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ロシアとイランのアサド延命策

Wedge 9/17(土) 12:10配信

 ウォールストリート・ジャーナル紙が、イランの基地を使用したロシアによる空爆に見られるように、両国は戦略的関係を強化し、協力してアサドを支援しているにもかかわらず、オバマ政権は手をこまぬいているという趣旨の社説を8月17日付で掲載しています。要旨、次の通り。

血生臭い状態は続く

 8月16、17の両日、ロシアの空軍機がアレッポ、その他の地域の反体制派を空爆した。それだけでは新しいことはないが、クレムリンは爆撃機がイラン西部の空軍基地を使用したことを明らかにした。これはモスクワとテヘランが戦略的関係を強めつつあることを示すものであり、昨年のロシアによる地対空ミサイルの売却の決定に続くものである。

 この空爆の直接的な動機はアレッポにおける最近の反体制派の攻勢に対する報復である。これに先立つ数週間、プーチンとアサドはアレッポ東部で30万人を包囲し、ロシアが一般市民を空爆する一方、反体制派の支配地域への供給ルートを遮断していた。しかし、今月始め、アルカイダ系を含む反体制派の連合部隊がシリアとロシアによる封鎖を突破して一般市民への供給ルートを再開させた。

 反体制派の進撃はアサドの軍の弱点を示している。それは士気の低い2万程度の戦闘部隊であり、ロシアの航空支援およびイランとヒズボラによる地上での支援にもかかわらずアレッポを奪回し得ていない。

 アサドはシリア全土を奪還すると言っている。反体制派も同じ目標を掲げる。西側が飛行禁止区域を設定し、アサドの軍用機の飛行を禁止することによって勢力のバランスを変えるようなことでもない限り、血生臭い膠着状態は続くことになる。内戦も続く。

 こういう状況はロシアとイランには好都合であろう。彼等はアレッポの市民の苦境に涙するわけではない。その間、この地域での影響力の拡大を図る。こういうことがどうして米国や西側の利益になるかは次の大統領が考えるべき問題である。

出典:‘Russia’s Growing Military Ties With Iran’(Wall Street Journal, August 17, 2016)

 ロシアの空爆の動機は、この社説にあるように、アレッポにおけるアサドの軍の劣勢を立て直すことにあったと思われます。この空爆のための発進基地として、ロシアはイラン西部のハマダンの空軍基地を使用しました。ここからツポレフ22長距離爆撃機とスホイ34戦闘爆撃機(機数は不明)を8月16、17の両日発進させたといいます。イランは第二次大戦後、外国の軍に国内の基地を使用させたことはなく、このためちょっとした憶測を呼ぶこととなりました。

 イランの当局者は、「ハマダンの基地がロシアの基地になったわけではない、ロシアの軍用機がそこに駐留しているわけでもない、従って、外国の基地を国内に設けることを禁じたイランの憲法に違反するものでなく、ロシアは単に給油の目的で基地を使ったに過ぎない」と述べている由です。恐らくそれが実態であり、本国から発進する場合に比べて飛行距離を大きく短縮出来ること、シリアのラタキアにあるロシアの基地ではツポレフ22のような大型機の運用に無理があることなどがその背景として指摘されています。

 今回の行動は、繰り返されることはあり得るとしても、一時的な性格のものと思われます。しかし、ロシアとイランの利害の共有関係が改めて明らかになりました。トルコのエルドアン大統領がプーチン大統領と先日会談しましたが、その際シリア問題も話し合われたといいます。ロシア、イラン両国とトルコのシリア問題についての立場は基本的に異なるので、3国共通の立場が容易に形成されるとは思われませんが、注意を要するでしょう。

 他方、米国は「敵対行為の停止」を何とか維持し、国連主導の政治プロセスを救うことが主要な関心事のようで、ケリー国務長官はしきりとロシアとの協力の可能性を探っています。オバマ政権にはシリア国内の勢力のバランスを変える必要があるといった発想はありません。社説の末段は、そういうオバマ政権に匙を投げ、次の政権に問題を先送りするしかないというウォールストリート・ジャーナル紙の苛立ちを表明したものでしょう。

岡崎研究所

最終更新:9/17(土) 12:10

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