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アメリカ ギフテッド教育に学ぶ、子供の好奇心を伸ばすことの大切さ石角友愛×本山勝寛 『アメリカ ギフテッド教育最先端に学ぶ 才能の見つけ方 天才の育て方』 (石角友愛 著)

本の話WEB 9月17日(土)12時0分配信

本山 石角さんは、今回、『アメリカギフテッド教育最先端に学ぶ 才能の見つけ方 天才の育て方』という本を書かれたわけですが、なぜギフテッド教育の本を書こうと思われたのですか?

石角 うちには6歳の娘と、2歳の息子がいるのですが、娘が3~4歳くらいの時から、親として娘にいろんなポテンシャルを感じ始めたんです。どこの子供さんもそうかもしれませんが、3歳くらいからいろんな質問をするようになり、それが、人はどこから生まれてきたのかとか、一番最初の人間は誰だったのかとか、すぐには答えられない質問ばかり……。また、光や音に対して非常にセンシティブだったり、一回車で通った道はビジュアル的に覚えているようにも思えました。たまたま、教育心理学のプロの友人にその話をしたところ、「ギフテッドの可能性もあるから、早めにそういうプログラムについて調べたほうがいいよ」と言われ、そこで初めてギフテッド教育について知ったんです。

本山 私も、ハーバード教育大学院に留学したので、「ギフテッド教育」については知っていましたし、アメリカではそれがすごく進んでいると聞いていました。ただ、当時は子供もいなかったので、その時はどちらかというと他人事という感じでしたね(笑)。

石角 私は、思い立ったら即やるほうなんで(笑)、友達のアドバイスを受けてすぐ、ギフテッド教育についていろいろ調べはじめ、全米天才児協会という大きな協会があると知って、おそらく日本人として初めてそこに入会しました。年に1度開かれるコンベンションにも参加して、様々な研究者にもお会いし、アメリカにおけるギフテッド教育の最先端を学ぶ中で、これは日本の教育の中でも生かすことができると思い、本を書こうと思ったのです。

本山 石角さんの本によると、ギフテッドは、人口の6%から10%いると書かれていますね。突出した才能の持ち主がそんなにたくさんいるというのが意外に思いました。日本だとごく少数の人というイメージですが、そうじゃなく、教育によって伸ばせるギフテッドがそれだけいるという観点が面白いなと思いました。

石角 ギフテッドは直訳すると、「授かりもの」=生まれながらにして突出した才能を持っている子どものことです。ギフテッドには6分野(知性・創造性・芸術性・リーダーシップ・特定の学問・運動能力)があり、どれか一つでもトップの10%に属する能力を発揮できる子供はギフテッドに定義されると言われています。

本山 ギフテッドを発掘するためには、どのような方法がありますか?

石角 大きく分けると、定量的方法と、定性的方法の2種類があります。定量的方法はいわゆるIQテスト、これは最近は、英語が母国語でない子でもできるようなノンバーバル・アビリティテストが主流です。もう1種類は、専門家が1時間くらい子供にインタビューしてポテンシャルを計るというQA(Qualitative Assessment)メソッドと呼ばれる方法があります。

本山 ノンバーバル・アビリティテストというと?

石角 この分野の権威である、ジャック・ナグリエーリ教授が提唱したもので、英語を母国語としなくてもできるパターン認識が中心となるテストです。ナグリエーリ教授の研究によると、アメリカでも70万人のギフテッドが未発掘で、黒人層では2人に1人が未発掘と言われています。つまり貧困層や英語が母国語でない層は通常のテストでは発掘されづらいので、言葉が分からないギフテッドでも発掘できるように作られたテストです。結構難しいですよ。これで、97%以上のスコアを獲得しないとギフテッドとは認定されません。それこそ0.1秒くらいで、直感的に解けないとダメですね。

テストサンプルのURL https://www.testprep-online.com/nnat-sample-test-kindegarten.aspx

本山 確かに難しいですね。1時間くらいあれば、どうにかなるかと思いますが(笑)。

 日本では、ギフテッドは発掘するものだ、というコンセプト自体が、学校現場にはあまりないですね。

石角 そうなんですね。

本山 2年くらい前に、私の所属する日本財団で、東京大学の先端研の先生と一緒に「異才発掘プロジェクト」(通称ROCKET)というのを立ち上げました。ある分野においてすごく突出した才能や個性を持っているが、学校にはなじめなくて不登校になっている子供たちの才能を伸ばしていくというプロジェクトなんですが、そのプロジェクトに応募が殺到したんです。学校になじめない子供が、才能を伸ばすきっかけが不足しているということを感じました。

石角 それは何か宣伝をされたんですか?

本山 いえ、記者発表しただけで、問い合わせが殺到したんです。やはり、潜在的にニーズがあったのだと思います。そういった子供達を体系立てて発掘する必要があると感じました。

石角 アメリカの場合も、ギフテッドの発掘は大学が主体になってやっていることが多いですが、一番大事なのは、親の姿勢ですね。本にも例を書きましたが、発掘プログラムにひっかかったとしても、親が才能の発掘に積極的でない場合は、ほぼ100%、才能を伸ばせないと言っても過言ではありません。今回、本を書くにあたって、ギフテッドを対象にしたいくつかの学校の説明会に行きましたが、生後2週間の赤ん坊におっぱいをあげながら、夫婦で来ているような人もいました。もちろん会社を休んでです。まだずいぶん先のことだろうに、ものすごい真剣に質問を投げかけていて、その意気込みに感動しました。

本山 ギフテッド専門の小学校ではどのような内容の授業をしているんですか?

石角 私は今回、2つの学校の授業を見ましたが、特徴的なのは、プロジェクトベースの授業の組み立てと、授業にゲーム感覚を取り入れている点だと思いました。たとえば、小学校1、2年でもロボット工学の授業があるのですが、そんなに小難しいことを教えているわけではありません。たとえば、フィンチというカーネギーメロン大学が開発したロボットを、ナビゲーター、ドライバー、アーキテクト、ビルダーなど4つの役割に分担し、グループで協力して動かす。プログラミングの基礎はもちろん、グループワークやプロジェクト管理の方法も学べるようになっているんです。

 市販で手に入るおもちゃを教材として使っている授業もありました。たとえば、50$程度で売っている「オゾボット」というおもちゃは、緑と赤など、複数の色の特殊なペンで「緑赤緑赤」「緑緑緑赤」などの線を描くと、そのパターンを認識して、まっすぐ進んだりトルネード(くるくる回る)したりするロボットですが、どのパターンだとどのように進むかというベーシックなロジックさえ理解していれば、自分の好きなように動かせます。こうやって、プログラミングの基礎となる考え方を身につけているわけですね。みんなゲラゲラ笑いながらとても楽しそうに遊び感覚でやっているのが印象的でした。

本山 ギフテッド教育に、ゲーム感覚で楽しみながら学べるプログラムを取り入れているのは、面白いですね。勉強=辛いもの、ではなく、学ぶことは楽しい、時には興奮して夜も眠れなくなるくらい面白いものだ、ということを子供に気づいてもらうことは、何よりも重要だと思います。私自身も、塾に行ったことはなくて、たとえば、歴史などは、小さいころに身近にあった、「学習マンガ」で覚えたんです。幼少のころ貧しくてエンタメ的なゲームなども何もなかったので、唯一あった学習マンガを、ほとんど覚えるくらい読みまくっていました。

 高校時代には武田鉄矢が原作の『お~い!竜馬』というマンガを読んだことから、坂本龍馬に興味を持ち、それで、司馬遼太郎の『竜馬がゆく』を完読しました。実は、私はそれまで完読した本がなく、はじめにと終わりにだけを読んで読書感想文を書くような子だったんですが、本当に興味をもったことなら、本だって完読できる(笑)。面白い、もっと知りたい、調べたい…という気持ちは本当にすごいパワーを持つんです。

石角 本山さんは、日本財団で「これも学習マンガだ!~世界発見プロジェクト」を立ち上げられ、『人生と勉強に効く学べるマンガ100冊』という本も出されましたよね。

本山 私は、高校卒業後、東大、ハーバード教育大学院と進んで、世界のいろんな教育を見てきましたが、日本の強みはマンガやアニメにあると思ったんですね。いわゆる「学習マンガ」だけでなく、普通のエンタメ作品の中にも、学べるコンテンツがいっぱいある。『学べるマンガ100冊』は、マンガ家さんやマンガに詳しい方に、そういった学べる作品を100冊選んでいただき、紹介した本です。マンガでも、ゲームでも、学びの楽しさを知る子供のスイッチを入れてあげることが、何よりも大事だと思いますね。

石角 ハーバード教育大学院には、子供の知的好奇心を伸ばすには、どうすればいいかを研究している人もたくさんいますね。マンガやアニメに特化して研究している人もいたと思います。世界トップレベルの教育学者にとっても大きな関心事になっているということですね。

本山 うちには、7歳、5歳、3歳、1歳と4人の子供がいますが、親も一緒になっていろいろ遊びまくっています。それぞれ興味が違うのですが、一番上の男の子は、虫好き。公園に行ったら、そこらじゅうの岩や石を持ち上げて、その下にムカデやダンゴムシを発見すると、興奮しています。遊びを通して、楽しみながら学んで自分の好きなことをつきつめていくのですね。

石角 アメリカでは、公立校の5校に1校が、学力テストの成績を伸ばせ、進学率を伸ばせという親御さんのプレッシャーから、休み時間を1時間削っているというデータがあります。それで「毎日、あと1時間、自由遊びの時間を増やしてください」というポスターが小児科の個室などに貼ってあります。何にも決まり事がない中で、子供に好きなことをさせることで、子供が何が好きなのか、何に向いているのか、も分かってきますよね。

本山 最近、出版した『一生伸び続ける人の学び方』という本の中でも書いたのですが、近年、アメリカではCQ(Curiosity Quotient=好奇心指数)というものが注目されています。旧来のIQ(知能指数)に加え、十数年前から、EQ(心の知能指数)の重要性が言われてきましたが、今最も大事なのはCQではないかと思います。

 これまでは、与えられた知識を覚え、使っていくだけでよかったのですが、IT化が進み複雑化する現代社会の中では、自ら課題を発見し、学び続けていく力が最も必要とされます。そのために、CQが高いことが大事になってきます。ギフテッド教育に限らず、親が一緒になって、子供と遊び、楽しんだりする中で、子供の好奇心を発掘していくことが、何よりも大事ですね。

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最終更新:9月17日(土)12時0分

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