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静岡、岐阜、埼玉…地方を舞台にしたアニメが急増している理由

週刊SPA! 9/17(土) 16:20配信

 今夏に公開された映画『シン・ゴジラ』と『君の名は。』の大ヒットにより、ますます注目を集めているアニメ業界。『シン・ゴジラ』で総指揮をとった庵野秀明監督は『新世紀エヴァンゲリオン』で知られ、『君の名は。』の新海誠監督はポスト宮崎駿・細田守と称される、気鋭のアニメーション映画監督だ。

 クールジャパンの筆頭としても期待されるアニメ業界だが、近年はその作品内で描かれる風景に地殻変動が起こっている。2000年には4本しかなかった「実在の場所を描いた」アニメの本数も、2014年には91本と15年間で20倍以上に。そこには、アニメ制作会社と地方自治体のウィンウィン関係があった。

◆「アニメ聖地巡礼」に地方自治体の熱視線

 静岡県を例にとってみよう。現在放映中で、大人気アニメの続編となった『ラブライブ!サンシャイン!!』は沼津市を舞台に描いており、天野こずえの漫画を原作とした『あまんちゅ!』は伊東市と熱海市を舞台として描いている。

 静岡市の広報を担当する関係者によると、「静岡市では、映画の撮影を支援するフィルムコミッションを通じて、アニメの制作会社にPRしています。また、推理小説シリーズの『ハルチカ』がアニメ化した際には、ロケハン案内をするなど、アニメ制作会社と積極的に関わる取り組みをしています」という。

 静岡市と言えば、言わずと知れた国民的アニメ『ちびまる子ちゃん』の舞台であるが、一方で、アニメファンの間では深夜アニメがほとんど放映されない“アニメ不毛の地”と揶揄されてきた。これまでにもラッピング電車の運行や、その車内アナウンスの一部を「まる子」の声にするなどの仕掛けを行なっており、アニメを観光資源として連動した取り組みには積極的だ。市の関係者も「ちびまる子ちゃんランドへの入場者数が、インバウンド含め増加しています」とアニメによる観光客増に期待を寄せている。

 いま話題の『君の名は。』も岐阜県飛騨市の風景が描かれており、聖地となった岐阜県の各所には、これまでに多くの観光客が訪れているという。埼玉県秩父市を舞台に描いた2011年のTVアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の大ヒットに際しても、埼玉近郊のみならず日本全国、海外から秩父を訪れるファンが相次いだ。映画館での劇場版公開による「あの花」ブーム再燃でも、たびたび“聖地巡礼者”が訪れたという前例がある。

 アニメ事情に詳しいライターの芝村メイ氏は「これまでにも、作画の美しさに定評がある京都アニメーションは京都と滋賀を丹念に取材し、『けいおん!』や『響け!ユーフォニアム』といった名作を生み出してきました。『花咲くいろは』『SHIROBAKO』『ハルチカ』などを制作してきたP.A.WORKSも富山県に拠点があり、北陸地方を舞台にした作品がいくつか見られますね」と説明する。

 なぜ、実在の風景を描くアニメ作品が近年急増の傾向にあるのだろうか?

「何気ない街の背景を一から描くのは大変です。最初はその風景を近場で済ませようと考えていたのでしょうが、作品がヒットしたら聖地と化す、という現象がここ10年くらいの間に急増しました。『らきすた』では埼玉の鷺宮神社が有名になり、ファンは“痛絵馬”を置きだして、神社もコラボしてというのが今のアニメ業界における町おこしブームの始まりだと考えられます」(芝村氏)

 ひとくちに「聖地巡礼」と言っても、その背景はここ10年で変化している。

「『らきすた』や『けいおん!』の時はアニメ会社が自ら描いて聖地化していましたが、最近は明らかに町おこしありきで場所を決めている作品も。作中でわざわざ土地に言及したり、実際どれほど経済効果があるのかはわかりませんが、地方自治体からアプローチしたり、制作会社からアプローチされたら協力的に対応したりということが当たり前になりつつあるのではないでしょうか」(芝村氏)

 今やアニメは世界の共通言語となり、交流の架け橋の一端を担うまでになった。そして日本のアニメは、国内の地方活性化の起爆剤としても期待されている。アニメをきっかけとした観光産業の盛り上がりに期待したい。

<取材・文/北村篤裕>

日刊SPA!

最終更新:9/17(土) 16:20

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