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映画『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』:心やさしき巨人とひとりの少女が世界を救う

ローリングストーン日本版 9/17(土) 10:00配信

ひとりの少女とBFF(一生の親友)の巨人を描いたロアルド・ダールの小説をスピルバーグが映画化。

【動画あり】映画『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』:心やさしき巨人とひとりの少女が世界を救う

スティーブン・スピルバーグといえども、時にプレッシャーを感じる。『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』で、この著名な映画監督はふたつの名作に尽くさなければならない。ひとつは、ひとりの少女と、彼女を誘拐し、恐ろしい人食い巨人の国で彼女の救世主となるBFG(ビッグ・フレンドリー・ジャイアント)を描く、1982年にロアルド・ダールが発表した愛すべき児童小説。もうひとつは、1982年のスピルバーグ監督の大ヒット映画『E.T.』の脚本家で神経内分泌がんのため昨年この世を去ったメリッサ・マシスンによる、原作を大胆不敵にアレンジした脚本だ。さらに、『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』を1本の映画として楽しめる作品にするという問題がある。

特殊効果については、何の問題もない。大迫力だ。そして、スピルバーグ監督の『ブリッジ・オブ・スパイ』でアカデミー助演男優賞を受賞したばかりのマーク・ライランスには文句の付けようがない。7メートル30センチの巨人をモーションキャプチャで演じ、微妙なニュアンスと不朽の名演を見せる。故ロビン・ウィリアムズを予定していた役で、イギリス人のライランスは、自身の面影を色濃く残しつつテクノロジーによって変身する。深夜のロンドンで、彼が巨大な姿を景色に溶け込ませて覆い隠す様は、何とも美しく恐ろしい、めったにお目にかかれない名シーンだ。

スピルバーグとダールの世界がぶつかり合うと、事態は(BFGの言葉を借りれば)「ちょっとゴロゴロ」する。BFGがロンドンの孤児院のベッドから10歳のソフィー(新人のルビー・バーンヒル)を掴んで連れ出し、私たちを恐ろしい巨人の国へといざなう。ブラッドボトラー(声:ビル・ヘイダー)率いる、ソフィーを食べようと躍起になる巨大な野獣たちに、ひときわ小さいBFGは情け容赦なくいじめられている。大巨人のひとり、フラッシュランピーター(ジェマイン・クレメント)は、「ニンゲンマメ(human beans)」を見つけ出すエキスパートだ。これはダールの最も暗い側面だが、スピルバーグが見たいのは、ガラスの瓶に夢を集めて眠っている人間の頭の中に吹き込むBFGだ。スピルバーグの手法を示す適切なメタファーだ。

最高に笑えるのは、バッキンガム宮殿でソフィーがクイーン(ペネロープ・ウィルトン)と従者たちにBFGがこよなく愛する発泡飲料「プップクプー」を勧めて「ホイッズポップ」(メル・ブルックスの『ブレージングサドル』に匹敵するおならの合唱)を巻き起こすシーンだ。しかし、邪悪な巨人たちをヘリコプターで捕らえるクライマックスでは、徹底的な、簡単に笑いと涙を誘う以上の何かが起きてほしい。『E.T.』と『未知との遭遇』は、その要求に見事に応えた――子どもたちと一緒に親をスクリーンに釘付けにするファミリー映画とはそういうものだ。残念ながら、『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』はうまくまとまりすぎていて、その域に達していない。

『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』
監督・製作:スティーブン・スピルバーグ
出演:マーク・ライランス、ルビー・バーンヒル、ペネロープ・ウィルトン、レベッカ・ホール、レイフ・スポールほか
9月17日(土)より全国ロードショー
http://www.disney.co.jp/movie/bfg.html

Translation by Naoko Nozawa

Peter Travers

最終更新:9/17(土) 10:00

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