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「万引き老人」悲しく切なすぎる貧困の実態

東洋経済オンライン 9月20日(火)6時0分配信

東洋経済オンラインに集いし労働者・学生・市民諸君! 「若き老害」こと常見陽平である! 
皆さんは「万引き」と聞いて、どんな年齢層がする行為だと想像するだろうか? 「未成年に多い」というイメージがあるだろう。確かにそうだが、実は万引きをする老人が増えているというのだ。いったい、何が起きているのか。『万引き老人』(双葉社)の著者であり、現役万引きGメンの伊東ゆう氏に話を伺った。

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■万引きは若者から老人のものへ? 

 常見 陽平(以下、常見):去年の「ユーキャン新語・流行語大賞」に『下流老人』(著者は藤田孝典氏 朝日新書)がノミネートされるなど、老人の貧困が問題になっています。万引きGメンである伊東さんの『万引き老人』は、老人の貧困と孤独の一側面を切り取った本だと思います。万引きは「不良少年の犯行」というイメージだったので非常に驚きました。

 伊東 ゆう(以下、伊東):ありがとうございます。アベノミクスで確かに景気が良くなったのかもしれませんが、一方でそこからこぼれ落ち、万引きをしている老人がたくさんいます。事実を知ってもらいたいと、この本を書きました。

 僕が万引きGメンを始めた頃、万引きの主流は未成年でした。しかし、現在は高齢者の万引きが増えている状態です。検挙人数は5倍近くに増えています。知らない方からすると、「え?  老人が万引きするの?」と非常に驚かれます。

編集部註:一般刑法犯の検挙人員数を年齢別に見ると65歳以上は約4.7万人に上り、14~19歳に次ぐ水準。全体の数は約25万人と10年前から3割強も減少しているにもかかわらず、高齢者の数は約3割増加している。高齢者犯罪で最も多いのは窃盗で約3.5万人と断トツ

万引きGメンをしていて感じる変化

 常見:伊東さんは16年にもわたって、万引きGメンをされているとのことですが、ここ数年で大きく変わったことはありますか? 

 伊東:若者の万引きの技術が上がっています。某匿名掲示板などでは、盗み方、見つかったときの言い逃れ方、ルートの確保方法など、万引きのノウハウが共有されているのです。腹立たしいことに、どの店舗でどんなものを盗んだのか、戦果として報告しています。

 常見:テクノロジーの進化で、監視カメラをつけたり、未会計の商品を外に持ち出すと音がなったり……防犯が進むイメージばかり抱いていましたが、ネットの普及で犯罪のノウハウが蓄積されているのですね。

 伊東:監視カメラをいくらつけたところで、どうしても死角はできます。タグをはずしたり、アルミホイルのバックに入れたり、テクノロジーを潜り抜けるノウハウも共有されているんです。

 常見:若者の万引きは高度化していると。

 伊東:万引きも高度化していますが、若者の犯罪は、万引きから「振り込め詐欺」のような犯罪にシフトしていると感じています。若者の犯罪が減ったぞ!  というハッピーな話でないのかもしれません。ここ数年、高齢者による万引き検挙総数が、若者による万引き検挙総数を上回っています。そこには集団で犯行に及ぶ若者を捕捉するより、体力のない高齢者のほうが捕まえやすいという実情もあるでしょうね。

■空腹・貧困を前に規範意識は無力

 常見:老人の万引きが若者より増えているとのことですが、どのような理由で老人は万引きに及ぶのでしょうか? 

 伊東:「お腹が減っている」「贅沢がしたかった」「買うのがもったいない」というのが主な理由です。

 常見:「お腹が減っている」というのは、明らかに困窮状態ということですか? 

 伊東:そうです。そういった場合は、入店するとすぐわかります。目がうつろで、身なりも整っていない人が多い。捕まえた人の中に、総菜売り場のコロッケをその場で食べてしまった路上生活者の老人がいました。「お腹へったの?」と聞くと、「昨日からなにも食べていない」と言います。

 誤解しないでほしいのですが、一目でそれとわかる臭いたつようなタイプの路上生活者の方は、自分のおカネでやりくりしながら商品を買っています。捕まえた老人も、次にお店で見た時は、ちゃんと自分のおカネでコロッケを買っていました。盗んだときは、そうとう切羽詰まっていたのでしょう。おカネがあれば万引きはしなくても済むタイプです。盗んだものも、60円のコロッケと安価なものでした。こういった方は、おカネがあれば再犯しません。

 常見:社会学者の妻木進吾先生が、ホームレスの方は生活保護をもらうことを「屈辱だ」「怠けている」と感じているから、路上で生活していると指摘していましたね。まじめで勤勉であるからこそ、その生活をしている可能性があると。

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最終更新:9月21日(水)7時45分

東洋経済オンライン

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