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消えゆく個人経営うどん店を人気ラーメンチェーンが救済する理由

HARBOR BUSINESS Online 9月20日(火)9時10分配信

 今年5月、長崎の老舗うどん店「松乃家」が102年の歴史に幕を閉じた。地域住民に愛された老舗の閉店理由は、店主の高齢化と後継者不在だったという。近年、同じような理由で閉業する個人経営のうどん・そば店が増えている。

 厚生労働省の「生活衛生関係営業経営実態調査」(平成26年度)によると、全国の個人経営のうどん・そば店の経営者のうち、60歳以上の割合は58.9%。会社員なら退職していてもおかしくない年齢だ。うち「後継者あり」と回答したのはわずか21.3%。数字からも超高齢化と後継者不足は明らかだ。果たして、個人のうどん・そば店は生き残れるのか。コラムニストで伊勢うどん大使の石原壮一郎氏はこう話す。

「伊勢市に20店ほどある、昔ながらの伊勢うどんのお店でも、高齢化や後継者不足は深刻な問題です。個人店の新規開業や、企業として展開するなど、次の世代に引き継がれた老舗もありますが、ほとんどの店のご店主は比較的ご高齢です。10年後まで代替わりせずに、営業し続けるのは厳しそうなお店も多い印象があります」

 こんなデータもある。平成26年、世田谷区産業政策部商業課が区内の商店街を対象に実施したアンケートによると、商店街で空き店舗が生まれる原因の第1位は「後継者不足による廃業」で67.1%にも上っている。2位の「経営不振」という理由を上回るほど、後継ぎ問題は深刻なのだ。

 もちろん個人商店にはチェーンにはない魅力や味わいがある。「外食するとき、チェーンよりも個人店を選ぶ」という固定客も少なくない。

 今年6月、国内外に博多ラーメン店「一風堂」などを展開する力の源ホールディングス(本社:福岡県福岡市)が、福岡市内に4店舗を展開する創業67年の人気うどん店「因幡うどん」を事業継承することを発表した。「因幡うどん」といえば、地元・福岡で熱烈に支持される人気店だが、近年、後継者の不在が経営上、大きな課題となっていた。

 事業継承した力の源ホールディングスは昨年8月、同社初となる博多うどん店「博多釜揚げうどん イチカバチカ」を茨城県牛久市に、今年3月には群馬県高崎市に、今年8月には恵比寿に東京1号店を出店するなど、うどん事業にも本格的に乗りだしている。同社はこれまでにも福岡県のラーメン店「名島亭」など事業が立ち行かなくなった福岡県内の飲食店の事業を継承してきた実績もある。

「老舗を救済するなどという大それた考えではなく、博多の食文化を守るため、必要なことがあれば取り組みたい」(同社広報・原智彦さん)

 人気のローカルチェーンののれんを守ることは、博多独自の食文化を守ることにもつながる。実際「因幡うどん」の今後についても、事業方針と雇用などは今後も継続されることになったという。

 特定の店だけではない。中央の大手チェーンが地方のうどん継承プロジェクトに参画する取り組みも見られる。さぬきうどんチェーン「はなまるうどん」を展開する株式会社はなまる(本社:東京都中央区)は、後継者不在により閉店が相次ぐ香川県のさぬきうどん店を守り、戦前から現在までさぬきうどんに携わってきた人々の証言を残すことで次世代に継承するプロジェクト「さぬきうどん未来遺産プロジェクト」に後援企業として参画することを発表している。

 個人店につきまとう、「店主の高齢化」と「後継者不足」という二つの課題。長年培ってきたノウハウを捨て、地域の胃袋を支えてきた歴史に幕を下ろさざるを得ない事態は、人気店であっても他人事ではないはずだ。そうしたなか、技術活用としての「買収」ではなく、過去と未来を繋ぐ「事業継承」という道を選んだ力の源ホールディングスと因幡うどんのように、土地の文化ごと存続し、伝播しようとする地元企業の取り組みが今後注目される。

<取材・文/井上こん>

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:9月20日(火)15時43分

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