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弁護士が読み解く「高畑裕太の弁護士が送ったFAX」に込められた真意とは?

週刊SPA! 9月16日(金)9時10分配信

 強姦致傷で逮捕されたものの、示談をして不起訴になった高畑裕太元容疑者。釈放直後に弁護士事務所からマスコミに宛てて送信されたFAXが物議をかもしています。冤罪事件などで弁護人がコメントを出すことはありますが、示談後に不起訴処分が決定した刑事事件での「事件性が低かった」とする弁護士声明は異例です。

◆「示談による不起訴ではない」というロジック

 示談をして不起訴を勝ち取っておきながら、事件性が低いことを不起訴理由とする声明には、アンフェアとの批判もあるようです。主張内容よりも気になったのは、示談は不起訴によるものではない、としたロジックです。

 声明では「強姦致傷罪は被害者の告訴がなくても起訴できる重大犯罪であり、悪質性が低いとか、犯罪の成立が疑わしいなどの事情がない限り、起訴は免れません。お金を払えば勘弁してもらえるなどという簡単なものではありません」とし、強姦致傷罪が非親告罪であり、悪質性や事件性などの事情によらなければ不起訴にならず、お金では勘弁してもらえないことを説明しています。

 さらに「違法性の顕著な悪質な事件ではなかったし、仮に、起訴されて裁判になっていれば、無罪主張をしたと思われた事件であります。以上のこともあり、不起訴という結論に至った」とし、不起訴になった理由として、本件の悪質性が低く、公判で無罪主張をする事件であることを挙げています。

◆強姦致傷でも示談で不起訴になる

 悪質性や犯罪性などの事情によらなければ強姦致傷罪が不起訴にならないと断定する点は、結果的にミスリードです。

 強姦致傷罪は非親告罪(告訴がなくても法的に検察官が起訴できる犯罪)ですが、悪質性や事件性などの事情によらない限り不起訴にならない、とする部分は実務相場には合致しません。強姦致傷罪も被害者がいる犯罪である以上、示談が成立すれば一般論として高い確率で不起訴になります。

 示談で告訴を取り下げても必ず起訴される、あるいは起訴が実務相場である旨の誤解が、世間にはあるようです。けがの状態から強姦致傷では罪に問えず、示談をしたことで親告罪の強姦では起訴ができなかった、という見方もありました。実際には、強姦も強姦致傷も示談が成立すれば不起訴になるのが実情です。

「お金を払えば勘弁してもらえるなどという簡単なものではありません」という表現も結果的にある種の効果をもたらしています。卑劣な性犯罪は許されないという、誰もが反論できない道徳観を示すことによって、示談では不起訴にならないかのような印象を与えることに成功しているのです。

 声明では本件が、違法性の顕著な悪質な事件ではなく、無罪主張をする事件であることを指摘し、不起訴の理由としてあげています。

 しかし、和姦の抗弁は一般的に裁判で奏功しにくく、一見の相手に対してはなおさら通用しにくい主張です。加えてデートレイプの実態が指摘されるように、強姦事件の多数は声明がいう「違法性の顕著な悪質な強姦罪」に当たらないケースです。

 起訴されて有罪になっていくほかの事件と異なる特殊性は、なんら指摘されていません。声明が触れられなかった客観的事情こそが重要なのであって、無罪主張をしているというだけでは、不起訴に決定的な影響を与えません。

◆専門家による前提やロジックに潜む危うさ

 示談が成立していれば強姦致傷も不起訴になりますから、示談ができたからこその不起訴であると考えるのがやはり自然です。ところが声明はあえて、不起訴は示談では達成できず、事件性の低さゆえのこととしています。そこまで不起訴理由にこだわるのは、高畑さん親子の今後も関係しているのでしょう。

 本件の背景事情や声明を発表するに至った経緯は明らかではありません。声明が主張する内容の適否については判断材料もありません。本稿の指摘箇所も意図的なものであるとは限りません。しかし声明が出されたのち、被害申告をした女性に対する批判的な意見が増えた印象があります。

 専門家による専門知識の解説は、検証されることなく無批判に受け入れられがちです。特に依拠する前提やロジックについて、素人は専門家を疑いません。だからこそやはり、その文面を注意深く読むべきだと考えるのです。

【長谷川裕雅(はせがわ・ひろまさ)】

東京永田町法律事務所代表。朝日新聞記者を経て弁護士に転身。政治家や芸能人のマスコミ対策を想定した不祥事・危機対応や、同族会社法務、相続問題などに取り組む。著書に『磯野家の相続』(すばる舎)、『なぜ酔った女性を口説くのは「非常に危険」なのか?』(プレジデント社)、『実例に学ぶ経営戦略 あの企業のお家騒動』(リベラル社)

日刊SPA!

最終更新:9月16日(金)9時10分

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