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“囚人のジレンマ”で読み解く合理的な大人が喧嘩するワケ

Wedge 9/20(火) 12:20配信

 人は、喧嘩をします。国は、戦争をします。それが御互いに損だとわかっているのに、なぜ喧嘩や戦争が絶えないのでしょうか? 今回は、囚人のジレンマという考え方で、当事者の意思決定プロセスに焦点を当てて考えてみましょう。

「相手を攻撃した方が得」と考えるのが喧嘩

 ある財産を巡ってA氏とB氏の利害が対立するとき、2人は各々どのように行動するでしょうか。選択肢は2つあります。1つは平和追求で、「足して2で割ろう」と主張しつづけること、今ひとつは「攻撃」で、相手を批判、非難したり殴ったりして自分の主張を押し通そうとすることです。

 2人とも平和を追求すれば、2人とも財産の半分は得られます。1人が攻撃して1人が平和を追求すれば、攻撃した方は満足、平和を追求した方は得るものが無く、悲惨です。御互いに攻撃すれば、両者とも財産の半分は得ますが喧嘩の後味の悪さが残り、不満足な結果に終わります。この時、A氏はどうするでしょうか?

 Bが平和を追求するとします。自分も平和を追求すれば、財産の半分が手に入りますが、自分が攻撃すれば財産はすべて自分のものです。Bが攻撃してくるとします。自分が平和を追求すれば財産は得られず、攻撃だけされます。自分も攻撃すれば、財産の半分は得られます。つまり、Bが平和を追求した場合も攻撃してきた場合も、自分としては攻撃した方が得なのです。

 Bも全く同じことを考えてAを攻撃します。だから喧嘩が起きるのです。もちろん、単なる感情的な殴り合いも起きますが、理性的な人々が合理的に行動しても喧嘩は起きるのです。どちらにとっても平和が一番なのに、どちらも合理的に行動すると喧嘩になり、どちらにとっても悪い結果が生じてしまう、というわけです。

 戦争も同じことです。戦争というのは国と国の喧嘩ですから。

経済学における「囚人のジレンマ」という言葉

 本件は、「囚人のジレンマ」と呼ばれる経済学の一分野です。2人の共犯者が互いに連絡をとれないような独房で取り調べを受けるという設定です。御互いが黙秘すれば御互いが懲役1年、1人が黙秘して1人が自白すれば(相手を裏切って密告すれば)、黙秘した者は懲役8年、自白したものは無罪放免、2人とも自白した場合には2人とも懲役5年だとします。

 2人の囚人は、御互いに相棒が自白したか否か知りませんが、それでも自分は自白した方が得だと判断して自白することになるのです。「相手が黙秘したとしよう。自分が自白すれば無罪、自分も黙秘すれば懲役1年」「相手が自白するとしよう。自分が自白すれば懲役5年、自分が黙秘すれば懲役8年」「つまり、相手が黙秘しようと自白しようと、自分としては自白した方が得だ」と考えるからです。

 御互いが独房にいて、相手がどうするか見えなくても、自分の取るべき行動は合理的に決められるのです。そして、御互いが合理的に行動した結果、2人の合計の懲役は10年となり、他の様々な組み合わせよりも長くなってしまうのです。

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最終更新:9/20(火) 12:20

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