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新型『セレナ』の自動運転技術プロパイロットはどこまで“自動“なのか?

@DIME 9/17(土) 10:10配信

 フルモデルチェンジした日産のミニバン『セレナ』に試乗した。トヨタの『ノア』『ヴォクシー』と売り上げランキングのトップを争っているだけに今回も力が入っている。実に多くの新趣向、新機軸が盛り込まれているが、注目はやはりミニバンでは世界初を謳う「同一車線自動運転技術“プロパイロット”」だろう。

 プロパイロットの操作もハンドル上のボタンで簡単に行なうことができて、作動状況や警告などは眼の前のメーターパネルに表示されわかりやすい。実際に、横浜近辺の首都高速道路で試したところ、前のクルマを的確に捉え、車間距離を一定に保ちながら、ハンドルも自動的に切って追従していく。

「おおっ、ついにハンドルを切るところまで自動運転が進んだのか!」

 そう驚きながら、ハンドルから手を離すと数秒後にメーターパネルに警告が現われた。手放し運転は認められていないのである。軽く手を添えていなければならないのだ。ギュッと強く握らなくても、添えてさえいればセレナがきちんと車線の中央に収まって走ってくれる。

 速度は任意に設定できるし、先行車が完全に停止した場合、こちらもそれに合わせて自動的に停止する。先行車が走り出した時には、ハンドル上のレジュームスイッチを押せば、こちらも再び追従運転に入る。高速道路での連続運転や渋滞などで、ドライバーの負担を大幅に軽減してくれる。安全性が大幅に向上する上に、快適性も高まる。おまけに、無駄なスロットルワークがなくなるから燃費だって向上する。

 このような“自動運転”技術はテスラやメルセデスベンツのものなどが有名だが、現在、競って他の自動車メーカーも開発を推し進めている。メーカーごとに様々な方式と働き方があって、ちょっとわかりにくいところがあるのも否めない。自動運転の定義が官邸のホームページに載っている。定義自体は、アメリカ運輸省の道路交通安全局(NHTSAによるものだ。レベル1からレベル4まであり、2と3との間が決定的に開けている。3では、加速・操舵・制動の全てを基本的にクルマが行ない、ドライバーが運転するのはクルマから要請があった場合のみとなる。つまり、事故を起こした場合にはクルマの責任となる。

 クルマの責任ということは自動車メーカーの製造者責任を問われることになるわけで、法律的にもまだ定められていないことが多い。『セレナ』も、ドライバーは常にハンドルに手を添えてなければならないように、クルマの状況を監視する義務といつでも安全運転ができる態勢になければならない。つまり、事故の際の責任はドライバーにある。

 レベル2と3の違いは決定的だ。完全にクルマに任せることになるレベル3では、技術的な難易度は段違いに上がってくる。例えば、ドイツでは範囲が狭くなったとは言え、アウトバーンに速度無制限区間がある。200km/hを超える速度で追い越し車線を疾走するクルマのハンドルを切ったり、ブレーキを掛けたりすることを万全に行なわなければならないのである。

 スピードだけではない。クルマだけでなく、自転車やバイク、歩行者などがいつ飛び出してくるかわからない、主にアジア圏の大都市などで、どう安全を担保するのか? 新聞やテレビなどでは、レベル1が2になって、同じようなペースで3に到達するかのような報道を見掛けることがあるけれども、1が2になるのと同じペースで2が3になることは絶対にあり得ない。仮に技術的に解決したとしても、法律面での整備など別の課題が立ち塞がる。だから、レベル2まではあくまでも「運転支援」なのであって「自動運転」はレベル3から始まるものだと考えるのが順当なようだ。

 個人的には、自動車メーカーやIT産業などの尽力で、早くレベル3が実現できることを願っている。計り知れないほどのメリットをドライバーと社会にもたらすことになるからだ。もちろん、レベル4も大歓迎だ。レベル4となると「クルマとは何か?」「移動手段の私有とは、どうあるべきか?」という、より深遠な課題について考え直さなければならなくなってくるだろう。

 レベル4は遠い先の話だとして『セレナ』に話を戻してみれば、たとえ“運転支援システム”であるレベル2だとしても、ドライバーの負担軽減で大きな効果を発揮する。だから、日産が主張しているように『セレナ』のようなたくさんの台数が売れるミニバンにこのプロパイロットが搭載された意義は大きい。

 自動運転は株価高騰のためのわかりやすい“燃料”となっているようで、新聞やテレビ、証券業界などの間で言葉だけが一人歩きしている面が強い。まるで、来年にもレベル3や4が実現するかのように煽っているものさえある。中には、「ザ・自動運転車」というクルマが造られるかのような誤解を生みかねない記事やコメントもある。運転の自動化は自動車発展の歴史そのものであるわけで、それは少しずつ段階的に進んできた。

 50歳代の以上のドライバーならば、教習所でエンジン始動の時にチョークレバーを必ず引くべしと習ったことを思い出すだろう。実技科目にも含まれていたが、今では技術の進化によってチョークは自動化され、レバーもクルマから消滅した。これも“自動化”の一つである。

 さらに言えば、オートマチックトランスミッションだってマニュアルトランスミッションに対する自動化だし、もっと昔のドライバーはエンジンの点火時期さえも自分でレバーを調節しながら運転しなければならなかった。これまでのありとあらゆる自動化の集合体が現在のクルマの姿であって、それは現在進行形だ。

近年のデジタル技術やセンシング技術などの急速な進化が自動化に拍車を掛け、その範囲を拡大している。『セレナ』やテスラの『モデルS』と言えども、レベル3や4に向かっての進化の途上にあるのだ。もう一度『セレナ』に話を戻せば、プロパイロット以外でも注目点は少なくなく、広くなった室内空間や使い勝手が増した車内など、開発陣の誠実な姿勢が伺え、それが商品性向上に結び付いている。

 ただ、デザインは内容に伴っていないと思った。怒っているように見えるヘッドライトとフロントグリル周りの造形は、もう少しファミリー寄りに優しくすることはできなかったのだろうか。小さな子供が泣き出しやしないか心配だ。また、せっかくの新技術や装備があるのだから、それを体現するデザインを施し、外観でも日産ならではの個性を打ち出して欲しかった。いつもの採点を行なうとすれば、「機械として優れているか?」については★★★★、「商品として魅力的か?」は★★★といったところだろうか。

文/金子浩久

@DIME編集部

最終更新:9/17(土) 10:10

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