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東急の大開発で若者の街シブヤはこう変わる

東洋経済オンライン 9月19日(月)5時0分配信

 2012年4月に開業した「渋谷ヒカリエ」のビルからは、工事が続く渋谷駅一帯を見下ろすことができる。ここから眺めていると、時代とともに鉄道各線が五月雨的に乗り入れ、無理に無理を重ねてきた渋谷駅の様子がよくわかる。

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 東急百貨店ビルの3階の穴に吸い込まれていく黄色い電車は、地下鉄であるはずの東京メトロ銀座線。その下の2階レベルでは、渋谷駅を出発して北から走ってくるJR山手線と、同じ渋谷駅を出発して南から走ってくるJR埼京線(湘南新宿ライン)がすれ違う。

 こんなことが起こるのは、埼京線ホームが渋谷駅のはるか西のはずれにあり、山手線ホームとは縦列の位置関係にあるためだ。取材の最中、初老の男性から地下鉄副都心線はどこかと尋ねられた。副都心線のホームは、ダンジョン(地下牢)とも揶揄される渋谷駅の最も地下深い層にある。だが、こちらも副都心線に乗るときは、案内板の「茶色い丸」の副都心線マークを追って辿り着いているだけなので、そう答えるしか術がない。

■高さ230メートルの新ランドマーク

 一連の渋谷駅の再開発は、東京メトロ副都心線と相互乗り入れすることとなった東急東横線の地下化を契機としている。地下化により、地上ホーム跡地や資材置き場がぽっかりと空くことから、玉突き的に再開発を行う余地が生まれた。

 再開発がすべてが終わるのは2027年度とされているが、主要な工事は東京オリンピックが開催される2020年ころまでに行われる予定だ。駅周辺では大きく分けて4つの街区が誕生する。

 まず、目玉となるのが、駅と一体的に開発される渋谷駅街区(1)。地下7階、地上46階建ての高さ230メートルのビルで、最上部にはスクランブル交差点を見下ろす屋外展望施設も設けられ、渋谷の新しいランドマークになる。2019年度に完成する。

渋谷から流出するIT大手企業

 2018年度には、ひと足先に渋谷駅南街区(2)と道玄坂一丁目駅前地区(3)が完成する。渋谷駅南街区は、東急東横線地上ホーム跡地で、オフィスビルが中心となる。渋谷駅の西側に隣接する道玄坂一丁目駅前地区は、2015年に閉店した東急プラザの跡地で、商業施設が中心となるほか、バスターミナルも設けられる。

 そして、渋谷駅の南に広がる渋谷駅桜丘口地区(4)では、これまで渋谷駅周辺では供給がほとんどなかった集合住宅を開発し、複合的な街づくりが計画されている。

■渋谷には成長したIT企業の居場所なし

 ビジネスにおける渋谷といえば、クリエイティブ系のIT企業の集積地として知られている。米国のシリコンバレーになぞらえて、「ビットバレー」の愛称も定着している。ところが、その渋谷から、IT企業の流出が続いている。

 「渋谷のありとあらゆる物件を探しました。できれば渋谷に居たかったのですが――」

 苦しい胸の内を吐露するのは、2017年1月に本社を「渋谷ヒカリエ」から「JR新宿ミライナタワー」に移転するLINEだ。「渋谷から引っ越す理由は単純です。スペースがない、それだけです」(会社側)。

 LINEといえば、今年7月に東京証券取引所一部とニューヨーク証券取引所に同時上場を果たすなど、国内でいま最も勢いのあるIT企業の筆頭格。10月に「LINEモバイル」として格安スマホサービス(MVNO)に参入するなど、今後もしばらくは企業規模の拡大が続くのは間違いない。

 そもそもLINEは、2011年に開始したコミュニケーションアプリの爆発的ヒットにより急成長し、2012年に新築ピカピカの「渋谷ヒカリエ」に移ってきたばかり。だが、その後も従業員が増え続け、今年4月時点で社員数は1100人超に達し、近隣のビル2カ所にも入居している。今後のさらなる従業員の増加や、業務の効率化を考慮して、新宿への集約移転を決断した。

 「渋谷ヒカリエ」を所有する東京急行電鉄は、「渋谷はIT企業が成長できる場であるのは間違いないが、いまは成長した企業の場所がない」と、危機感をあわらにする。これは、いまに始まった問題ではない。

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最終更新:9月19日(月)5時0分

東洋経済オンライン

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