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日銀による「総括的検証」の展望-主要な手段の運営を中心に

NRI研究員の時事解説 9/20(火) 9:24配信

はじめに

先日の本コラムでは、「総括的検証」の中で枠組みを中心に検討を行ったので、今回はその下での手段と運営について検討したい。

今回の検証が「総括的」とされる以上、「量的・質的金融緩和」の政策手段のすべてを検証の対象とするのが望ましいし、実際にそのようになる可能性はある。ただし、今回の検証を政策手段から見れば、国債買入れの「限界」への対応と、マイナス金利の改善の必要性の二つが主たる背景であろう。そこで本コラムでは、国債買入れとマイナス金利政策に焦点を当てることとする。

国債買入れ:「限界」の克服

既に述べたように、国債買入れに関する課題の一つは「限界」の克服である。この点については、前回の本稿(枠組みに関する議論)で触れたように、「量的・質的金融緩和」の操作目標のウエイトを「量」から「質」へとシフトさせることで対応できる面がある。つまり、将来の国債買入れで札割れが発生しても、それが大規模かつ継続的でなく、かつ意図した方向で長期金利に影響を与えることができる限り、日銀は国債買入れは所期の効果を発揮していると説明できる訳であり、その意味では「限界」を克服できる。

その上で他の資産を新たに買入れ対象にすることも、選択肢としては存在する。ただ、具体的な選択に際しては、意味のある「量」が確保できるかどうかという常に注目される要件だけでなく、波及メカニズムの観点も劣らず重要である。例えば、FRBがQEの中でAgency MBSを買入れたのも、米国債に順ずる市場規模や流動性があったという理由だけでなく、金融危機後において、モーゲージ金利の引下げを通じた住宅市場の再活性化が金融政策の波及経路として重要との認識があったからである。

残念ながら、相応の市場規模と相応の政策効果を期待できるかどうかという観点から、日銀が新たな買入れ対象となる金融資産を選択する作業は容易ではない。例えば、前者の観点から取り上げられることの多い地方債も、後者の面では議論が残る。あるいは、政府が経済対策を通じて財投機関債を顕著に増発する事態になれば、二つの条件をある程度満たす一方、見方を変えれば特定の事業に対する財政ファイナンスにもなってしまうだけに、なお慎重な検討が必要となる。

結局のところ、日銀が新たな資産の買入れまでスコープに入れるかどうかは、今後の経済情勢如何ということになろう。仮に、日本が大きな下方ショックに見舞われることがあれば、政策効果が「相応」であったり、上記の点を含めた副作用があったとしても、そうした資産も動員する必要が生ずることはもちろん考えれる。つまり、新たな資産の買入れは、「限界」論に対する「第二線準備」という位置づけが相応しい。

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最終更新:9/20(火) 9:24

NRI研究員の時事解説