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「親孝行」を社員に義務づけると会社が好業績になる?

ダイヤモンド・オンライン 9月19日(月)6時0分配信

 親孝行を経営理念に掲げ、社員に親孝行の実践を義務づけている会社がある。そもそも親のことなど会社に指示されるものではないはずだ。しかし、そこにはさまざまな効果があるようだ。(「週刊ダイヤモンド」2011年3月5日号特集「今、親のためにしたいこと」より。肩書き、年齢などは当時のまま)

 「親が、周りの人に自慢できる息子・娘となることが、すなわち親孝行である」──。

 北関東を地盤に和食レストラン「ばんどう太郎」や「かつ太郎」など66店舗を展開している坂東太郎は、「親孝行」を経営理念に掲げている。同社を率いる青谷洋治社長は、親孝行をこう定義し、日々の生活のなかで社員に実践するように指導している。

 なかでも同社の初任給に関する指導は徹底されている。初任給を使って両親に親孝行することが義務づけられているが、その際の一挙手一投足まで指導される。「お父さん、お母さん、このお給料をいただくことができたのは今まで育てていただいたおかげです……」と板の間に正座して感謝の気持ちを伝えなければならない。一連の流れは4月に泊まり込みで行われる新入社員研修のなかで、ロールプレイングで練習する。

 「なぜそこまでやるのかという声もありますが、そこまでしないと、人はやろうとしないし、できません」と青谷社長は話す。

 そして、実際に初任給が出た1ヵ月後、再び研修が行われる。そこでは、それぞれが初任給でどのような親孝行をしたのかを発表し、同僚たちの様子を知ると同時に、会社側が事前にそれぞれの両親から受け取っていた「子どもあての手紙」が全員の前で読み上げられる。例年、ほぼ全員がボロボロと涙を流しながら親の手紙を聞くことになる。親の自分に対する深い愛情を再認識する場となるのである。

 こうした行事を通して社員は否応なく親のことを考え始める。だが強制されているという意識を持つ者はいないようだ。入社1年目の青木愛さんは「両親に対して何かしなければとは思っていましたが、具体的には考えていませんでした。両親に対して感謝の気持ちを表すことについて、軽く考えていたと思う」と反省を口にする。今では親を思い、3年後に母にマッサージ機を買うことを目標に、仕事に打ち込むと決めている。

 入社2年目の人材育成部、鈴木聡美さんも「入社するまで親孝行を真剣に考えたことはなかった」と話す。だが、入社をきっかけに両親に対する感謝の気持ちが増したという。「実家に帰ると父は私が手がけている会社のウェブページをプリントアウトして読んでいました。少しでもよい仕事をして、父に頑張っている姿を見せることが親孝行だと思う」。

 青谷社長は親孝行を経営理念に掲げる理由を「会社の経営方針がぶれないようにするため」と説明する。中学卒業後に母を亡くした青谷社長には、親孝行ができなかったという後悔の念がある。もし母が生きていて日々の自分の仕事を見たとき、母が近所の知り合いに自慢できるかどうか──。それを念頭に置いて会社経営に当たっている。

 また、36年前、創業間もない頃受けた屈辱も影響している。当時雇っていた女性アルバイトの両親が、ある日突然店にやって来て、「こんな水商売の店で娘が働くことを許した覚えはない! 」と言い放ち、青谷社長の目の前で連れ帰ってしまったのである。アルバイトとして採用する前に両親から承諾を取っていたにもかかわらずだ。

 それを機会に「すべての従業員の親が、わが子を働かせたいと思う会社にしなければならない。また従業員が仕事を通して成長し親に喜んでもらわなければならない」という思いを強くした。今でもその考えは変わらず「社員とその両親が、社員の成長を感じ、その社員の成長を気づかせることが会社の役割だ」と言い切る。

 親孝行の経営理念が業績にどのような影響を与えたか、それを数字で表すことは難しい。しかし「不思議とバブル崩壊後も他の外食企業ほど業績は落ち込まなかった。きっと成長するために社員全員が努力を続けてくれたからでしょう」と笑う。

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最終更新:9月19日(月)6時0分

ダイヤモンド・オンライン

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