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時をかける症状(後編)――SFで歴史を読むということ

本の話WEB 9月18日(日)12時0分配信

 前編では柴田よしき『小袖日記』(文春文庫)と六冬和生『松本城、起つ』(早川書房)を中心に語ってきたけど、大前提として、歴史小説とSFは相性がいい、ということを言っておこう。ジャンルとしてはすごく遠いもののように感じられるかもしれないけど、過去にタイムスリップするSFは、歴史好きの方がコアな部分まで楽しめるのである。

 たとえば、漫画がドラマ化されて人気の村上もとか『JIN─仁─』(集英社)や石井あゆみ『信長協奏曲』(小学館)を思い出して欲しい。これらの漫画は、物語を壮大な嘘八百で固めながら、見事に史実と辻褄を合わせてみせるのが醍醐味だよね。でもって辻褄が合っているかどうかの細かいところは歴史ファンの方が敏感にキャッチできるのだ。

 その最たるものが、半村良『戦国自衛隊』(ハルキ文庫)だ。映画の方が有名で、しかもオリジナルの続編やドラマ、漫画もあったりしてややこしいんだけど、原作小説は演習中の自衛隊員三十数名が、戦車だの武器だのと一緒に戦国時代の越後へ飛ばされるというもの。そこで隊員たちは長尾景虎と知り合い、現代兵器で合戦を手伝うことになる。

 この話のポイントは、自衛隊員たちが飛ばされた戦国時代が、一般に知られているものと食い違いがある、ということ。タイムスリップというよりパラレルワールドに近い。たとえばこの時代に当然いるはずの有名な武将が何人も存在していない。斎藤道三も織田信長もいなくて、彼らが為した歴史事件もない。今川義元は病気で死んだことになってる。

 この時点で「それ歴史小説じゃないじゃーん、架空戦記みたいなもんじゃーん」と思う人もいるかな。でも、ちょっと待って。なぜ実際の歴史と違うのか、そこに飛ばされた自衛隊員たちは何なのか、という物語の最も重要な謎は、歴史好きであればあるほど、「あ、これってもしかしたらアレなんじゃ?」と推理できるようになっているのだ。

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最終更新:9月18日(日)12時0分

本の話WEB

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