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年齢を重ねるほど、若い頃に諦めた夢を実現できる確率は高まっていく

cakes 9月20日(火)18時59分配信

京都で「フリーランスの勉強家」として活動する兼松佳宏さんは今年、「スタディホール」というプロジェクトを始動しました。勉強に対する意識を変え、いつでもどこでも勉強空間を創出するための仕掛けをつくる。最終的には、現在の大学に代わるような勉強の場をつくりたい、と考えているそうです。若い頃よりも今のほうが可能性が広がっている、という兼松さんのお金観、仕事観、とは。(聞き手:横石崇)


●社会人になっても、「勉強時間」がある生活を

――「フリーランスの勉強家」として、兼松さんが新しく始めた「スタディホール」というプロジェクトについて教えてください。

ひとことでいうと、「スタディホール」という空間的/時間的な手法を確立し、スタディ(勉強)の習慣をもっと身近なものにしていこうというプロジェクトです。

例えばイノベーションが異質なモノやコトの「新結合」であるとすれば、“イノベーティブな人”ほど日頃から様々なスタディを繰り返しているはず。だからこそ勉強が持つネガティブなイメージを変え、スタディを促すだけでなく、スタディした内容を共有する機会が増えていけば、さっき言ったマイプロジェクトのように、もっとたくさん面白いことが生まれると思ったんです。

――「スタディホール」とはどういう意味なんですか?

もともと「自習室」という意味なのですが、「自習時間」という意味もあって、時間と空間のダブルミーニングに可能性を感じています。最近では、株式会社ワコールが京都駅前にオープンした「ワコールスタディホール京都」にも採用していただいて、ありがたかったですし、驚きましたね。

そもそもの発端は勉強家として、最近の「勉強離れ」の傾向に危機感を感じていたことです。例えば「社会生活基本調査」によれば、日本人有業者の「学習・自己啓発・訓練」時間は1日あたり7分なのだそう。それって本当なのかなって。

日々の暮らしのなかに、「趣味・娯楽」「食事」「身の回りの用事」「買い物」などがあるとして、「食事をしながらスタディホール」もできるし、買い物で立ち寄った「コンビニで(略して)スタホする」こともできますよね。ちなみに僕は「睡眠しながらスタホ」しています。

――えっ、どうするんですか?

眠る前に“問い”を頭に入れておいて、目覚めたあとに思い浮かんだことをメモするんです。そうすると僕は無意識ながら6時間勉強したことになるので、日本人の平均勉強時間を少しは押し上げたことになります(笑)。

――そう考えると、勉強している時間って案外たくさんありそうですね。

勉強を習慣にするには、空間的、時間的な仕掛けが必要だと思っていて。例えば「5-minute Studyhall Solo @ Station(ひとりで、5分、駅で)」なら、僕が「勉強空間/時間」についてスタディしていることを知っている友人に「突然ですみません。あなたにとって大切な勉強時間はいつですか?」とアンケートをとってもいいかもしれない。あるいは「30-min Studyhall Pair @ home with a blank paper(ふたりで、30分、家で、白紙の紙を使って)」なら?「7-day Studyhall Trio @ Hawaii(3人で、7日間、ハワイで)」なら?

こんな感じで、いろんな勉強空間や時間のつくり方を集めて検証していきたいですし、ゆくゆくは「整理収納アドバイザー」みたいに「勉強空間アドバイザー」の資格をつくれたらいいなと思っています(笑)。

――勉強空間アドバイザー、は今のところ兼松さんしかいないでしょうね(笑)。

他にも勉強がはかどる「勉強グッズ」のプロデュースなど夢はいっぱいありますが、本気で考えているのは、自分の娘が大学に入る年齢になったときに、既存の大学だけではない新しい選択肢を用意したいということなんです。

大学で仕事をするようになって改めて、大学というシステムが大きな転機にあるとリアルに感じるようになりました。学費や生活費を稼ぐためにアルバイトに明け暮れて学業に専念できないとすれば本末転倒ですし、ある程度の蓄えがないと子どもを大学には行かせられない、というのも由々しき問題です。

そこで大学に入学するときに、何を買っているのかを整理してみると、例えば「カリキュラム」「ファシリティ」「教授」「クラスメイト」「機会」などが挙げられますよね。これらを「スタディホール」の中で提供できれば、「わたし立大学」を自分でつくることも可能になるのではないかなと。

――自分が大学の先生になるということですか?

というよりは、場をつくる学長であり、そこで勉強する学生でもある、という感じですね。横石さんにいろいろ学びたいと思ったら、報酬がなくても教授になってもらえるように、誠意を込めて手紙を書いてみる。そうすると、もしかしたら引き受けてくれるかもしれません。カリキュラムも修士課程2年といったくくりにこだわらず、本当に変化が起こるなら半年単位でも3ヶ月単位でもいいはずですよね。

「ワークショップデザイン」は場を作る人が考えるものですが、いま必要なのは参加者側も「カリキュラムデザイン」を意識することだと思うんです。例えばワークショップで1日みっちり考えたり発表したりして、その日はすごく何かを学んだ気がするけれど、その後は定着しないということはよくありますよね。

――ありますねえ。その時は何かに気づいて、変わった気がするんだけれど、しばらくすると元に戻ってしまう。

それはワークショップの翌日は必ず2時間くらい、その学びを定着させるために文章を書く、みたいな時間を前もって用意していないからです。学校なら時間割があって、テストがあって、強制的に習慣になっているけれど、ひとりではなかなかそこまで意識が回らない。カリキュラムデザインとは、その習慣をつくることなんです。

よくいわれるのは、何かを新しく習慣にするには、何かを手放さないといけないということ。24時間は限られているからこそ、手放すことが先なんですね。僕もgreenz.jpの編集長を卒業したことで、やっと新しいことをやろうという余裕が生まれました。

●収入源が増えると、お金の使いみちを分けて考えるようになる

――でも、手放すときって怖いですよね。現実的な問題をいろいろ考えて立ち止まることも多い。兼松さんに以前、「自分の月収はいくらくらいが妥当だと思う?」と聞いたら、「自分の年齢くらいあればいいんじゃないか」と言っていたのを覚えています。それって今でも変わりませんか?

ひとり暮らしならそれでも大丈夫ですが、結婚して親になったことで変わりましたね。価格の交渉も前よりはするようになりましたし、何かに挑戦するなら、勉強家としての本を書くなど、数年後の自分の価値を高めることにフォーカスしたいと思っています。最近では「勉強家 兼 お父さん」を両立させるために自宅に私塾を開きたいという夢も出てきて、人生で初めて「稼ごう」というスイッチが入ったところです(笑)。

――今の若い人は安定志向と言われますが、兼松さんが接している人たちはどうですか?

一概にはいえませんが、身の丈で暮らしたいという人は増えていると思います。まずは知恵をいかして支出を減らすことから始める。その上で「友人がつくった」みたいなご縁のあるもの、長持ちしそうないいものには出費を惜しまない。とはいえ大きな投資をするときは、大掛かりな借金はしない、とか。安定志向といえばそうだけど、もっと言うと手応えのあるお金の使い方を求めているのかもしれません。それはお金の稼ぎ方が多様化していることも関係があると思います。

――一つの会社から月給としてもらうだけではなく、いくつかの収入源を持つ人が増えている、ということでしょうか。

そうですね。例えばトークイベントの謝礼として10,000円いただいたとして、口座の残高だけみれば数字が増えるだけですが、「このテーマで稼いだお金はこのテーマへの投資に使おう」とあらかじめ決めておけば、その10,000円はより生かされると思うんです。例えば僕だったら、仏教に関わる仕事でいただいたお金はすべて仏教関連の本を購入するか、大好きな高野山への宿泊代として使っています。

●パジャマムービーを撮りたい

――仏教に関わる仕事とは?

もともと空海が好きで、空海が書いた本や真言宗の研究をしていたんですが、先日は浄土真宗の方から僧侶研修の参考にと「学びの場のつくり方」についての講師を依頼されたんです。とても光栄でしたし、布施の気持ちで引き受けるつもりでしたが、ありがたいことに謝礼をいただいて。そのときは親鸞聖人の本をたくさん購入しました。最近は日蓮宗総本山の久遠寺がある身延町から仕事の依頼があって、法華経を勉強しているところです。仏縁の広がりを感じますね。

――なるほど。本当に多岐にわたるお仕事をしている。

最近になってやっと「好きなこと」と「できること」が重なるようになってきましたね。20代前半と30代後半では修羅場の数も仲間も全然違うので、年齢を重ねるほど、実現の仕方がわからなくて諦めた夢を実現できる確率は高まっていくのではないでしょうか。

例えば、高校生のときはファッションデザイナーになりたかったんですが、今ならコンセプトとビジネスモデルを考えれば、それをかたちにしてくれる仲間が見つかるかもしれません。

――一般的には若い頃のほうが可能性がたくさんありそうですけど、兼松さんは逆なんですね。

そのほうが真実だと思いますよ。もう編集長を卒業してからは、やりたいことがあふれているんですが、そのひとつが男性向けのパジャマブランドなんです。昼間はお洒落な友人でも、意外とパジャマにはあまり気を使っていないなあと感じていて。家飲みや遠隔ミーティングでもそのまま使える素敵なパジャマを考えて、それを着た人だけが登場するショートフィルム「CINEMA PAJAMA」を撮ってみたいな、とか。

――それ、今思いつきで言ってませんか?(笑)

半分は前から、半分は思いつきです(笑)。でも、途中段階で共有してみると、「着ると元気になるパジャマというのは、福祉施設にもニーズがありそうですね」みたいに、思いがけずアイデアの本質に気づかされることもあるんですよね。こうしてまずは僕自身が実験台になりながら、十分な準備よりも即興で、結果ではなくプロセスの共有を習慣にしていくのも、「スタディホール」の大きな目標です。いち勉強家として、ひとりひとりがマイプロジェクトを発起できるような環境をつくることができたら最高ですね。

Tokyo Work Design Week

最終更新:9月20日(火)18時59分

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