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芸大合格者を入学後に待ち受ける衝撃の言葉

JBpress 9月20日(火)6時0分配信

 (文:内藤 順)

 大学に関するノンフィクションは数あれど、藝大がテーマというのも珍しいなと思い読み始めたのだが、中に登場する人物たちは、もっと珍しかった。まさに珍獣、猛獣のオンパレードである。

ブラジャー・ウーマンの写真

 本書『最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常』の舞台となる東京藝大は上野にキャンパスがあり、芸術家を志すものたちにとっての最高学府である。上野駅を背にして左が美術学部で、右が音楽学部。美術と音楽、2つの芸術がまさにシンメトリーのように共存しているのが、特徴の1つだ。

 まるで町工場のような美校の校舎と厳格なセキュリティに管理された音校の校舎。ほぼ全員遅刻の美校と、時間厳守の音校。なんでも作ろうとする人と、洗い物さえしない人。何もかも自前で飲み会をする人と、鳩山会館で同窓会をする人。 普通なら交わることのなかった両者が、同じ校舎に通う。それが東京藝大なのだ。

 著者は、現役の藝大生を伴侶に持つラノベ作家。一緒に暮らしていく中での、あまりに不思議な暮らしぶりに興味を持ち、妻を案内役としてキャンパスへ足を踏み入れた。本書は、東京都心「最後の秘境」と言われる東京藝大に潜入し、全学部・全学科を完全踏破した前人未到の探訪記である。

■ 元ホストクラブ経営者、口笛の世界チャンピオン・・・

 藝大への入学は、80人の枠を約1500人が奪い合う狭き門だ。しかも入試問題で出題されるのは、珍問・奇問の数々。

 “問題:自分の仮面をつくりなさい。 
※総合実技2日目で、各自制作した仮面を装着してもらいます”

 さらに問題の続きには、

 “解答用紙に、仮面を装着した時のつぶやきを100字以内で書きなさい。
※総合実技2日目で係りの者が読み上げます”

 と、書かれていたという。

 また、鉛筆、消しゴム、紙を与えられて、「好きなことをしなさい」という問題に出くわした受験生もいるというから、もう驚くよりほかはない。

 そして難関を突破した彼らたちを入学後に待ち受けているのは、この言葉だ。

 “芸術は教えられるものじゃない”

 しかし、そんな言葉に動じるような彼らではなかった。日々、常識と非常識の境界線を動かしつつ、たくましく生きる未来の芸術家達が、本書には続々と登場する。

 絵画科日本画専攻の高橋雄一さん(仮名)は、元ホストクラブ経営者。スプレーで壁やシャッターに絵を描くグラフィティにハマっていたところ、警察に補導されてしまい少年院へ。その後夜の世界へ転じるも、刺青に興味をもち、日本画の道を志すようになる。

 音楽環境創造科の青柳呂武さんは、口笛の世界チャンピオン。名実ともに口笛会の頂点に立つ彼は、1日3、4時間を口笛の練習に費やす。クラシック音楽に口笛を取り入れることを真剣に考えながらも、口笛は遊びと言い切る。

 この2人だけをみても、頂点だけを目指して一心不乱に邁進するエリート達とは、少し異なる様子が見てとれるだろう。何をしてもいいよと言われても、いつの間にかそれをやっている。本当に好きなのか、自分でもよく分からないのだが、なぜかその世界に戻ってきてしまう。志したのではなく、逃れられなかった。そんな自分たちの運命に、彼ら自身も戸惑っているようである。

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最終更新:9月21日(水)17時40分

JBpress

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