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「米9月利上げはない」と本当に言い切れるか

東洋経済オンライン 9月20日(火)6時0分配信

 世界中の投資家が注目するFOMC(米連邦公開市場委員会)と日銀金融政策決定会合が20~21日の両日開催される。

■市場が織り込む利上げ確率は、低すぎないか

 結果が後に出るFOMCのほうから先に言えば、FRB(米連邦準備理事会)が昨年12月以来の追加利上げに踏み切るかが焦点だ。先週末の16日(金)の時点で市場が織り込む9月の利上げ確率はわずかに12%となっており、「今月の利上げは見送られる」というのが市場コンセンサスになっている。

 だが、見方によるものの、FOMCで投票権を持つ10人のうち、「タカ派」(利上げ積極派)とみなされているメンバーが多数を占めているうえ、「ハト派」(慎重派)とみられてきたブレイナード理事が今月に関しては「タカ派」的ともとれる発言をしたことを考えると、市場が織り込む利上げ確率は低過ぎると言える状況にある。

 換言すれば、FRBは市場に利上げを織り込ませることに失敗したということだ。金融政策に最も敏感に反応する米国2年国債の利回りは、前週末に発表された食品とエネルギーを除くコアCPI(消費者物価指数)が前年比で2.3%上昇と市場予想を上回ったことで4bp上昇したものの0.76%と、依然として低い水準にとどまっている。

 8月末のジャクソンホール(米ワイオミング州)での講演で「利上げの根拠が強まって来た」と発言し、市場に利上げの可能性を織り込ませる姿勢を示してきたイエレンFRB議長が、このような状況をどう考えるかも、大きなポイントだ。

FOMCの利上げは本当に見送りでいいのか?

 もし今週のFOMCでの利上げが見送られるとしたら、その理由として考えられるのは二つ。「経済指標が利上げを正当化するにはまだ不十分な状況」か、「市場が利上げを十分に織り込んでいない状況での利上げは、金融市場に動揺を与えかねない」かのどちらかになるだろう。

 前者に関連して言えば、市場が9月のFOMCでの利上げを織り込んでいない主な理由は、8月の雇用統計で非農業部門雇用者数が市場予想を下回る前月比15.1万人増にとどまったことに加え、米供給管理協会(ISM)が発表した8月の米製造業景気指数が前月比で3.2ポイント下落の49.4と、2月以来半年ぶりに節目の50を割り込むなど、「経済指標が利上げを正当化するには不十分な状況」だという認識が広がっているからだ。

 しかし、こうした市場の認識が、イエレンFRB議長のそれと一致しているかは定かではない。

■「利上げ見送り」は政策決定権を市場に渡すことに

 イエレンFRB議長は、9年半ぶりに利上げに踏み切った昨年12月のFOMC直前に行われた上下両院経済合同委員会で「毎月10万人弱の雇用ペースを確保できれば、労働力への新規参入者を吸収できる」と証言している。

 市場は8月の非農業部門雇用者数が15.1万にとどまったことで利上げが先送りされると見込んでいる。しかし、8月の数字はもとより、6月から8月までの3か月平均の非農業部門雇用者数の増加は約23.3万人となっており、イエレンFRB議長が昨年末の利上げ前に示した「毎月10万人弱」という水準を大幅に上回っている。このように考えると、市場のコンセンサスは「客観的見込み」ではなく、「希望」に基づいたものだともいえる。

 仮にイエレンFRB議長が「経済指標が利上げを正当化するには不十分な状況」だという見解を示して利上げを先送りした場合、「20万人以上でもダメなんですか」ということになり、昨年の利上げ前の発言との整合性が失われることになる。

 こうした事態を避けるためには、利上げ先送りする場合には「市場が利上げを十分に織り込んでいない状況での利上げは金融市場に動揺を与えかねない」という説明をするしかなくなってしまう。

 しかし、市場動向が金融政策に影響を及ぼすことを認めるというのは中央銀行にとって最大のタブーである。仮に「市場が利上げを十分に織り込んでいない状況での利上げは金融市場に動揺を与えかねない」という理由で利上げが先送りされるなら、「利上げは経済指標次第」として来たFRBの見解が嘘だったことになってしまうばかりか、金融政策の決定権を市場に渡すことになってしまう。

 これは、FRBが市場のコントロールを放棄することを意味するものだ。こうしたリスクをFRBがとるだろうか。

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最終更新:9月20日(火)6時0分

東洋経済オンライン

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