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クラウド時代の寵児 「BOX」CEOに聞く、業界の未来像

Forbes JAPAN 9月20日(火)9時9分配信

クラウドといえば、DropboxやEvernoteなど一般消費者にはすでにおなじみだが、企業での導入はまだ始まったばかり。クラウド時代の寵児に、業界の未来像を聞いた。



「インタビューを始める前に、一言いわせてほしいんだ」

席につくが早いか、アーロン・レヴィ(30)はこう切り出した。

「僕らは日本のビジネスに強い関心を持っている。日本の企業文化を変えたいと思っているんだ。伝統的で縦社会とされる文化を、もっとフラットでオープンでコラボラティブ(協同的)なものに変えたい」

エネルギッシュでパワーがあり、情熱的ー。Box(ボックス)の創業者レヴィは、シリコンバレーのCEOに求められるカリスマ性を備えている。

2005年、レヴィは南カリフォルニア大学の学生寮で、友人とともにクラウドストレージ企業Boxを創業。のちに企業向けサービスへと転換し、昨年、ニューヨーク証券取引所に上場した。現在、約6万2,000社の顧客を抱え、米大手500社(フォーチュン500)の6割が同サービスを導入するまでに急成長を遂げている。

エネルギッシュなのは、自らの使命の大きさを実感しているからに違いない。レヴィは今、テクノロジー業界において「十数年に一度」といわれる大きな変革のまっただ中にいる。

その変革とは、社内情報システムにおける「オンプレミス」から「クラウド」への移行。つまり、自社内でサーバーやソフトウェアを保有・運用するシステム形態から、オンラインを介してソフトウェアを利用する形態へと移行することだ。

単なるシステム上の話と思うかもしれないが、基幹システムの構成を根本から変えるとなれば、多額の費用がかかるうえ、関連業務への影響も甚大である。それでも、利便性やコストなどの面で有利とされるクラウドの導入は確実に広がっている。

Boxはその業務のクラウド化を「ファイルの共有・協働」の側面から支援。スマートフォンやタブレットに対応するなど、クラウド時代のワークスタイルを意識したサービスとなっている。

そのクラウドへの移行状況だが、レヴィによると「大企業でも基幹システムレベルでの導入はまだ始まったばかり」。それでも、「アメリカではもうオンプレミスが戦略上、議題に上がることはほとんどない」という。
--{戦略はベスト・オブ・ブリードで}--
クラウド関連ビジネスの潜在的な市場規模は数兆ドルに上るとされる。その巨大なパイをめぐって、すでにアマゾンやマイクロソフト、グーグルなどによる戦いが激化している。

今後、特にビジネス向けクラウド市場での覇権争いはどのように展開していくのか。やはり、OS(基本システム)やブラウザ市場に見られるように大手2~3社による寡占へと収斂(しゅうれん)していくのだろうか。

その点についてレヴィに尋ねると、こんな答えが返ってきた。「未来の情報システムは、従来のように1社のテクノロジーだけを使った画一的なものではなく、各分野で最善のテクノロジーを統合したものになる」

それは、一言でいえば「ヘテロジニアス(異種混淆)」な世界。まるで多民族社会のように、各種サービスが競合しながらも共存するという世界観だ。

補足すると、オンプレミスの時代は必ずしもそうではなかった。多くの大企業はオラクルやSAPなど、いわゆるERP(統合型業務パッケージ)ベンダーが提供する包括的ソリューションを競って導入した。

だが、それはもう過去の話だという。

「今の顧客は、特定のベンダーがすべてを解決してくれるようなソリューションを求めてはいない。これからは、SalesForceやServiceNow、Zendesk、Office 365などお気に入りのサービスを連携させて利用するようになる。オラクルやSAPなど1~2社にすべてのテクノロジーを依存する時代は終わったんだ」

ベンダー1社にすべてのシステムを任せると何が不都合なのか。1社のテクノロジーで統一したほうが、使い勝手がよさそうにも思える。

この点について、レヴィは「イノベーションが起きづらいことが問題だ」と語る。

「最高のイノベーションを得るには、(会計や販売管理、人材、物流など)それぞれのシステム分野ごとに競争させるしかない。もし1社からすべての技術を購入すると、システム間の連携はうまくいっても、イノベーションの面では遅れてしまう。

オンプレミスの時代は(外部システムとの連携を可能にする)『オープンAPI』という仕組みがなかったから、1~2社からすべてのテクノロジーを買うしかなかった。でも今はオープンAPIを使って、異なるサービスの間でデータをやりとりできる。だから顧客として最大限のイノベーションを享受したければ、『ベスト・オブ・ブリード』(各分野で最高のものを集めること)の戦略でいくべきなんだ」

実際、企業もそのような戦略を望んでいるようだ。Boxの顧客であるGEやP&G、コカ・コーラなどの大手企業は情報システムに関して「ベスト・オブ・ブリード」の手法を採っている。

見逃せないのは、こうしたシステムの連携が業界構造にも変化を与えている点だろう。マイクロソフトやIBM、アップルなど、かつてのライバル同士が近年、次々に提携・協業し始めているのだ。これは5年ほど前まで考えられなかったことである。

レヴィはこんな未来を見据える。

「未来のクラウドは、各サービスが互いにつながったオープンな世界になる。顧客はいろいろなサービスを組み合わせて利用したいからね。だから自社のテクノロジーを(他社に対して)閉ざしたままにしている会社はいずれ滅びゆくだろうね」

Forbes JAPAN 編集部

最終更新:9月20日(火)9時9分

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