこからともなく涙が浮かんできたはずだ。視覚と聴覚ではなく、心に直接届く映像。彼こそ“画で泣かせる”天才なのだ。

 そんな新海作品だからこそ、劇伴にも切なさが光る。『ほしのこえ』から『星を追う子ども』(2011年)までを担当した天門。『言の葉の庭』のKASHIWA Daisuke。メロディが際立つ彼らの音楽は、本来なら劇伴向きとは言えない類のものだ。しかし画で語る天才の新海誠の手にかかれば、そんな音楽の主張も無言のセリフとなって映像に馴染んでしまう。

 今作ではRADWIMPSが劇伴も担当したが、その美しいメロディは、登場人物たちの心象を雄弁に語っていた。彼らもまた、いつもどこかに切なさを漂わせてきたバンド。相性が悪いはずがなかった。

 新海作品には元々、見る者を「君」と「僕」の閉ざされたセカイの中に埋没させ、アンニュイの海に溺れされるセンチメンタルな側面がある。今作では破滅のあとの奇跡という少し開かれたセカイが描かれており、そこがジブリや細田守と並び称される要因にもなっているのだが、こと音楽の扱いにおいては、以前と変わらぬ“新海誠らしさ”に溢れていたと思う。

 もしまだ未見の読者がいるならば、今すぐにでも映画館に行ってほしい。彼の作品を観れば、自分でも知らなかった涙腺のスイッチが刺激される。そのときアナタの耳には、セリフではなく音楽が鳴り響いているはずだ。(文/西原史顕)

最終更新:9月17日(土)7時0分

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