ここから本文です

“お金の悩みをほぐす”禅語

プレジデント 9月19日(月)6時15分配信

 悩みや苦しみを和らげるために生まれた仏教。ビジネスマンの代表的な悩みである「人間関係」について、徳雄山建功寺の枡野俊明住職にお話をうかがった。

 生活を営むにはお金が必要不可欠です。しかし、お金は本来、人の役に立ったことへの対価。株とか為替など、生産の実体が伴わない、数字だけでお金を稼ぐのは、人を怠け者にしてしまうでしょうね。

 禅の喩えで、こんな話があります。2人の牛飼いがいて、1人の牛飼いは99頭牛を飼っている。はたから見ればとても裕福なのだけれど、この人は、あと1頭いれば100頭なのにとしか考えていない。もう1人の人は3頭しかいないけれど、それで家族を養い、心穏やかに暮らしている。すると99頭持っている牛飼いがやってきて、もう1頭いないと苦しいから譲ってくれと言うので、そんなに困っているのだったらと譲り、2頭になっても工夫して満足した生活を送る。一方、100頭を集めた牛飼いは、1日も早く105頭にしなくてはとまた悩む……。

建功寺住職 枡野俊明氏●1953年、神奈川県生まれ。玉川大学農学部卒業後、大本山總持寺で修行。庭園デザイナーとしても評価が高い。多摩美術大学教授。

 執着には終わりがありません。お釈迦様が亡くなられる前に説かれた説法をまとめた『遺教経(ゆいきょうぎょう)』というお経に<知足(ちそく)>ということが説かれています。どんなに裕福な環境でも満足を知らなければ満たされない。地面に伏したような生活をしていても、これで充分だと感じることができれば、幸せを感じられると。

 かといって、何でもかんでも、お金を使わずに安く済ませるというのも、生活のなかに豊かさがありません。倹約と質素は違うものです。例えば茶碗でも、奮発していいものを買って、愛着を持って大切に使う。大切にしながらも執着を持たない。するとやがて茶碗イコール自分になる。こちらのほうがより生活に豊かさを感じるのではないでしょうか。

 お釈迦様も欲をゼロにしろとは言っていません。足ることを知れば心が穏やかでいられるということです。あっちの会社のほうが給料がいい。退職時の平均貯蓄はいくらなければ老後が不安だとか、飛び交う情報に惑わされ、他人と比較をするから、劣等感を生じ、不安を呼び、苦しみ悩んでしまうわけです

 お金の使い方というのは、その人の生き様、価値観の表れです。モノもお金も貯め込むのではなく、必要なもの以外は手放す。

 お賽銭はお金を放り投げますよね。お金を投げ捨てるのは行儀が悪いようにみえますが、そうではなく、あれは<喜捨(きしゃ)>といって、お賽銭を執着と見立て、これを断ち切って捨て去るという行為です。お金もモノも、人の役に立ちますようにと手放す。手放すのは気持ちのいいものです。そういう気持ちを持っていれば、いつか巡り巡って、何倍、いや何十倍にもなって返ってきます。

1/2ページ

最終更新:9月19日(月)6時15分

プレジデント

記事提供社からのご案内(外部サイト)

プレジデント

プレジデント社

2016年10.17号
9月26日発売

定価690円(税込み)

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

地球外生命を宿しているかもしれない1つの惑星と3つの衛星
地球外にも生命はいるのでしょうか?NASA(アメリカ航空宇宙局)の惑星科学部門の部門長であるジェームズ・グリーンと一緒に、地球外生命を宿していそうな場所を太陽系内の中で探してみましょう。 [new]