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集中連載!極私的「シン・ゴジラ」の愉しみ方【Vol.6】

東京ウォーカー 9/18(日) 7:00配信

シリアスな展開、リアルな特撮映像でリピーター続出の「シン・ゴジラ」。興行収入60億円を楽々突破の大ヒット作には、総監督・庵野秀明の特撮原体験が色濃く反映されているといわれる。その真実に迫る!

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■ 「帰ってきたウルトラマン」とジャージ姿の若き日の庵野秀明

公開後、多角的な作品分析や評論がなされている「シン・ゴジラ」。しかし、やはり怪獣は怪獣で落とし前をつけるべき。なので、自分は真っ向から「怪獣もの」という文脈で本作に迫りたい。

庵野秀明総監督にとって、ゴジラ以上に自身をとらえて離さない「怪獣もの」は、ウルトラマンだ。近年の発言においても、氏はウルトラマンに対するリスペクトをあらわにしている。

たとえば2010年8月6日号の「週刊朝日」掲載の会談記事「ウルトラマンから死ぬまで逃れられない」の中で、同シリーズが自分の作品にどう繋がるのかという問いに対し、「自分の人生の中に組み込まれているものだから…。好きが高じて、作品を作る立場になった」と答え、加えて「そろそろ特撮ものは卒業という大学生のときに「ウルトラマン80」(80~81年)を観て、特撮の世界に引き戻されてしまい、ウルトラマンの8ミリ映画を自主制作してしまいました」と、後に自らが監督を手がけるDAICONFILM 製作のアマチュア映画「帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令」(以下「DAICON 版ウルトラマン」)のことを示唆している。同作は1983年に庵野が監督した自主制作特撮映画で、屋外にミニチュアセットを組み、自然光のもとで特撮シーンを撮影するなど、アマチュアとは思えないクオリティが話題となった。また、そんなリアリティを必要とするための深刻なドラマが、ひときわ光彩を放っている。熱核攻撃をもって進撃を阻止せざるをえない、宇宙怪獣バグジュエルとの凄絶な地球攻防戦。こうした硬派なドラマが展開することで、後に登場するウルトラマンが、ジャージを身にまとったボサボサ頭の庵野自身というところで、観る者を爆笑へと誘う。

そしてなにより、このハードな物語こそが、タイトルの元となった「帰ってきたウルトラマン」(以下「新マン」)のテイストを受け継いだものといえる。

■ 「シン・ゴジラ」で発露した「人生の中に組み込まれているもの」

71年から72年にかけて放送された「新マン」は、前々作の「ウルトラマン」(66~67年)が未来としていた時代設定を現代にし、当時の社会事情をダイレクトに反映した、トーンの沈んだウルトラシリーズだ。それは同作の企画書にも「前作にありがちだったモンスターもののパターンから脱却」「ドラマものとしての強化」と記され、その精神はシリーズを通じて徹底されている(白石雅彦・萩野友大編著「帰ってきたウルトラマン大全」(双葉社)より)。

なかでも第5話「二大怪獣東京を襲撃」と第6話「決戦!怪獣対マット」の前後編は、先の精神を体現する「新マン」屈指の深刻さを放つ。突如地上に現れた、古代怪獣ツインテールとグドン。その恐るべき破壊力は東京都心を壊滅へと追いやり、ウルトラマンをも破ってしまう。事態を重く見た地球防衛庁は、小型原爆と同等の威力を持つ新型爆弾スパイナーの使用決定をくだすが、攻撃が行われた際の国内被害を憂慮した怪獣攻撃チームMATがこれを拒否。残ったグドンを至近距離から麻酔弾で打つ地上作戦に、背水の陣で挑もうとする。この展開、もう説明の必要はないだろう。国連軍の熱核攻撃を阻止するため、ゴジラを血液凝固で生態停止させようとする「シン・ゴジラ」のヤシオリ展開を彷彿とさせる。また第34話の「許されざるいのち」では、自分を否定してきた肉親や社会に復讐するため、植物と動物を融合させた巨大怪獣を生み出す生物学者が登場するが、これなどはゴジラを日本に解き放った、牧悟郎元教授の塑像と言っても過言ではないだろう。庵野はこの「新マン」を、「ドラマとしては、この番組がいちばん好きです。カメラが凝っているし、画面もすごく良かった。特撮作品にのめり込んだのは、本作の影響も大きい」と、WOWOWで本シリーズのハイビジョンリマスター版が放送された際のナビ番組で語っている(「君にも見えたかウルトラの星! 帰ってきたウルトラマンの魅力」)。それだけに「シン・ゴジラ」における「新マン」テイストの掘り下げの深さは尋常ではない。先の5、6話にしても、グドンを攻撃中に民間人の少女を視認し、発砲を止めざるをえない展開や、迫られる東京全都民の疎開、さらには原爆投下後の広島の廃墟をとらえたモノクロ画像のインサートなど、それらは流用やオマージュといったレベルではなく、まさしく冒頭の「人生の中に組み込まれているもの」として、無自覚のままに引き出されていったのだろう。

これほどの特撮愛を抱きながら、なぜ庵野はアニメの世界へと入っていったのか?そのことに関して彼は、「(80年代初めの)当時は特撮業界の入口が狭く、(中略)アニメのほうが流れとして大きかったから」と語っている。(スタジオジブリ小冊子「熱風」12年7月号、自著「ルーツとしての特撮、原点としてのウルトラマン」より)

つまるところ本作は、庵野にとって遅れながら特撮への夢を果たした怪獣映画であり、「DAICON 版ウルトラマン」ひいては「新マン」5、6話の超強アップデート版だと強く感じられてならない。

「新マン」すなわち「シン・マン」か。「シン・ゴジラ」に見るウルトラマンの幻像。それは屈折したものに思えて、庵野総監督の中ではビシッと一本、筋が通っている。なので劇中、いつ矢口蘭堂(長谷川博己)がボサボサ頭のウルトラマンに変身するのかと、個人的にはハラハラ、ウルウルしながら観ていたのである。

【文/尾崎一男(おざきかずお)●映画ライター。「フィギュア王」「チャンピオンRED」「映画秘宝」「Meets Regional」誌などで活躍。映画ガチンコ兄弟の片割れ、ドリー・尾崎としてイベントやTVでも活動中。「シン・ゴジラ」エキストラ参加の噂も】

最終更新:9/18(日) 7:00

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