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洋楽ヒット曲から英会話を学ぶ:ニューヨーク在住の外科医、加藤友朗が教える"今"の英語とは

ローリングストーン日本版 9/17(土) 11:00配信

Rock Freaks File.039 加藤友朗(外科医)

"神の手を持つ医師"と呼ばれるニューヨーク在住の外科医、加藤友朗氏。
医師としてはもちろん、多臓器移植の世界的第一人者として医療コメンテーターなどメディアで活躍するかたわら、大の洋楽好きが高じ、洋楽を聞くことで英語を学ぶラジオ番組「ENGLISH JUKEBOX」ではパーソナリティを務めている。



ミュージシャンではなく、各界のプロフェッショナルたちが音楽を語る特集Rock FreaksのWEB版復活第1弾として、ラジオ収録のため来日した加藤氏に、洋楽の歌詞を通じて英語力を磨く秘訣を語ってもらった。

─加藤先生が洋楽にハマったきっかけとは?

実は僕、別にずっと洋楽を聞いていた人間ではなくて、にわか洋楽ファンなんですよ。なんで洋楽を聞き出したかというと、英語の勉強のためでした。だからはじめはTOP40だけがかかるようなラジオ局の有名どころばかりを聞いていたんですけど、だんだん好きな曲が増えてきて。最初はテイラー・スウィフトくらいしか知らなかったんですよ(笑)

─根っからの洋楽ファンではなかったのですね。

全然。若い頃も多少は聞いていましたけど、いわゆるコアなファンではなく。僕自身もクラシック音楽をやっていましたし、日本にいた時はむしろクラシックファンでした。洋楽のポップスを聞き始めたのは本当にここ10年くらいで。でも、いざ聞くと面白いんですよね。アメリカなんてかなりの才能がある人しか残らないわけで、ポップスだからってバカにできない。ま、僕の年でテイラー・スウィフトが好きとか言うのも恥ずかしいんだけど(笑)

─意外とリスナーの方々と近いところにいらっしゃるのですね。

そうなんです。だから話は合うんですよ。昔はタイムラグが6ヶ月くらいあったんですけど、今は洋楽が日本に伝わるスピードも加速しているんですよね。

─どのような経緯で、ラジオ番組を始めることになったのですか?

もう3年以上前ですが、たまたま日本のラジオに出させてもらった時に知り合ったプロデューサーと、ニューヨーク発の若者向けラジオ番組を作ろうという話になったんです。最近は海外に出る若者が減っていますが、"海外に出ると楽しいよ"ということを伝えられるような番組を作ろうと。そこで僕が番組の1コーナーとして企画を書いたんですが、最終的にはその企画でひとつ番組を作ろうということになって。第1回で『When I Was Your Man/君がいたあの頃に』(ブルーノ・マーズ)をやったら、すごく反響が良かったんですよ。ちょっと解説するだけで、歌詞がすごくわかるようになるんです。じゃあ、なんで僕らは簡単な単語しか使われていない洋楽の歌詞が聞き取れないのか。それって日本人が英語を聞き取れない理由のひとつで、その単語を実際の会話でどう使うのかわかっていないから。ほとんど歌詞をわからないまま聞いている人がかなり多いんですよ。

─メロディだけでも心に響くのが音楽の強みでもあると思いますが、さらにその歌詞を理解してより深く音楽を楽しもうと。

そうですね。歌詞カードを見れば意味はわかるんだけど、見ないと意味がわからない。それって情報を目で追っているからなんですよね。まずは英語を英語のまま理解することが大事で、あとはどう感じるかは個人の自由。たとえば、エド・シーランの『フォトグラフ』にif you hurt me, that’s ok, baby, only words bleedという歌詞があるんだけど、直訳すると"君が僕を傷つけてもいいんだよ。言葉が血を流すだけだから"って意味なんですよ。でも、"言葉が血を流す"ってなんだろう。そこは、聞いた人が好きに解釈していいんですよ。だからただ翻訳を伝えるのではなく、あくまで音で聞き取れることが大事なんです」

--{時代によって歌詞は変わる}--

─その意図を聞くとラジオという媒体はぴったりな気がします。ちなみに選曲はどのように?

選曲も僕で、台本も僕が作ります。とにかく選曲が楽しくて仕方ないんですよ! 英語の勉強に向いているというのが前提ですが、今の歌にしたいというのもあって。その年のグラミー賞が楽しくなるような選曲を目指しています。

─なるほど。だからほとんどが現代ポップスなのですね。

たまにカーブボールとしてオールディーズもやるんですが、ワム!の『ラスト・クリスマス』の回は面白かったですよ。30年間、誰も意味を知らずに聞いていたっていうね(笑)。Last Christmas, I gave you my heart, but the very next day, you gave it away. This year, to save me from tears, I’ll give it to someone specialっていうサビだけ聞くと、去年のクリスマスは恋に破れたから、今年は特別な人と恋をするっていう歌に聞こえるけど、最後に小声でMaybe next year(たぶん来年)って入っていて。実は新しい恋のための歌じゃなくて、昔の恋を吹っ切れずに騙された女の子にまたいっちゃうっていう歌なんですよね(笑)

─言葉の表現というのも時代によって変わるものですよね。そういう意味でも、今を知るには今の歌なのかなと。

まさにそうなんです。時代によって歌詞は変わるので、僕のラジオでは街でしょっちゅうかかっているものをかけたいし、"F"ワードも含めて解説します(笑)。真夏のダンスミュージック特集の人気投票で、LMFAO("Laughing My Fucking Ass Off"の意)の『パーティー・ロック・アンセム』が堂々1位だったんですけど、これは"F"ワードも説明しないとなと(笑)。歌詞の意味は知っていてもそのバックグラウンドを知らない人は多いので、洋楽上級者が聞いても面白いと思いますよ。今年もそろそろグラミー向けに仕込みを始めていかないと。

─「この音楽によって人生が変わった」みたいな声もありますか?

アメリカで流行る歌って、人生の応援歌が多いんですよ。レイチェル・プラッテンの『ファイト・ソング』なんて、解説しながら泣けてきちゃう(笑)。ケイティ・ペリーの『ファイヤーワーク』とかもそうですが、ポップ・ミュージックってチャラいイメージがあるけど、実は深いんですよ!

─番組ではポップスが中心かと思いますが、加藤先生にとってロックとは?

反抗、反骨精神ですかね。僕の番組でも解説したいんですけど、ロックの歌詞って難しいんですよね。これまでは女性リスナーを意識していたので、骨のある歌詞は少し避けていたところがあったんですけど、今後はワンリパブリックとかオルタナティブ・ロックもやっていきたいですね。ファンの『キャリー・オン』も流したいリストにずっと入っているんですよ。もっと言えば、日本の若手ミュージシャンで英語で音楽をやる人がもっと増えてきたら、僕としてはすごくうれしいですね。

TOMOAKI KATO
加藤友朗 アメリカで活躍する現役の外科医。専門は移植および肝胆膵外科。
多臓器移植の世界的第一人者であり、多臓器摘出対外腫瘍切除手術を世界で初めて成功させたことでも知られる。1991年大阪大学医学部卒、東京大学薬学部、大阪大学医学部卒業後1995年に渡米、現在はニューヨーク、コロンビア大学医学部外科教授。TOKYO FMにて毎週火曜日21:15~21:45にて「ENGLISH JUKEBOX」のパーソナリティを務めている。

RollingStone Japan 編集部

最終更新:9/17(土) 11:00

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