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なぜ国際機関の経済予測は当たらないのか

東洋経済オンライン 9月16日(金)6時0分配信

 私は大企業の役員・幹部の方々向けに講演をするときによく尋ねるのですが、彼らは口々に「原油価格の下落など予測できるわけがなかった」「こんなに円高になるとは思わなかった」と言います。

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 そんな彼らがさまざまな見通しで依存しているのが、国際機関やシンクタンクのあてにならない予測です。だから2016年のように、前年と打って変わって市場のトレンドが転換してしまうと、円相場や株価の予想は横並びで外れてしまう傾向が強いのです。

 それでは、なぜ国際機関の経済予測は当たらないのでしょうか。

■再三にわたって繰り返される下方修正

 IMFやOECD、世界銀行などの国際機関の予測では、相次いで上方修正や下方修正が繰り返されています。世界経済の拡大期には、時間の経過につれて上方修正される一方で、世界経済の不況期や低迷期には下方修正される傾向が強いという特徴があるといえるでしょう。

 実際のところ、近年の国際機関の経済予測では、時間が経つごとに再三にわたって下方修正が行われています。たとえば、IMFは世界経済見通しのなかで、2016年の世界経済成長率については、2015年7月時点では3.8%としていましたが、2016年1月には3.4%へ、4月には3.2%へと引き下げ、7月にはさらに3.1%へと引き下げているのです。

 IMFは米国の住宅バブル崩壊が始まろうとしていた矢先であっても、それをバブルと認識することがまったくできていませんでした。ですから、2007年4月の時点では、2008年の世界経済成長率を4.9%と予測していたばかりか、バブル崩壊の表面化(パリバ・ショック)が直前に迫っていた7月の時点でも、世界経済は引き続き好調に拡大するだろうとして、成長率を5.2%へと上方修正していたのです。

転換点が読めない…

 ところがその直後、パリバ・ショックとそれに伴うサブプライムローン問題がクローズアップされると、2007年10月の見通しでは一転して、世界経済成長率を4.8%へと引き下げ始めます。さらに、2008年1月の見通しでは、成長率を4.1%にまで大幅に引き下げることになります。その後もベア・スターンズやリーマン・ブラザーズの破綻があり、現状を追認した成長率の引き下げが急激に進んだのは、みなさんもご存じのとおりでしょう。

 当然のことながら、米国や欧州、日本の成長率をはじめ、為替や株価、原油価格などの見通しでも、2007年前半では事前に動向の変化が予想できずに、まったく当たらなかったというのは言うまでもありません。

■現状を後追いするので転換点を読めない

 IMFの事例からもわかるように、国際機関では、経済や市場の見通しはその時のトレンドに沿ってなされているのが通常です。つまり、現状を後追いしながら予測しているのと変わらず、事前にはトレンドの転換点をまったく読むことができないのです。国際機関にとっては予測が外れてもダメージはまったくありませんが、それを重宝する企業にとっては、転換点が見極められないのは致命的なダメージを受ける可能性があるといえるでしょう。

 そのうえ、国際機関による予測の弱点は、トレンドに沿ってなされているということだけではなく、単純極まりない直線的な予測しかできないということにもあります。経済という生き物は物理学でいう複雑系のような動きをするので、本来であれば曲線的な予測をしなければならないというわけです。グローバル経済の加速性や伝播性、企業の生産性の向上を加味すれば、曲線的な予測ができないのは頼りないといわざるをえないでしょう。

 もう少しイメージしやすいように説明すると、直線的な予測の前提には、 y=100+ax(あるいはy=1+ax)の式に表されるような考え方があります。

 この考え方の最大の欠点は、たとえば2.0%、2.2%、2.4%というように、比例的に数字が計算されるというところです。これに対して私は、世界の連鎖性が強まっているグローバル経済下では、y=100+ax2乗(あるいはy=1+ax2乗)の式のように乗数的な計算がされるほうが、将来の予測には適しているように考えています。

 そのように計算すれば、いずれトレンドの追認は不可能となり、転換点を意識せざるをえなくなるからです。(左図参照)

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最終更新:9月16日(金)7時45分

東洋経済オンライン

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