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天才以外は失業、残るのは土下座をする仕事? 人工知能の専門学者座談会(1)

デイリー新潮 9月18日(日)20時0分配信

 予想を超える速度で進化する人工知能。世界のトップ棋士を圧倒したのは記憶に新しいが、いずれ、ほとんどすべての仕事を人工知能が代替するという見方もある。われわれ自身が、子や孫が、否応なく直面する近未来の見取り図を、専門学者たちに描いてもらった。

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 米グーグルの関連会社が開発した人工知能「アルファ碁」が、世界トップ棋士の一人を打ち負かしたのは今年3月。その際、勝利の決め手になったと説明された「ディープラーニング」(深層学習)という語をご記憶だろうか。人工知能が自ら学習して能力を高める技術のことで、脳の神経回路さながらにデータを理解する過程を何回も重ねながら、物の特徴を認識できるというのだ。

 もっとも、アルファ碁には碁を打つ能力しかなかったが、今後、様々な能力を備えた“汎用人工知能”が登場しうるという。そのうえ2045年までには、進化を重ねた人工知能が人間より賢くなってしまう時点、すなわち「技術的特異点(シンギュラリティ)」を迎えると見られている。

 要は、10年、20年先には、われわれを取り巻く環境も、われわれの暮らしも、人工知能によって激変している可能性があるわけだ。それはどんな未来図なのか。科学ジャーナリストの緑慎也氏を進行役に、専門家たちに語ってもらった。

■10年後の社会はどう変わるか

【松田卓也/神戸大学名誉教授(宇宙物理学)】 駒澤大の井上智洋講師は最近、45年には天才以外は失業し、日本の人口の1割しか働いていないと予想しました。アメリカの未来学者レイ・カーツワイルによれば、45年にシンギュラリティが訪れ、その前の29年には、人間みたいな汎用人工知能ができるという。30年ごろを境に、それまでは特化型の人工知能、それ以後は汎用人工知能と、大きく違ってくるという意見に、私も賛成です。

【高橋恒一/理化学研究所 生命システム研究センター 生化学シミュレーション研究チーム チームリーダー】 カーツワイルは、29年には人間一人分くらいの知的能力を、45年には全人類の能力を合わせたくらいのコンピューターが、1000ドル程度で買えるようになると言っています。

【松田】 汎用人工知能の中核は、自然言語理解だと思います。松尾さんの予想では、それが可能になるのはもっと早いのでしょう? 

【松尾豊/東京大学大学院工学研究科 技術経営戦略学専攻 特任准教授】 早いと思います。人間がサルより賢い一番の理由は、記号すなわち言葉を使えるから。パターンの識別はいろんな動物にできても、それを言葉という記号に置き換え、任意の時点で想起、伝達する能力は人間にしかありません。そのおかげで人間の学習能力は非常に高く、知識の蓄積量もすごく大きい。この仕組みは早晩、明らかになるはずだと思っています。

【緑】 “汎用”が現れるのはもう少し先として、人工知能の普及によって、5年後、10年後くらいの社会はどう変わるのでしょうか。

【松尾】 人工知能ブームの理由は二つあって、一つはディープラーニング。もう一つはデジタル革命で、情報をデジタル化してデータとして貯め、それをもとにプログラムを組んだりすればすごいことができると。それは1990年代後半以降、グーグルやアマゾンがやったことですが、日本人は理解してきませんでした。人工知能が擬人化されて、情報技術の便利さがようやく理解され、これまで手でやるしかないと思っていた事務系の仕事など、プログラムを書けばできるジャンルがたくさん見つかった。でも、シリコンバレーの人たちはとっくに気づき、イノベーションを起こしていた。日本人はそれに20年遅れで気づいたというのが、人工知能ブームの実状です。一方、ディープラーニングはここ2、3年で伸びてきた技術革命です。認識能力が上がって、要は目を持った機械ができ、人間が目で見てわかる仕事はみな機械ができるようになるわけです。

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最終更新:9月18日(日)20時0分

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