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阪神・甲子園駅の野球ファン輸送は「神業」だ

東洋経済オンライン 9月19日(月)6時0分配信

 プロ野球のペナントレースもいよいよ終盤戦。セ・リーグでは広島東洋カープが優勝を決め、クライマックスシリーズへの進出を目指して残る球団も火花を散らしている。それぞれのファンも球場で、テレビの前で、熱のこもった応援をしていることだろう。

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 ところで、多くの球場はその観客輸送を鉄道が担っている。試合の進行に合わせてどのように臨時列車を出し、数万人の観客を安全・的確に輸送しているのか。その“神業”ぶりで有名な、阪神電気鉄道(以下、阪神電鉄)の甲子園駅を取材した。

■ナイターでも昼から“臨戦態勢”

 阪神タイガースの本拠地・阪神甲子園球場。収容人数4万7508人という大スタジアムの最寄り駅が阪神電鉄甲子園駅だ。

 「プロ野球の観客のうち、7~8割の方が当駅を利用されます。たとえば試合開始時間が18時だと、熱心なタイガースファンの方はお昼ごろから来場されるので、われわれもその頃から“臨戦態勢”となります」。そう話してくれたのは、観客輸送の陣頭指揮を執る甲子園駅の藤森駅長。今年4月に御影駅長から転任してきたという。

 だが、突然“陣頭指揮”と言われても、スムーズにできるものなのだろうか。「実は、阪神電鉄に入社して最初の配属先は、甲子園駅の駅員だったんです。その後、車掌や運転士としても観客輸送を経験していますので、特に戸惑いはありませんでした。経験豊富な助役たちもサポートしてくれますし」(藤森駅長)

 同じく取材に応じてくれた助役の桒村さんによると、普段は4人の助役がホームやカウンターで乗客案内にあたるところ、プロ野球開催時などは近隣の駅からの応援も駆けつけ、20人以上で対応するそうだ。

 「平日か休日かでも違いますが、往路、つまり球場へ来られるお客様のピークは17~18時ごろ。そこで、この時間帯に当駅行きの臨時列車を出して対応します」(桒村さん)

降車専用ホームの「裏技」

 甲子園駅は、上下線とも列車の追い抜きができる構造。球場にいちばん近い南側の線路には、通常のホームとは別に降車専用ホームがある。このホームは球場へ向かうプロムナードに直接通じており、梅田方面から来た臨時列車はこのホームへ乗客を降ろすのだが、面白いのはこの後だ。

 「臨時列車は両側のドアを開けたまましばらく停車させ、次に到着する列車の乗客も車内を通り抜けて降車専用ホームへ出られるよう、お客様を誘導しています。こうすることで、列車を降りた多くのお客様がスムーズに球場へ向かえるのです」(藤森駅長)

■試合展開で決める「帰りの臨時」

 一方、腕の見せどころなのが復路の輸送。帰りの観客が多くなるタイミングを見計らって、甲子園駅始発の臨時列車を手配する。

 「復路輸送は試合開始直後から始まります。まず、実際に球場へ行って観客の入り具合を確認し、次に臨時列車を出すタイミングを考えます。基本はゲームセットと同時ですが、そうなることはほとんどありません。試合の進み具合はもちろん、当日の観客数や天候、そして得点差なども考慮して決めます。試合の状況は駅長室などにあるテレビで随時チェックし、さまざまな状況を考慮して駅長が最終判断します」(桒村さん)

 たとえばタイガースが大差で負けている場合は、7回裏の攻撃が始まった時点、つまりタイガースファンがジェット風船を飛ばしたあたりから“帰宅ラッシュ”が始まる。逆に、接戦の場合は試合終了と同時に波が一気にくるため、そのタイミングに臨時列車を集中させるという。その合図を出すのが、藤森駅長の役割だ。

 「当社の観客輸送の特徴は、甲子園駅が路線の中間にあること。終点駅ではないため、ここに待機させられる列車の本数が限られます。臨時列車に使う車両は、約2.6km西の西宮駅や10km以上離れた石屋川車庫などで待機しており、ここから当駅までの回送にかかる時間も考慮しながら手配する必要があります。ここが腕の見せどころです」(藤森駅長)

 取材当日は往路で3本、復路で5本の臨時列車を運転。本数としては多いほうだという。1列車あたりの定員は約770人で、チケットの前売り状況などで本数を決定する。

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最終更新:9月19日(月)6時0分

東洋経済オンライン

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