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終身雇用の「崩壊」は、こうして売り込まれる

東洋経済オンライン 9月16日(金)6時10分配信

 「終身雇用の崩壊」というワードは、これまでも、繰り返しメディアで取り上げられてきた。昨今では人材不足や採用難が叫ばれているが、一方で40代以降の社員に対する「リストラ」の話は、まだまだ目にすることが多い。

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 日本では法律や判例上、企業が労働者を解雇する要件は厳しい。一度雇用してしまえば簡単に関係を解消できないことが原則だ。仕事の成果が出ないローパフォーマー(いわゆるローパー)の扱いに苦慮した企業の中には、「追い出し部屋」などを使った嫌がらせや、執拗な退職勧奨など、違法と評価されかねない手段を使ってきたところもある。しかし、そうした行動は裁判に持ち込まれ、マスコミでも批判されるなど、会社の社会的評価を貶めるリスクがあった。

■人材管理の「出口」を戦略的に考えている

 この状況を企業も座視しているわけではない。実は、人事の世界では「イグジットマネジメント」という考え方が広がっている。「リストラ」という言葉は広く馴染みがあるが、この言葉を聞いたことがある人は、多くないかもしれない。これは、業績が悪化したり、ローパーを放置しておいて急に辞めさせるのではなく、人事システムの運用に、あらかじめ一定数が定年前に会社を去る仕組みを作るものだ。いわば、戦略的に人材の出口(イグジット)管理を行うことである。

 今回入手したのは、大手人事コンサルティング会社のクライアント向け資料。この資料の内容から、サラリーマンが無防備に「出口」に追いやられないためのヒントが見えてきた。

「雇用される能力」こそ本当の価値?

 この資料は2010年に作成されたもので少し古いが、現在の状況でも通用する中身となっており、大いに参考になるものだ。

 まず、資料は「みずみずしい組織をいつまでも保つために組織と個人の関係解消のマネジメントは不可欠です」という一文から始まる。続いて、「雇用の保障は社会の課題としてとらえ、個人のキャリアはすでに転職を前提とする中での設計になっています」と述べられている。

 これは、雇用問題は本来国が政策として対応するべきものであり、個々の企業が責任を負うものではないということだろう。そして、経営環境の不確実性が高まっている中で、会社が価値を生み出す従業員に提供するのは、長期安定雇用ではなく、「個人の『雇用される能力』を開発する機会」だという。「流動性の高い社会で企業が行う努力は、社内人材を育むとともに、それはイコール社外価値の高い人材を育むことでもあります」とされている。

 現状でも、日本において雇用の流動性が高いと言えるのかは見解が分かれるところだが、資料では流動性が高いという前提で話が進んでいく。

 そして、こうした方針を実現するためには、企業は採用段階から思考を改める必要があるという。次のページでは組織の入り口である「エントリーマネジメント」についての考え方が提示されている。

 まず、採用とは「入りたい人材を選ぶ」という受け身のスタイルではなく、「採りたい人を口説く」営業活動であるとする。また「会社に人材を入れる」という考えを否定し、「人材の中に会社を入れ続ける」という発想を持つべきとされる。

■社内でも「自立」する意識がない人はアウト

 一見すると、どういうことなのか分かりにくいが、これは「会社」という入れ物はそもそも存在せず、組織は「人ありき」という考え方をとるものといえるだろう。さらに資料では、「採用とは単なる人員の確保ではなく、『共感者の創造』。共感してもらいたい会社の理念や価値観を応募者の頭の中に入れること」と続く。これは、自立意識の高い価値観に「共感」した人だけを残すべき、という発想につながる。確かに、こうした考えを持った人だけの集団であれば、組織としては理想だろう。

 さらに次は、いよいよ本題である「組織の出口管理」=「イグジットマネジメント」の必要性に話は進む。資料は、エントリーマネジメントさえ行っていれば、「個人と組織の相思相愛」が永続するわけではないと指摘する。なぜなら、「個人も組織も社会的ニーズも全て変化しているから」だ。

 変化によって「以前は輝いていた人材が最近はぱっとしない」「パフォーマンスの低い人材が滞留し、中には抵抗勢力を形成する」という事態が起こるという。前者はよくある話だが、後者は「抵抗勢力」と穏便な表現ではない。組合活動などを想定しているのだろうか。

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最終更新:9月20日(火)7時0分

東洋経済オンライン

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