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英メイ首相すらわからないEU離脱の「作法」

東洋経済オンライン 9月17日(土)15時0分配信

 7月に就任した英国のメイ新首相の前途には大きな壁が立ちはだかっている。それは英国民が選択したブレグジット(EU〈欧州連合〉からの離脱)の要求に応えることであり、その負の影響をなるべく抑えることである。メイ首相は賢明でタフさも備え、社会奉仕の意識も高い。私が知るかぎり与党保守党に敵は少なく、国民からの人気も高い。彼女ならこの難局を乗り越えられると信じている。

 メイ首相はこれまでEU離脱の撤回を明確に否定してきた。「離脱するといったら離脱する」。そう何度も強調するメイ首相に閣僚も同調している。英国はブレグジットに向けて着々と動きだしている。

■不明瞭な「ブレグジット」の定義

 だが、メイ首相は「ブレグジット」が何を意味するのか、その定義をまだ明確にしていない。今後の一番の課題はそこにある。

 ブレグジットといっても英国内には外国人労働者の流入制限に対して強い関心を持つ人もいれば、欧州単一市場へのアクセスをどう維持するかに主眼を置く人もいる。

 その定義を明確にしないまま離脱交渉に臨んでも、得るものは乏しいだろう。EU加盟国はおのおのに政治的および経済的な利害があり、どの国もそれを保護したいと望んでいる。EUや加盟各国が自身に見返りのないまま離脱の恩恵だけを提供してくれることはないはずだ。

「分裂」した国が直面する課題

 したがってメイ首相にとって当面の課題は、欧州との交渉を始めるに当たって何を優先するかを特定することだ。テーマの幅広さを考慮すれば、離脱交渉は数年に及ぶ可能性もある。さらなる長期化を防ぐには明確な優先順位づけが欠かせない。

■都市と地方の差を埋められるか

 仮に彼女が離脱交渉をスムーズに進めたとしても、国民の中には不満を抱く人が生じるだろう。そもそも6月の国民投票でEU離脱派が票を伸ばした背景には、労働者階級の不満があった。

 彼らはEU加盟によりロンドンなどの大都市は恩恵を受けたが、地方は職を奪われメリットを享受できなかったと不満を述べてきた。とはいえ彼らが主張してきたような、移民の排除やEUへの拠出金の回避で経済的恩恵がもたらされるというシナリオも、そう簡単には事が運びそうにない。

 こうした状況を加味すれば、ブレグジットによって英国はさらなる分裂危機に直面する可能性がある。それをどう回避するのか。メイ首相は難しい舵取りを迫られる。

クリス・パッテン

最終更新:9月17日(土)15時0分

東洋経済オンライン

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