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安居酒屋の「生」はなぜまずい? そこから見える業界の課題

HARBOR BUSINESS Online 9月17日(土)9時10分配信

◆定義が曖昧な「樽生」

 デフレ経済の突入とともに発泡酒が登場してからというもの、「飲み放題の生ビールはおいしくない」、「臭う」などの声が聞こえてきた。「発泡酒や何かを混ぜているのではないか?」という疑念が席巻した。

 筆者はこの問題について、いろいろな角度から業界関係者に取材をした。まず、生ビールの定義は「熱処理をしないビール」を言うが、発泡酒も同じく加熱処理をしない。だからといって、加熱処理をしない発泡酒を「生ビール」と言ったら偽装になってしまうが。しかし、「樽生」などと表記するのは問題がないわけである。

「この15年間で発泡酒はおいしくなりましたから、普通に樽から出されたジョッキで飲めば気が付かない人が大半でしょう。仮にわかる人がいて突っ込まれても、『これがうちの生です』と言いはれば良い。そもそも、居酒屋に卸しているのが発泡酒ばかりの店もありますから、そうした居酒屋の飲み放題や生ビールが、発泡酒であることはビールメーカーと卸問屋が一番よくわかっていますよ。もちろん、今はガバナンスが強化されて少ないとは思いますが」(酒類卸の元社員)

 また、生ビールを提供する飲食関係者らに聞くと、「うちの生ビールは発泡酒です。発泡酒では?と言われたことは一度もありません」という人もいる。確かに、発泡酒をビールのようにして出す店は存在するようだ。

 もっとも、大手居酒屋チェーンや中小オーナーに聞くと「そんなことやって発覚すれば、口コミで客がいなくなりつぶれますよ。顔が見える個人店でそれをやるときは、すでに経営が苦しい時だと思います」と話すこともあり、「樽生」などと称してビールではなく発泡酒を出すのは、ひとえにその店の姿勢によることになりそうだ。

◆ブラックな職場環境こそが「生」をまずくする要因!?

 確かにいまの発泡酒は味もクオリティも上がった。しかし、酒好きならば、発泡酒とビールの区別を付けるのも容易な人はいる。にも関わらず、「発泡酒をビールのようにして出す」店が出てくるのだろうか。

 これはコストの問題にほかならない。そもそも、ビールは1杯400円取らないと採算が取れない場合が多いのだ。原価は200円程度でも、食を頼まずに飲み放題ばかりやっていたら、赤字になりかねない。一方、発泡酒の原価はビールの仕入れより、1樽1000円安いので、飲み放題を安く設定しても収益が得られる。また、最近は焼酎なども粗利が稼ぎやすいため、並行していくのがポイントとなる。

 一方、「正真正銘、生ビールなのに味がおかしい」店も存在する。こうした問題にも、安居酒屋のブラックな職場環境が影響していることが少なくない。

 というのも、氷やビールなどが臭う問題は、偽装の問題ではなく衛生面、管理面の問題であることも少なくないからだ。

 店員が足りない外食産業、ブラックバイトが問題となり、その腹いせに、アルバイトの人がイタズラしている、手抜きをしているなどが考えられるだろう。最近では、ネットの投稿で従業員が自ら自虐的な不正を上げたりして問題になったりもしている。逆に、社員の衛生チェックを動画で監視するくらいの徹底ぶりが求められる時代でもある。第三者から見て、ブラック労働か?従業員が不正をしていないか?をチェックできるくらいのことが求められる時代でもある。そのためには、労働生産性の向上、ロボット化やIT化などの経営変革も求められる。

 一方で、設備投資の問題もある。特に業務用洗剤は、手洗いではきれいに洗剤が落ちないほど強く、それが残っているため味に影響することも考えられるからだ。自動食洗器などを設置しているかどうかでもかなり変わってくるのだ。

 ブラックな労働環境の改善は店の悪評が広まるリスクを抑える上でも重要な課題だと言える。

◆美味しいビールを求めるなら、瓶ビールが最適である

 おいしいビールをどう飲むか? どうあるべきか?顧客が満足していて、おいしければ、臭わなければいいわけだが、業界としてしっかりとした表示方法や店舗管理のガイドラインを設定すべきと筆者は考える。

 個人的には思い切って、「ビール飲み放題」の概念には発泡酒も含めてしまえば良いと思っている。どうしても美味しい生ビールが飲みたいと思うのであれば、飲み放題を求めるのは無理がある発想なのだ。

 ちなみに、私は、ジョッキでビールを飲むことを基本的にしない。なぜならば瓶ビールは、発泡酒ではないからだ。業界関係者も「ビールの一番おいしい飲み方は瓶である」と断言する方もいるほどだ。料亭に行って、ジョッキが出てくる店は雰囲気的にもほとんどない。私の参加しているアユ釣り全国大会等で出てくる飲み放題はほとんど、瓶で提供している。瓶ならば味も良い上に100%、発泡酒であることはありえないからだ。

 生ビール問題には業界の自浄作用と、適正なおいしさをどう提供するか?という課題に真剣に取り組むことが問われていると言えるだろう。

<文/平野和之 写真/足成 > 

【平野和之】

経済評論家。法政大学卒。上場企業に勤務ののち、各メディアでの執筆、出演、講演、投資コンサルティングなどを行っている。http://www.hirano.cn/

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:9月17日(土)9時16分

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