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犬との会話は可能になるか? ゲノミクス研究者が考える未来

Forbes JAPAN 9/18(日) 16:00配信

犬が人間の言葉を理解できるのなら、人間と犬の間のコミュニケーションにおける制約はあるのだろうか。この疑問について答えてくれたのは、分子生物学者でゲノミクス研究者のAdriana Heguyだ。



人間と犬にはそれぞれ生物学的制約があるが、人間はテクノロジーを使ってその制約を乗り越えることができるかもしれない。しかし、ゲノム編集技術のCRISPR-Casを用いて人間の咽頭を持つ犬や人間のように話せる犬を作ること、さらに道徳や哲学について議論できる神経ネットワークを備えた犬の誕生を夢想することよりも、私は人間の嗅覚という観点から未来に想像を巡らせてみたい。

犬の視覚は人間ほど発達していない。一方で嗅覚は人間のおよそ40倍も鋭い。犬の方も人間の嗅覚が弱いことに気づいているのではと思うことがある。愛犬と散歩に出かけ、その間に夫が帰宅したり息子が遊びに来たりしていると、自宅マンションのエレベーターに乗った瞬間に愛犬は反応する。「一刻も早く帰って会いたい」とものすごい勢いで引っ張るのだ。しかし、夫が帰宅したのか息子が遊びに来たのかは私には分からない。

犬なみの嗅覚の「人工鼻」が発明される

けれど将来的には犬並みの嗅覚を実現する人工鼻だって開発できるはずだ。がんを発症している人間を臭いで判別する犬もいるが、人間からすると何を伝えたいのかが分からない。しかし、人工鼻ならばがんを臭いから検知できるようになるかもしれない。犬は嗅覚から得た情報を人間に伝達できないが、人工鼻があれば人と犬が理解し合えるというわけだ。

人間と犬は昔から共に暮らしてきているため、お互いをよく理解できる。人間が指をさすジェスチャーの意味を犬は理解できるがチンパンジーや狼は理解できない。人間と犬の社会的コミュニケーションスキルはとても似ている。驚くことに犬は人間に見えているものと見えていないものもを理解している。

ある実験では、犬はエサが見えている人間にはエサをねだるが、目を閉じている人間にはねだらなかった。ご存知の通り、犬は人間の言葉も理解できる。ある研究によると、200以上の単語を理解できるボーダーコリーのリコは、単語を覚える際に人間のように言語中枢を使うのではなく、一度聞いた単語をすぐに覚えてしまうファーストマッピングの能力や排他律による学習、一般的な学習能力や記憶力を使っていた。

この研究から分かったのが、犬も言葉やイントネーションから意味を解釈する際に人間と同様の脳の部分を使っているということだ。つまり人間以外の動物にも言語を理解するのに必要な脳のメカニズムは備わっている。

人間は犬を飼いならして共に暮らしてきたことでお互いを理解できるようになったが、言語やイントネーションから意味を解釈する能力は人間特有のものではなく、特定の音のつながり(つまりは言葉)を特定の意味と結びつける能力は進化的に古い脳に備わっていることも分かってきた。人間に特有なのは言語を処理する神経系ではなく、言葉を作り出したことなのだ。

Quora .

最終更新:9/18(日) 16:00

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