ここから本文です

「ヤシノミ洗剤」46年続くロングセラーの秘訣

東洋経済オンライン 9月19日(月)6時0分配信

サラヤの食器用洗剤「ヤシノミ洗剤」は発売から46年の長寿商品。排水が川や海の環境汚染を招かないエコ洗剤の代名詞的存在だ。衛生商品市場はP&G、花王、ライオンなど大企業がひしめき、大きな予算のCMを打ってくる激戦区。ところが、大企業のような巨費をかけずに、小さな企業サラヤがヤシノミ洗剤のブランド力を高め、半世紀も売れ続けている。その秘訣を、新刊『これからのビジネスは「きれいごと」の実践でうまくいく』を上梓したサラヤ代表取締役社長・更家悠介氏が明かす。

この記事の写真を見る

■日本一ブランド力のあるエコ洗剤

 サラヤのヤシノミ洗剤が生まれた1971年は高度経済成長期で、公害が社会問題となっていて、家庭排水による河川の汚染も深刻でした。そこで、環境にも手肌にも優しい天然の植物油で作ったのがヤシノミ洗剤です。当時、エコをコンセプトにした洗剤は日本初でした。

 ロングセラーの秘訣というか、理由なのですが、商品のことを皆様によく知っていただいているのが何よりも大きいと、私たちは考えています。

 食器用洗剤についての意識調査では、ヤシノミ洗剤は「手肌にやさしいブランド」と「環境にやさしいブランド」の2つの部門で、8年連続で日本一になっています。ヤシノミ洗剤のこの2つの大きな利点を、皆様がよくご存じということなのですが、おかげさまで商品の根強いファンになっていただくケースが多い。

 事実、商品のリピート率は9割を超えています。この根強いファンの多さこそブランド力の証明であり、ロングセラーの源泉なのです。

ブランド力の理由

 このブランド力を生かし、今年、ヤシノミシリーズの洗たく用洗剤と柔軟剤を新たに発売しています。もちろんコンセプトは同じ、肌と環境に優しいエコ商品です。

■ブランド力を生んだ3つの理由

 今では「エコ洗剤の代名詞」と言っていただけるほどに、ブランド力が高まっているのですが、そうなった理由は3つあると思っています。

 ひとつ目の理由は、消費者目線で商品の特徴を洗い直して訴求し続けたことです。

 実は、この商品が誕生したときは業務用でした。ご好評いただき、一般家庭用に発売したのが1978年のことでしたが、当初、あまり売れませんでした。

 必ず需要があると信じ、消費者の利便性を向上させる努力を続けました。1981年に日本初のポンプ式ボトル入り商品、1982年には食器用洗剤として初の詰め替えパックを発売します。

 ポンプ式ボトルや詰め替えパックは、今では当たり前になっていますが、サラヤが先鞭をつけたものです。その後もいくつかの工夫を重ね、バブル経済だった1990年ころ、ようやく売れ行きが上昇しだしたのです。

 小さなサラヤには大企業のような巨費を注ぐ宣伝戦略は採用できませんが、こつこつと消費者に寄り添う努力を続けて、ブランド力を高めてきたわけです。

 さらに、ブランド力の理由の2つ目として挙げたいのは、洗剤そのもののコンセプトが、発売以来、一度もブレなかったことです。

 環境に優しい植物系洗剤であること、洗浄に不要な香料や着色料などはいっさい使わないこと、こうした理念を守り通してきました。特に、洗浄成分の濃度は、発売から、平均的な食器用洗剤の半分以下である16%のままです。

 成分濃度が高いほど手荒れは起こりやすいですから、これが消費者の信用につながった。さもなければ、20年前に製造中止に追い込まれていたでしょう。

 1995年、P&Gが「油汚れに強い!」をうたい文句に「ジョイ」を発売し、大々的なテレビCMなどもあって、非常によく売れたのです。すると、大手他社も追随して、同様の商品が次々に出ました。洗浄成分が40%以上と濃くて、油汚れに強い洗剤が、またたく間に市場を席巻したのです。

 まったく逆のコンセプトのヤシノミ洗剤にとっては逆風そのもの、まさに黒船来襲でした。小売店ではヤシノミ洗剤を置いてくれないところが続出します。

 そのとき、消費者が救ってくれました。「手に優しいヤシノミ洗剤をなぜ置かないんだ」と言っていただいた。おかげで小売店の棚に商品が戻り、ヤシノミ洗剤は命拾いしたのです。

1/2ページ

最終更新:9月19日(月)6時0分

東洋経済オンライン

東洋経済オンラインの前後の記事