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食べログ「点数操作」疑惑のカカクコム、No.1口コミサイトはなぜ炎上したのか?

HARBOR BUSINESS Online 9/19(月) 9:10配信

 9月早々、「食べログ」が”炎上”した。複数の飲食店関係者が、食べログからの要望を断ったら検索順位を下げる、と担当者に脅されたり、食べログのスコアを強制的にリセットされたと証言したのだ。

⇒【画像】各サイト利用者数グラフ

 運営のカカクコムは、炎上の元になった発言については明確に否定しているが、飲食店情報検索サービスでは「ぐるなび」や「ホットペッパー」、「Retty」などの競合をしのいで首位と目される食べログがなぜこのような炎上に巻き込まれたのか。決算書の分析からヒントを探った。

◆月間利用者数7470万人を誇る「食べログ」

 食べログを運営するのは東証1部上場のカカクコム。社名の由来でもある購買比較サイト「価格.com」と、ユーザーによる飲食店情報の口コミサービス食べログを収益の柱に、さまざまな情報メディアや金融事業にも参入しているITメガベンチャーだ。なかでも食べログの月間利用者数は7470万人にも達し、価格.comの5027万人を凌いで同社最大のサービスとなっている。

 そんなカカクコムは毎年、前年期比で2ケタの増収増益を続けており、営業利益率は50%弱と驚異的な高さを誇る。この利益率の高さは、高単価なM&Aアドバイザリーのフィーを稼ぐ日本M&Aセンターや、自前でモノを作らず、コンサルティング営業を通じて工場機械を外注して作らせ、導入してもらうことで稼ぐキーエンスなどと並んで日本最高級だ。うまくすれば利益率が高くなりがちなIT業界の中でも、この水準の企業はほとんどない。◆売上高では拮抗も、利益では3倍差

 高利益率の秘訣は原価率の低さだ。食べログも価格.comもユーザーの自発的な書き込みが価値の厳選になっており、サーバー費さえ担保すればユーザーが増えれば増えるほどお金を作りやすくなる。設備投資もほぼ必要ない。現にカカクコムの資産のほとんどは現預金であり、300億円弱もある。

 競合のぐるなびと見るとそのすごさが鮮明になる。両社は売上高では拮抗しており、販管費も同じぐらいだが、原価が全然違うので、利益では3倍近く差がつく。

 店舗が無料で登録できてユーザーから勝手に情報が集まる食べログと違ってぐるなびに載っている飲食店の情報は基本的に飲食店からフィーをもらって載せられている「広告」であり、営業部隊が手間暇かけて店舗と契約してくる必要がある。リクルートの手がける「ホットペッパー」も大筋でぐるなびと同じモデルだ。

 実はこのモデルの方が売上高自体は立ちやすい。カカクコムの中の食べログ事業のみと、ぐるなび、ホットペッパーを比較すると、ユーザー数トップの食べログが売上高では競合にダブルスコアをつけられていることがわかる。

 そんな食べログの主なマネタイズ手段は

1.ユーザー会員へのプレアムサービスの有料課金

2.月間17億PVもある食べログメディアへの広告

3.ぐるなびなどと同じく、飲食店への販促支援を通じた課金

 の主に3つだ。今回の炎上は「3」絡みである。

 食べログのユーザーが多い最大の要因は、「広告」ではなく、リアルな利用者による辛口も含むコメントが読めるからであり、飲食店よりもユーザーに寄り添ったサービスと言える。

 だが、実は食べログの売上高の8割を占めるのは法人からの売上だ。「2」と「3」が多いということである。ユーザーは、素晴らしいサービスであってもなかなか高いお金は払ってくれないのだ。

 しかし、食べログの法人営業はなかなか高単価をとれない。無料で飲食店に掲載してもらった上で追加サービスをすることでお金をとるモデルで、ぐるなびと同じく最低価格は1万円から、さまざまなプランを用意しているが、ぐるなびに1店舗あたりの平均単価で3倍ほど差をつけられている。

 飲食店からすれば、お金を払っても批判が載り得る食べログより、全面的に支援してくれるぐるなびやホットペッパーにお金を払いやすいということだろうか。今回の一件についてカカクコム広報室は「評価点数を算出するアルゴリズム(計算手順)の見直し」と述べているが、なんとか単価をあげるために飲食店に”見せしめ”を行ったのではないかという疑惑が利用店舗の間で浮上したのも無理からぬ話だろう。超高利益企業としてはあまりに余裕のない態度といえよう。

 足元では、ぐるなび、リクルートのほかに、ユーザーがSNSを活用し実名での飲食店評価を行うRettyも急伸している。匿名ユーザーが書き込む食べログよりもさらにユーザーからの信頼を得やすいサービスであり、昨年は月間口コミ数で食べログを抜いたと発表し、カカクコム側が猛反論したという経緯もある。

◆人件費や広告宣伝費がじわじわと上昇

 先ほど見たようにカカクコムは資産のほとんどが現金で、土地などのモノを持たないITベンチャーの極致であるから、一度抜かれたらあっという間に転落して全てを失うことを恐れているのかもしれない。万が一、食べログが没落してももう1つの柱である価格.comもいまだに伸び続けているのだからどっしり構えればいいと思うが、とにかく態度に余裕がない。

 もう1つ気がかりな指標がある。売上原価率は低いままだが、売上高に占める販管費の割合がじわじわと上昇しているのだ。

 繰り返すようだがそれでも高い利益率を維持しているからそこまできにする必要はないが、人件費や広告宣伝費、代理店への手数料を含む販管費の上昇からは、食べログの売上を増やすための必死の努力が透けて見える。

 自前の記事コンテンツなども増やし、食べログのユーザー数やユーザーの滞在時間を増やして媒体の価値を高めつつ、営業を強化して飲食店から取れるお金を増やしたいのだ。

 食べログは、これまで通りユーザーを最優先に考えた上で、飲食店とも良好な関係を築いていってほしい。今回、食べログはSNSの力によって炎上したが、最大の競合となりつつあるRettyは、そのSNSの力をうまく使うことで食べログの牙城を揺るがしているのだ。

<文/大熊将八>

おおくましょうはち○現役東大生にして、東大・京大でベストセラーの企業分析小説『進め!! 東大ブラック企業探偵団』(講談社刊)著者。twitterアカウントは@showyeahok

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最終更新:9/19(月) 9:10

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