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カンヌ沖合に浮かぶ「修道院の島」 サントノラ島のワインと美食を巡る

CREA WEB 9月19日(月)12時1分配信

 地中海で「美の島」と呼ばれるコルシカ島と、カンヌ沖合に浮かぶレランス諸島の小島サントノラ島。フランスのワインでありながら、表舞台にはあまり登場することがないこれらのワインの産地を、食とともに訪ねます。

 今回は、美しい海と緑に恵まれた「修道院の島」、サントノラ島のワインをご案内します。

タイムスリップしたかのような「修道院の島」

 高級リゾート地として、または世界的な映画祭の開催地としてその名を知られるカンヌの沖合に、小さな島々からなるレランス諸島があります。そのひとつが、サントノラ島。

 カンヌの港から連絡船で約30分、長さ1.5キロ、幅0.5キロ、面積約40ヘクタール。ゆっくり散策しても2時間もあれば島を1周できてしまうこの小さな島にあるのは、レランス修道院だけ。この島が「修道院の島」と呼ばれるゆえんです。ここでは今でも修道士(モワンヌ)たちが神に祈りを捧げながら共同生活を行い、自ら育てたブドウでワイン造りをしています。

 この島の歴史は、400年頃にオノラという名の修道士がカトリック修道院を建てたことに始まり、現在はアントワーヌ神父を含めた21名の修道士が暮らしています。

 今回は、レランス修道院の広報を担当する、サミュエル・ブトンさんが島の紹介をしてくれました。

 カンヌからの船が着く港は、島の北側。そこから、ブドウ畑を左右に見ながら7~8分ほど歩くともう島の反対側です。そこには、長い歴史を感じさせる建物「Monastère fortifié(要塞修道院)」が海に張り出すように立っています。

 11世紀頃は海賊の襲来が激しく、修道士たちの避難場所として防衛設備を備えた修道院が必要となり、作られました。祈りの場をはじめ、台所、寝室、図書室などを備えているものの、飾り気もなく厳格な印象。俗世から離れ、ひたすら神に身を捧げる修道士たちの様子を今に伝えています。

神に捧げる労働により生まれるワイン

 島の修道士たちは、「労働を神に捧げる」という信念のもと、ブドウ、オリーブ、ハーブなどを栽培しています。中でもブドウは最も重要な作物で、これらがワイン造りにつながっています。

 8ヘクタールの畑で作られるブドウは全部で6品種。黒ブドウはシラー、ピノ・ノワール、ムールヴェードルの3種類で、白ブドウはシャルドネ、ヴィオニエ、クレレット。これらを用いて7種類のワインを造っています。

 修道士にとってブドウ畑での作業は神への祈りと同じ。祈りの時間と睡眠、食事以外の時間はすべて労働に充てられます。

 ブドウ畑が広がるのは島の中央部。ここで有機栽培されるブドウからは、毎年約4000本のワインが造られています。以前は儀式のためだけに造られていましたが、現在では、我々のように修道院を訪れる人などのためにも生産されるように。

 今回テイスティングしたワインの中で最も印象に残ったのは、「アベイ・ド・レランス キュヴェ・サン・ソヴール」(※サン・ソヴールは救世主の意)という名の赤ワイン。サミュエルさんも「古樹のシラー100%で造られるこのワインは、本当に美味しいんですよ!」と満面の笑み。

 黒く濃いガーネット色で、香りにはプラムやシナモンなどのスパイス、さらにはスミレの香りも。タンニン(渋み)がしっかりありながら上品で重すぎず、シラー本来のピュアな味わいを楽しむことができます。

 このシラーというブドウ品種は、南フランスで多く造られています。通常、太陽の恵みをいっぱい受けたシラーは、アルコール分が高くタンニンが豊富な、しっかりしたワインになります。ですが、サントノラ島のそれは少し違う印象でした。その理由をサミュエルさんにたずねてみたところ、こんな答えが。

「ここは一年を通じて暖かい地中海気候ではあるけれど、島を取り囲む海からは冷たい風が吹き込むので、南フランスで栽培されるシラーよりも丸みのある味わいになるんですよ」

 海から吹く冷たい風。なるほど、冷涼な気候を好み、南フランスではあまり栽培されないピノ・ノワール種が、この島で栽培されている訳も、この一言で合点がいきました。

 さらに、海から吹きつける潮風がブドウ畑の通気をよくし、ブドウの木々を病気から守る役割も果たすとのこと。海からの風は、この島のワイン造りに欠かせない「神から与えられたギフト」というわけです。

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最終更新:9月19日(月)12時1分

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