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「戦略のパートナー」「変革のエージェント」としての人事部~ビジネスにいかに貢献するのか~(サイバーエージェント曽山氏×神戸大学金井氏)【HRC2016春】

日本の人事部 9/16(金) 7:30配信

企業における人事の役割とは何か。近年、人事は「戦略のパートナー」「変革のエージェント」として、積極的に変化を生み出す源泉としての役割が期待されている。人事がもたらす変化はビジネスにいかに貢献するのか。神戸大学大学院教授の金井壽宏氏、サイバーエージェントの人事担当役員である曽山哲人氏が、これからの人事についてディスカッションを行った。

金井氏からの問題提起:人事部としていかにビジネスに貢献するのか

セッションは、金井氏の問題提起から始まった。「人事部の役割とは何かを考えるときに、つい『何をやっているか』で考えがちですね。しかし本当は、『何をもたらしているか、どういう届け物ができているか』と考えなければなりません。人事部が存在するおかげで、もたらされるものがあるはずです」

金井氏はヒューレット・パッカード社を例にしながら、「創業者二人のすぐ後に三人目として人事部長を雇うでしょうか」と問う。社員が100人、500人と増えて、人の管理業務が大変になって辛抱できなくなったとき、やっと「人事のプロがいるな」と雇うことになるのではないか、というのだ。

「そのとき入社する人事部長は、ビジネスのパートナーとして入るわけです。初めて社長が人事部をつくるとき、どういう思いで人事を作るのか。そこに人事部の役割があります」

人事部があるおかげで、ビジネスが進む、戦略が実行される、となればそれは「戦略のパートナー」であり、ラインのリーダーたちが「変革がやりやすくなった」と言ってくれれば「変革のエージェント」になる。

「『人事部がいろいろやってくれると、変革がうまく進む』と言われているところは多くあると思います。曽山さんはサイバーエージェントの草創期から在籍されているので、今日は『人事部が経営に資する』、その原点の話をお聞きしたいと思います」

曽山氏によるプレゼンテーション:サイバーエージェントにおける戦略人事

曽山氏がサイバーエージェントに入社したのは1999年。当時20名だった社員は、今では3500名になった。曽山氏は最初の6年間は広告営業を担当し、10年前に人事に移動した。

「入社してから6年間は、法人向けの広告営業を担当しました。営業やマーケティングを経験したことで、人事としてプラスになったと思うのは、相手の心理を意識するようになったことです。私は、人事はマーケティングだと思います。人事には社員の心理をどれだけ理解できるかが問われます」

曽山氏はよく、社員と食事を共にするという。いろいろな業界の人事の人たちと話をするうちに、成果を上げている人事や自信を持っている人事は、必ず社員と多く話をしているという事実に気づいたからだ。サイバーエージェントは部門によって雰囲気が違っているが、統一されているところもある。それは人の価値観だ。

「例えば、チームプレイを重視しようとか、失敗した人にセカンドチャンスを与えようとか、人が競争力であるという企業文化を重視しています。強い組織、変化に対応できる組織に共通するのは企業文化の強さです」

サイバーエージェントは、赤字続きだった2003年当時、退職率30%という最悪の状態だった。経営陣は社員を大事にするという方針を固め、新たな人事制度の導入に取り組み、2005年には人事を強化すため人事本部を設置、曽山氏を人事本部長にしたが、創業当初の人事について、曽山氏は次のように語る。

「創業当初は混乱期で、人事は大量に制度を試していました。形骸化した制度を残すことは人事が機能していないことにつながるので、止める勇気も必要。赤字続きだった企業の人事としてやるべきことは、とにかく経営が困っている課題を解決することでした。赤字で経営陣が信頼されておらず、人事はそれをサポートする必要があった。当時私は営業から人事を見ていましたが、感じていたのは、人事は経営が厳しいときにこそ、パートナーにならなくてはいけないということです」

曽山氏は、できたばかりの人事本部に異動。「あるとき一人の役員から、事業部長を中途採用したが、社員から嫌われ、業績も上がらない。面談してもらえないかと依頼がありました。結果としてこの方は辞められるのですが、役員からは非常に感謝されました。その後、下の社員たちがすごくやる気になって業績が上がったからです。このとき、経営の依頼に満額回答することの大切さを痛感しました」

また、このころから曽山氏が、新たな人事制度の導入時に気を付けるようになったことがある。それは「シラケのイメージトレーニング」を行うことだ。

「新しい制度を導入するときには、ポジティブな反応と同時にシラケの声も出ます。そのため、自分で先にシラケのイメージトレーニングをするようになりました。いま制度面で成功している企業は、このシミュレーション能力が高いのだと思います」

現在、人事は新たなフェーズとして、事業人事の強化に取り組んでいる。そこで意識しているのは、対立する意見があれば双方の良さを取り込んだ形を模索するというスタンスだ。

「『ビジョナリー・カンパニー』という本の中に、長期的に伸びる会社は矛盾にぶち当たったとき、短絡的にどちらかを選ぶのではなく、ANDで解決できないか考えると書かれていました。今は社員からクレームがあっても、まずは半分だけ受け止めて、もう一方の話も聞くように心がけています」

2016年現在、サイバーエージェントの人事部が新たに注力していることが三つある。その一つは「人事連邦制」だ。「ビジネスパートナーを強化するための施策です。中央の人事と部門の人事を並列で行えるよう、お互いの人事部長が同席して意見を交わす場を初めて設けました。これにより連帯感が持てるようになりました」

二つ目は「人材科学センター 」。これは人事のデータ分析を行う専門チームであり、評価、勤怠などを統計分析している。「私が新卒採用の最終面接でSやAと高く評価して入社した社員が、入社後にどの程度活躍したかを分析しました。結果、活躍したといえるのは20%程度。他の役員のS・A評価者も調べましたが、10数%でした。これでわかったのは、面接では、人はなかなかわからないということです。そこで私たちは、面接の回数をゼロに近づけるように採用方法を変えています。また反対に、インターンシップなど長い時間で人を見る機会を増やしています」

三つ目は「カルチャー推進室」。これは社内のカルチャーを目に見える形で社内に伝達する部署といえる。「専門部署をつくって、社内報をつくったり、ミッションステートメントの改定を行ったり、社内の仕事におけるケーススタディをインタビューで文章して社員に配布したりしています。失敗談も本人にインタビューして掲載しています」

曽山氏は、「人と組織で業績を上げるのが戦略人事」と語る。最後に曽山氏は戦略人事を成功させる五つのポイントを紹介した。一つ目は、「経営の満額回答が先」という考え方だ。人事の考えがあっても、それは後回しとなる。二つ目は、「経営の選択肢を増やすこと」。曽山氏は、議論の幅を広げるため、経営に提言を行うときは三つ程度の選択肢を出すと語る。三つ目は、「現場と直接対話している自負」だ。まさに現場とコミュニケーションが人事の強みになる。

四つ目は、「何ができればOKなのか」という自身への問いだ。「『この育成プログラムは何ができればOKなのか』と、常にゴールへの問いかけを行っています。成果のない施策、ゴールのない施策では意味がありません。目標とする成果は役員と共有し、約束事にしています」

五つ目は、「運用をライトにすること」。できる限り、運用に手間をかけないという。「制度の運用にかかる手間をどこまで軽くできるか。ここに意識がある人とない人とでは、結果に大きな差が出ます。例えば新規事業プランコンテストで、部下が応募者一人ひとりに感謝メールを送っていたことがありました。丁寧な対応ではありますが、パワーがかかりすぎます。止めさせて同報メールにしました。人事も常に効率を考える必要があると思います」

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最終更新:9/16(金) 7:30

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