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「人口減」は、日本が再成長するための武器だ

東洋経済オンライン 9月18日(日)9時0分配信

国際比較統計を基に日本にとってのベストプラクティス(最良の政策案)を考えると、少子高齢化は実はチャンスだという。『武器としての人口減社会』を書いた、経済協力開発機構(OECD)東京センター長の村上由美子氏に理由を聞いた。

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■高齢化がポジティブに作用する社会

 ──7月の失業率が発表され、3%でした。

 もはや完全雇用で企業が人を雇えないで困っている。先進国でそんな国は日本しかない。構造的に失業率が高い国はたくさんあるが、構造的にここまで低い国はないし、おまけにここ2、3年、拍車がかかっている。これを、国際的に競争優位性を持っている側面だと認識し、国際競争力にしっかり結び付けるのが大事だ。労働人口の減少が激しく、高齢化も進んでいるのに、それがポジティブに作用する社会は、世界を見渡しても日本以外にない。

 ──働き方改革の追い風になる? 

 痛みを伴う構造改革なので抵抗はあるだろう。でも改革しないと日本は前に進めない。優秀な人材がいても、それを活用しない社会になってきている。それを破らないといけない。これほど雇用の需給が逼迫している状況だけに進めやすいはずだ。

 AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を含めITを活用して産業革命を進めようとしている国は日本を含めてたくさんある。中でも日本の場合は関連失業を気にせず推進する条件が整っている。もちろんその際に、痛みがないとはいえない。労働市場に流動性がなければ仕事にあぶれる人たちも出てくる。しかし、彼らを再トレーニングして新しいビジネスに活かす基本的な条件はほかの国に比べ秀でている。つまり日本は社会的な構造改革を進める条件にも優れているのだ。

人材のそもそもの質は高い

 ──再トレーニングですか。

 まずは人材のそもそもの質が問題になる。それが日本は高い。調査し比較すると、数的思考力、読解力とも世界でナンバーワン。ITを使った問題解決力は劣るとしても、それぞれ総合的に見たときに共に一番だ。しかも年齢別で中高年のレベルは断トツだ。

 基本的な教育の学校システムが整っているのに加え、培ってきた終身雇用制で企業が人材を育成するのが文化になっている。しっかり学校教育を受けた人材が、会社に入ってからもきちんと育てられて能力をつけていく。中でも40代、50代のレベルは高い。これは衰退企業からシフトする際のスキル再訓練での吸収力が高いことを示すといっていい。

■終身雇用制の弊害

 ──一方で、労働市場に流動性が乏しいといわれます。

 日本の労働市場の特徴である終身雇用制が影を落とし、労働市場に流動性を生まない。新卒入社後30年間なり40年間なり、育て訓練する。会社はその人に投資した分のリターンを生んでもらおうとする。会社人として育てたはずだからだ。

 ──「ハイブリッド人事」に変更せよと唱えていますね。

 必ずしも終身雇用制が悪いとは思わない。人を長期的な視野で育成することはいい。それを抜本的に廃止するのではなく、一部修正しながら競争原理を導入していくのはどうかと言いたい。

 たとえば年功序列の性質は消す。人事部が定年までのレールを敷いてあげるのではなく、若い段階で競争原理を入れていく。力があると思われる人には、20代後半からストレッチアサインメント(未熟者に重責を課すこと)で能力向上を促す。そうすれば力量の差がはっきりするし、キャリアの見通しもつけやすい。

 ──リーダーの選別はどうすれば。

 従来、日本では新卒横並びで会社に入って出世競争は遅く始まる。おおかた40歳ぐらい。それでは国際競争には勝てない。20代後半から始めれば、国際的な競争力をつけた人材が育つ可能性も強まる。

 新卒者だけを採る、就職活動は横並びでタイミングも画一というのもいただけない。そこから外れた人はあぶれてしまう。採用システムに関しては、そこでも門戸を広げ、報酬、昇進については自由競争という原則を取り入れることが重要だ。

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最終更新:9月18日(日)9時0分

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