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元軍人や孤児院で育った人も……知られざるパラリンピックの選手たち

Wedge 9月20日(火)11時50分配信

 障害者スポーツの祭典パラリンピック・リオデジャネイロ大会は連日、激戦が繰り広げられ、ハンディキャップを負いながら、限界に挑むトップアスリートたちが世界の人々に感動と勇気を与えている。彼らが抱える試練は身体障害だけでない。重度の障害を抱えて生まれたとして親に捨てられ、幼いころ孤児院で過ごした辛い過去や戦争で瀕死の重傷を負った経験を乗り越え、世界の檜舞台に立っている。知られざる壮絶な人間ドラマが彼らにはあり、それは現代社会の負の側面を映し出している。

9・11同時多発テロ後のパラリンピックの世界

 リオ大会では世界新記録が連発しており、パラリンピアンのレベルが健常者のレベルにどんどん近づいている。すでに陸上や水泳を中心に100以上の記録が出され、陸上男子1500メートルの決勝タイムは4位までがリオ五輪の金メダリストの記録を上回った。

 こうしたパラリンピアンのレベル向上を加速させているのは、戦争で負傷した軍人や元軍人たちの存在がある。身体を鍛え、そもそも障害を負う前からアスリートの素質を持っていた彼らは、心身のリハビリのためスポーツに励み、最高峰であるパラリンピックを目指す。

 特に15年前の9月11日、米同時多発テロが発生して以降、パラリンピックの出場選手の出自に顕著な変化が現れた。対テロとの戦いで泥沼の戦争が起きたアフガニスタンやイラクに派遣された過去を持つ兵士の参加が増えだしたのである。

 特に多国籍軍の中心となった米軍出身者の参加は多い。公式サイトの経歴を見る限り、少なくとも14人いる。彼らは急死に一生を得て帰還、障害者スポーツの世界に入った。

 競泳種目に出場したスニダー・ブラッドリー(32)は2011年、海軍特殊部隊の一員として激戦地であるアフガニスタンのカンダハールに派遣された。地雷除去の任務を担わされ、その最中にアフガン兵士と交戦。仲間を救おうと移動した際に、わずか50センチ先で地面に埋まっていた「即席爆破装置」(IED)が爆発した。

 手足を失うような負傷ではなかったが、破片が両目に突き刺さった。生死の淵をさまよい、その後、1週間以上にわたりのべ100時間の大手術を受けた。結局、命は助かったが、両目を摘出。全ての視覚を失った。

 帰還後、待っていたのは過酷な現実だった。ブラッドリーが米メディアに当時をこう振り返った。

 「帰還した当初、家族や友達が僕の姿をみて、『なんてことなの。なんて気の毒なの』といって嘆き悲しんだんだ。フランケンシュタインみたいな姿をしていたから、無理もない。でも、僕はみんなが取り乱したり、ふさぎ込んだりしているのが好きじゃない。昔から僕はポジティブな影響を他人に与えることに慣れていたからね。そうして、水泳を始めることが頭をよぎったんだ」

 ブラッドリーは泳ぐことで自分を取り戻した。11歳の時、父から水泳を勧められ、海軍でも水泳チームの一員。ボルティモアの自宅に帰り、兄弟がプールに通う移動を手伝ってくれた。暗闇の中で「プールの中では、昔の自由な自分を思い出した」と語った。

 そして1年後、パラリンピックロンドン大会に出場。400メートル自由形で2個目の金メダルをとったのはちょうど、自分自身が両目を失った日の因縁の9月7日だった。直後にこんな言葉を残した。

 「この金メダルは僕が障害を克服したことを表す。この後、僕の人生に何がめぐってこようとも僕は勝利するだろう」

 ブラッドリーは前回チャンピオンとしてリオ大会にも出場した。やはり金を含む複数のメダルを獲得。自由形100メートルでは56秒15の世界新記録も出した。

 今年は視覚障害者用のPCを使って、著書も出版し、活動の場を広げ、同じようなハンディキャップを持つ人たちを励ましている。

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最終更新:9月20日(火)11時50分

Wedge

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