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ヤクルト山田哲人は2軍でどう鍛えられたか

東洋経済オンライン 9月19日(月)15時0分配信

ヤクルトスワローズ真中満監督が明かすビジネスと野球の采配における共通点。それに迫る連載企画「真中流マネジメント」。エンターテインメントコンテンツのポータルサイト「アルファポリス」とのコラボにより、東洋経済オンラインでもお届けする。 

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 今回は少し切り口を変え、「必ずしも勝つことを第一の目的としない」世界――2軍についてお話ししたいと思います。

■2軍にいる選手も、「プロ野球選手」には変わりない

 私が2軍の監督となって最初に取り組んだことは、「2軍という雰囲気」の刷新です。昔から2軍という場は、言葉を選ばずに言えば、球団内でどこか「子供扱い」されていました。プレーに関して自分なりの主張をすればまわりから「そういうことは1軍で結果を出してから言え」と否定される。それが当たり前の世界だったのです。

 私は選手時代から、こうした風潮に違和感を覚えていました。というのも2軍にいる選手も、1軍と同じ「プロ野球選手」には変わりないと考えていたからです。

 そのため、自分が2軍の監督になったとき、選手達を邪険に扱うようなことはせず、彼らの意見や気持ちをしっかりと受け止めようと決めました。もちろん、選手にとってただ居心地がいいだけの場所になってはいけませんが、まずは従来の2軍の雰囲気を変えようと考えたのです。

 2軍の空気を変えるために取り組んだのは、「こちらからあれこれ教えないようにする」ということです。とくに、ルーキーの選手に教えすぎないよう気をつけました。

自らの「気づき」を大切に

 普通に考えればルーキーにはあれもこれも教えたくなってしまいそうですが、彼らも、アマチュア世界ではトッププレーヤーとしてやってきたわけです。

 それがプロになった途端に「今までのやり方では通用しないから、こちらの教えるとおりに変えなさい」と言われては、モチベーションが下がってしまい、本来の能力を発揮できないことでしょう。彼らは、それまでのやり方で何かが光っていたからこそ、今、こうしてプロ野球界にいるわけですからね。

 そこでまずは、彼らのこれまでのスタイルでプレーしてもらうようにしました。

 そしてシーズンが進む中で、「自分のやり方ではプロのレベルについていけない」と本人が感じたときに初めて、こちらから何らかの提案をするのです。

 そのときも、アドバイスはするものの、「そのとおりにやれ」という“強制”は基本的にしません。あくまで「このようにしてみてはどうか」という“提案”であり、やるかどうかを決めるのはあくまで選手本人です。

 2軍といえど、毎日試合はあります。その戦いの中で自ら気づき、考え、試行錯誤を繰り返すことで、やがて1軍でも通用する選手へと成長していくのです。

■結果が出せなくても試合に使う

 そうした選手について、具体例を挙げてみましょう。今では球界を代表すると言っていいレベルにまで成長した、山田(哲人)です。

 彼は入団1年目から、2軍の全試合に出場しました。最初の頃は毎日が新鮮でしょうし、相手投手もルーキーである山田のことをあまり知らないはずですから、試合での結果も比較的出しやすかったと思います。

 もちろん、彼がもともと持っている資質が素晴らしかったというのは間違いありません。しかしプロ野球のスケジュールは、1週間に6試合。いかに若い選手でもこのスケジュールに慣れるまでには時間がかかります。さらに、1年目であれば、1年を通じてどのようにペース配分すればいいかもわからない。

 そのためでしょう、山田も、6月頃にはバテてきて、成績が下降し始めました。しかしそんなことは、こちらからすると最初から予想していることです。

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最終更新:9月19日(月)15時0分

東洋経済オンライン

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