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ソフトバンク流「スマホ消費者金融」の舞台裏

東洋経済オンライン 9月20日(火)6時0分配信

 9月15日。ソフトバンクとみずほ銀行が、消費者金融で合弁会社を設立すると発表した。資本金50億円は両社で折半出資するが、会計上はみずほ銀行の連結子会社とする予定だ。今年11月に設立し、2017年央までの事業開始を目指す。合弁会社の社名やブランド名は今後詰める。

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 今回設立する合弁会社の最大の特徴は、スマートフォンの専用アプリでプリ・スコアリング(属性による事前の予備審査)をし、「この金利でいくらまで貸せる」という結果(スコア)を示す「スコア・レンディング」にある。

 予備審査の結果を受けてスマホで融資を申し込むと、「30分以内に銀行口座に振り込まれる」(みずほ銀行の持ち株会社・みずほフィナンシャルグループの佐藤康博社長)という、スマホで完結する仕組みだ。スマホで完結するので新会社は無店舗営業である。人員やインフラは最小限に抑え、コストを抑制。その分だけ(他の消費者金融よりも)「低い金利を(提示できるように)意識している」(佐藤社長)。

■個人情報を追加提供すれば、多く借りられることも

 しかも、追加で個人属性や購買履歴などの個人情報を自ら提供することでスコアが上がる場合があるのがミソだ。追加情報をAI(人工知能)で処理し、貸出上限額を引き上げたり、貸出金利を下げられたりするという。「個人が自ら情報提供するので、個人情報保護の問題が生じない」(佐藤社長)。虚偽の情報を入力してスコアを上げようとしても、「AIが虚偽を感知してスコアは上がらない」(同)。ただしAIをどう有効活用するかは、今のところ明らかにしていない。

 佐藤社長によれば、「みずほ(銀行)とソフトバンクのスコアリングマップ(融資可能な属性の分布図)を重ね合わせてみたら、みずほ(銀行)がこれまで貸せていない先でも、本当は貸せる先が膨大にあることがわかった」と今回の合弁会社設立のきっかけを語る。

みずほとソフトバンクは同床異夢?

 ソフトバンクの持ち株会社・ソフトバンクグループの孫正義社長は、「ソフトバンクは携帯端末販売に割賦販売を導入した『フィンテック(金融とITの融合)第1号の会社』。割賦販売導入時には500億~600億円損したがそこから学んだことは大きい。出資先のフィンテック会社・米SoFi(ソーファイ)には3年で1兆円の貸付実績がある。SoFiの貸倒率は1%をはるかに下回る。フィンテックによって、日本でも(そのような低リスクの消費者金融が)当然出来るのではないか」と力強く語った。

 孫社長は同日の会見でSoFiの成功ストーリーの説明に多くの時間を割いた。だが、「SoFiのノウハウを直接活かすわけではない」と孫社長は明言している。孫社長によれば、SoFiは米名門大学・スタンフォード大の卒業生で多額の学資ローンを抱える者の借り換え需要をとらえて、貸出実績を伸ばしてきた。今回の新会社はそのような高学歴の債務者を主な対象にするわけではない。

 3メガバンクグループの中で、みずほは唯一、傘下に大手消費者金融を持っていない。三菱UFJフィナンシャル・グループや三井住友フィナンシャルグループが大手消費者金融を次々と傘下に収めた際、「提携効果が見込めない」として、大手消費者金融の買収に名乗りを上げなかった。消費者金融が傘下にないので、新会社がグループ内で重複することはなさそうだ。銀行カードローンはあるが、最大限度は1000万円で金利は1ケタ台と低いので、おそらく今回想定しているスマホで融資を申し込む若者層とは、ほぼかぶらない。

■みずほ銀行は本業と競合する可能性も

 逆に、孫社長や佐藤社長が言うように、合弁会社がローコストで低リスクの融資を実現するならば、いずれはみずほ銀行の本業とカニバリゼーション(共食い現象)を起こす可能性もある。事実、孫社長は「SOFiは住宅ローンをやっている。合弁会社でも住宅ローンをいずれやりたい」とまで言っている。

 みずほにとって大口融資先でもあるソフトバンクグループとの提携強化は、両刃の剣という側面もある。英ARMホールディングス買収でソフトバンクに1兆円の融資をしたのは、ほかならぬみずほである。ソフトバンクは6月末の有利子負債が12.3兆円もある。孫社長は中国アリババ株などの含み益を加味すれば実質無借金だと主張し続けているが、有利子負債の大きさに着目すれば、銀行にとってToo big to fail(大きすぎて潰せない)の融資先と見ることもできる。

 「一生懸命人生を頑張る人の夢の実現を応援したい」(佐藤社長)、「一人一人の夢と目標をサポートしたい」(孫社長)と、両社長は若者を意識し、新事業の社会的意義を強く訴えた。はたして、両社長の言うような若者の夢実現を支援するものとなるのだろうか。

 (撮影:大澤 誠)

山田 雄一郎

最終更新:9月20日(火)6時0分

東洋経済オンライン

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