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米バブル市場はサウジアラビアからの一撃で崩壊か

JBpress 9月16日(金)6時15分配信

 日本経済新聞(9月2日付、電子版)は、米エネルギー市場調査会社ストラテジック・エナジー・アンド・エコノミック・リサーチのマイケル・リンチ社長のインタビュー記事を掲載した。リンチ氏は日本ではあまり名前が通っていないが、原油市場分析の分野では世界的に評価が高い。

 そのインタビューの内容で興味深かったのは、リンチ氏が「ピークオイルはもう来ない」と述べ、2000年代に一世を風靡した「ピークオイル」論にとどめを指したことだ。

■ 今後、長期にわたり原油価格に下押し圧力

 ピークオイル論とは1950年代に米国地質調査所のハバート氏が提唱した説で、「世界の原油生産量はピークに達した後に、釣り鐘のような曲線を描いて急激に低下する」というものだ。

 1972年にローマクラブが「成長の限界」を発表した当時、原油の「寿命」はあと30年と言われていた。その頃は、原油埋蔵量は2兆バレルで既に1兆バレルを産出しているため、残り1兆バレルの原油は早晩枯渇すると見られていた。国際エネルギー機関(IEA)も2010年に「在来型の原油生産量は2006年にピークを迎えていた可能性が高い」としている。

 しかし、ピークを迎えたはずの米国の原油生産量は、2014年に過去最高を更新した。以前は商業ベースに乗らなかったシェールオイルの生産量が急増したからだ。

 現在は、シェールオイルをはじめとする非在来型の採掘可能な原油埋蔵量が拡大している。リンチ氏は「世界の原油埋蔵量は11兆バレルあり、既に産出した分を除いても、今後250年以上、世界の需要を賄える規模」と述べている。

 新たな油田も発見されている。2000年にはカスピ海北東部でカザフスタンのカシャガン油田が発見された。カシャガン油田は、過去30年間に発見された油田の中で世界最大規模である。2013年9月に生産が開始され(日量37万バレル)、最終的には日量150万バレルの生産を目標としている。また、ブラジルのプレソルト層(海底の岩塩層)の深海油田も生産を開始した。

 OPECはカシャガン油田の増産を受け、9月2日に発表した月報の中で「来年、OPEC非加盟国の原油生産が増加するため、世界的な供給過剰が持続する」との見方を示した。IEAも9月13日に公表した月報で、「今年第3四半期に中国とインドの需要が劇的に減速したことなどから、原油市場の供給過剰状態は来年も継続する」と見通している。

 このように、原油埋蔵量の増加、新油田の発見、中国・インドの需要減退などによって、長期にわたり原油価格に下押し圧力がかかることは避けられないだろう。

■ 米国が恐れるサウジアラビアの米国債大量売却

 加えて今後、原油価格の大きな下押し圧力の1つとなりそうなのが、米国の金融市場で懸念されるビッグバンである。サウジアラビアの動向次第で、深刻なビッグバンが引き起こされるかもしれない。

 9月9日、米国株式市場は6月24日以来の大きな下げに見舞われた。米国の在庫減で急上昇していた原油価格も、一転急落した。株式市場の下げは、日米欧の長期金利の上昇が直接の原因である。

 長期金利の上昇(国債価格の下落)の原因の1つとして、筆者は9月9日に米下院で可決されたある法案に注目している。「2001年の米同時多発テロの遺族がサウジアラビア政府に対し賠償金を請求できる」法案(テロ支援者制裁法)のことだ。

 5月17日、米上院がテロ支援者制裁法を全会一致で可決すると、オバマ政権は法案阻止のために必死の努力を行ってきた。しかし、努力も甲斐なく下院も全会一致で法案を採択した。

 オバマ政権が法案成立に反対するのは、「テロ支援者制裁法がサウジアラビア政府との関係に悪影響を及ぼす」と危惧しているからだ。そしてもう1つの理由は、サウジアラビアによる米国債売却を防ぎたいからである。

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最終更新:9月16日(金)6時15分

JBpress

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